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第18話 玄武の修練場1日目 白域の修練&ご褒美

雨宮家の保有する修練場「玄武の雨濡らし岩場」その修練場の白域に今俺達は来ている


「まるで天然のアスレチックスだな...」


俺達は白域で体力作りの為に運動しやすい恰好に着替え今は二人ともTシャツとジャージにスニーカーというラフなスタイルだ


そんな真白と俺は今 目の前にある天然の岸壁を見上げていた、天然のスポーツクライムだ...


「ん、先ず初心者ルートのお手本見せる城二付いて来て」


真白は近くの百葉箱の様な箱を開け手に滑り止めの白い粉をまぶすと比較的傾斜の許そうな岸壁に手を掛けよじ登り出した


「こっちのルートは簡単だから城二の進みたいルートでいいよ」


真白は忍者の様にスイスイと崖をよじ登りあっと言う間に頂上に到着し俺に向かってブイサインをする


俺も真白に向かって手を振り答えると、真白と同じ様に箱の中にある滑り止めを手に付け崖に手を掛ける


(確かここら辺を手に持って、ここら辺に右足かけて...)


しかし最初を踏み出してから中々次の箇所へ足が向かない


「右足が踏ん張れない...」


不安定な足場をチョイスしてしまい後悔しているが、じっとこのままでは居られない意を決し左足を蹴り出す


ズルッ


左足を蹴り出した途端に右手が岩の窪みから外れてしまい、身体を維持できず背中から落下する


ドサッ


「いでっ!」


俺はそのまま背中を地面に打ち付ける...がそこまで痛くは無い...


「城二、まだ1メートルも登ってない」


如何やら俺は高さ30センチ位しか進めて無かった様だ...毎朝のランニングやスクワットに腕立てを欠かさずしてるとは言えたかが2週間足らず


(主人公なら未だしも、ただのクズモブの俺がちょっと努力したからって直ぐ効果が出る訳ないよな...)


俺はどうやら自己過信していた様だ、ラノベで言う所の転生補正宜しく


【今まで何もして来なかったんだから、ちょっと努力すれば直ぐに結果が出る】


なんて淡い期待を抱いていたのかも知れない...自分の立ち位置を良く理解すれば解る事だ北野 城二はゲームのチュートリアルでヤラる雑魚キャラだ...強くなれる要素等微塵も無い


今俺がしている事すら無駄な足掻きなのかもしれない...


だが、俺には何事もコツコツ全力で頑張る事しか取り柄がない、前の世界でもそうだった


「...やるしか無いんだ、全力で頑張ってダメなら他の方法を考える、それだけ!」


俺はふたび立ちあがり、崖へと手を掛ける


(こんな程度で諦めちゃ何も変えれない)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


「はぁはぁはぁはぁ...やった...」


「ん、頑張った」


真白が四つん這いになり息を切らす俺の肩をしゃがんでポンポンと叩いている


何度落下したか分からない、身体には岩場で擦りむいた擦り傷や、ぶつけた際に出来た青痣が出来ていた


やっとの思いで辿り着いた初級コースを上るのに何時間費やしたのか...日は落ちかけて夕焼け空になっている


「...真白率直に言って俺は学年内で上中下どの位置だ?」


「下の中」


「そっか...下の中か...ちなみにだけど真白は?」


「上の上」


「弟...北野 尊は?」


「上の中」


「ちなみに城二の元婚約者は中の上」


「そっか...うん」


「やる気無くなった?」


俺の目の前で体育座りしてる真白はそんな言葉を掛けて来たが、表情は冷静そのもの...ただ俺を見つめる2つの流星眼が夕日に反射し黄金に輝いてる


「はっそんな訳ねぇだろ?下の中じゃ上目指すしか無いからな、俺は生まれ変わったんだ全力で足掻いて見せる!」


「...まぁ私の目(流星眼)にもそう見えてる...城二が諦めない限り私も諦めず協力する」


「ああ、助かるぜ親友」


「まかせろ、親友」


「「ぷっ、ははははは、あははははは」」


二人の笑い声が夕日に沈む崖の上に木霊している...



・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


「つっっ、痛てってて...」


日が沈むと危険だという事で今日の修練は切り上げ部屋に戻って来た、真白に「泥だらけ汚い」と言われ夕飯の前に風呂に入りに来た


露天風呂のお湯を汲み体にかけると、体中の傷口に染みて痛い...


「一日でこんなに傷だらけ痣だらけ...」


痛みを堪えつつ頭と身体を石鹸で洗い温泉へと浸かる...浴槽は4,5人が入れるくらいの大きさだ天然沸きだしの温泉で切り傷や打撲にも効果が有るそうだ


チクチクと傷口に染みるが、温泉と聞くとそれすらも治って来てると思えるから不思議だ、もしかしたらそう言った思考が体の治癒力を高めるのかも知れないな


夜空の星を眺めながら両手でお湯をすくい顔にかける


「ふ~ぅ...最高だぁ~極楽極楽」


「ん、なんか年寄りくさい」


「年寄なんかじゃねぇよ」


「さっきも身体洗いながら痛い痛いって言って動きが年寄みたいだった」


「うっせぇ仕方ないだ...ろ...??」


「ん?何みてる?」


「どわぁぁ何で真白が居るんだぁぁぁ!!!」


盛大にお湯の中でコケてお湯飛沫を撒き散らす


俺の目の前には水色の長い髪の毛をタオルでまとめ、体にバスタオル一枚巻いただけの真白が俺と同じ湯船に浸かっていたのだ


「ん?おかしな事を言う、ここ私の家の施設、風呂も私のモノ、Do you understand?」


「わかりますかぁ?じぇねぇ!何、男の入ってる風呂に平気で入ってきてんだ、ってんだ!」


チッチチ


真白人差し指を立て左右に動かしながら得意げな顔をする


「私は最初から入ってた、後から入って来たの城二の方」


「え?...という事は?」


「そう言う事」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?



「うわぁぁぁぁ失礼しましたぁぁぁ!!」


俺は慌てて露天風呂から逃げ出し、身体も拭かず下着だけ身に着け着替えを持って一目散にコテージの自分の部屋へと逃げ込んだ



・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・



「ん、これで分かった?」


城二が逃げ出し静かになった露天風呂の湯船に浸かりながら誰かに話しかける真白、その顔は少し勝ち誇っていた


「...未だ信頼は出来ません...男と言うのは真白様の様な可愛い女性を欲望のまま襲う事しか考えて無い野蛮な生き物です」


「特にあの北野 城二とかいうクズ下衆のケダモノは...」










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