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第20話 思い出す裏設定の存在

「俺には真白が大事なんです...だって彼女は俺の大好きな親友ですから!」


「......」


「真白お嬢様の流星眼が見ている北野様は確かに信頼するに足りるのでしょう...でも私にはその様には思えません」


「でしょうね...」


「これだけは言っておきます...真白お嬢様に不誠実な対応をされたら...」


貝塚さんの俺を睨む瞳が鋭さを増す


「その時は貝塚さんの好きにして下さい、俺は真白の笑顔を守る...守りたいと思ってますその為にも強く、今より強くなりたい」


貝塚さんは真剣な俺の表情を暫く見つめた後、背を向けると部屋のドアを開け


「貴方の覚悟...見ものですね」


振り返る事無くそう短く答えドアは閉められた


(それにしても、貝塚さんか...1年前に城二と何かトラブルでもあったのか?...ん?なんかそんな話聞いた事有った様な...ダメだ!!思い出せん)


ガタッ


ん?外に誰か居るのか?貝塚さんかな?俺は部屋のドアを開け外を確認する...が誰も居ない


「気のせいか...」







「......城二...」



・・・・・・・・・・・


・・・・・・・


ベッドに入り先ほどの貝塚さんの話を思い返す...そもそも城二の過去の話なんか俺には覚えが...ん?


「あっ!!思い出した!!貝塚さんて城二のキャラ設定会議で没になった案に出てきたキャラだ!」


・・・・・・・・・


・・・・・・・


だんだんと、思い出して来た...あれは何度目かの魔都東京1999の制作の打ち合わせ会議中に当時、まだ常務だった若社長が乱入してきて...



🔶


「お前ら無能な社員は何回こんな無駄な会議をすればいいんだ?時間と金の無駄だ!この給料泥棒共が!!」


会議の場を荒らすだけ荒らして...ピロロン♪ピロロン♪...ガチャ


「あ~ミヤちゃ~ん?うんうん、ああ今日もお店行くよ~うんうん、任せてよ~店で一番高いシャンパン入れるからよぉ~あははは大丈夫、大丈夫、会社の経費だから俺は会社の常務で次期社長だぞ?アッハハハ良いねぇアフター?OKOK~それじゃ今から行くから~VIP席用意しててぇ~それじゃ」


と、鼻の下をだらしなく伸ばして電話をしながら葬式の様な空気に包まれた会議室を出ていった


「......」


「なんなんですか!?アレは!!アンなのが次期社長とかこの会社終わってますよ!!南原さんもそう思うでしょ!」


開発スタッフの一人...後輩の子は常務の態度に完全に頭に来てる...俺も同じ気持ちだが感情に任せて俺まで同調しちゃ会議が...


「あ、あははは、ま、まぁ俺たちは俺たちの仕事をしよう」


「くっそっ!!アイツ・・・!?そうだ、この序盤のクズ兄キャラあの馬鹿息子をモデルにしましょうよ!」


他の開発スタッフの子も怒りが収まらない様子だ...確かに序盤のクズモブ兄役...名前やキャラデザはまだ未定だし此処は少しガス抜きが要るか・・・


「わ、解ったお前らで兄役の設定を考えてみて一番良さげな設定を採用するというのはどうだ?」


「マジっすか!?このキャラ序盤のチュートリアルで主人公にボコボコにヤラれるのは決定事項なんですよね?」


確かに序盤のチュートリアルにプレイヤーのヘイトを集めたキャラを滅多打ちにして爽快感を味わってもらうと言うのは決定事項だった


「あ、ああそれはロードマップにも記載されてあるし、以降の話にクズ兄の登場予定もない、プレイヤーには存分にボコボコにしてもらって盛大なザマァを体験してもらうからな、いい感じのクズエピソードを考えてみてくれ」


「そういう事なら、トコトン皆から嫌われるキャラを俺たちで考えて、ザマァをプレイヤーが手を叩いてを喜べる様なクズにして見せますよ!!フフフ見てろ馬鹿息子!!」


「......」


🔶


確かその時のキャラ設定はクズ設定過ぎて女性スタッフの一人が気分が悪くなったとかで没になったはず...でも確かその没設定の中に城二が高校一年の時に町中でウザ絡みで下品なナンパした女性が確か貝塚って名前だったな


「あれって確か、街中でいきなり腕を掴んで呼び止め自分が、名家の御曹司の北野 城二だと名乗り、今からホテルに付き合えとかぶっ飛んだナンパをして、当然の様に断られた事に腹を立てた城二に家と家族を特定してメチャクチャにして後悔させてやる!とか脅したとか言うドクズエピソードだった様な...」


「マジかぁ~絶望的だぁぁ」


もしそういう出会い方をしてるなら貝塚さんとの関係修復は今の時点では諦めた方が良さそうだ...今後の事はこれからの俺次第だけど...何時か見直してもらえたらいいな...


「ん?」


「ちょっと待てよ?何で没になった裏設定が有効になってるんだ?て言うか、もしかして他の没設定も反映されてんのか?...」


そうなると、このゲームへの知識も役に立たない事態になりかねない


「暫くは警戒しながら生活しないとな...」


俺は今後の事に不安を感じつつ、その日は眠りについた


・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


「お早う御座います、北野様」


相変わらずの冷たい態度の貝塚さん...昨夜に貝塚さんの事を思い出し申し訳無い気持ちで一杯だ


「お早うございます、貝塚さん」


すこし緊張しつつ俺も挨拶を返す、すると先に席についていた真白がジッとこっちを見ている


「真白おはよう」


「ん、お早う...」


昨日と同じ真白の隣に座ると何故か昨日より席が真白と近くなってる気がする、腕を少し動かすと真白の肘に当たってしまいそうだ


「真白?なんか近くないか?」


「ん?そんな事ないこの位当たり前...(親友なら)」


心なしか真白の雰囲気がヨソヨソしい...距離感はいつも通り、いや何時もより近い気がするが...


「ところで、昨日の夜」


「ん?昨晩?」


「いや何でも...で、城二はさ...」


「ん?なんだ?」


今朝はなんだか真白の様子がおかしい、どうしたんだろ?


「ん、なんでもない今日は赤域に行く」


「おう、今日も頼むぜ親友」


「ん、親友...任せろ」


そんな話をしていると貝塚さんが昨日と同じように汁物を持ってきてくれた


「あ、ありがとうございます...」


「ん、茄子の味噌汁旨し」


「いいえ...」


「...城二、梅姉をみすぎ」


「あ、ああ頂こうか」


「では、頂きます」


「「頂きます」」


今日も精進料理だ、白菜の漬物に白ご飯、茄子の味噌汁に冷奴、椎茸の串焼きだった、どれも美味しそうだ


「お、美味しい!?椎茸」


「それは良かったです...真白様お味噌汁お代わりしましょうか?」


「ん」


真白は空になった味噌汁の器を前に突き出す


「はい、少々お待ち下さい...北野様は如何ですか」


「あ、是非お願います」


「直ぐ用意致します」


貝塚さんはお盆に俺たちの器を乗せて台所の方に消えていった


「...城二、城二は梅姉と何か有ったの?」


「いや...何もないよ」


「そっか」


真白は俯きながら何か考えてる様だ


「お待たせしました」


貝塚さんが味噌汁のお代わりを持ってきてくれた、俺たちはお盆から器を受け取る


俺たちは朝食を食べ終わると片付けを手伝い各自部屋に戻り身支度をして、今俺たちは赤域に来てる


「ここが赤域か、なんか漫画に出て来る武闘大会の武舞台の様だな...」


赤域には縦横15メートルほどの四角い石造りの舞台と4方を4星獣の石像が建っているだけのシンプルな修練場だった




「城二、ぎょうの併せ修練、全力で行くから覚悟して」


そう言いながら振り向いた真白の流星眼はひと際強く輝いていた



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