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第24話 元ブラック企業の開発者によるネゴシエーション

俺は真白と神視同期を成功させる...成功した瞬間背後からとんでもない気配を感じ振り返ると


窓から見えていた満月は、怪しく輝く2つの光に変わっていた...


4聖獣の内の一体、白虎


「城二、城二も来たの?」


目の前に現れた白虎に気を取られていると、椅子に座ったままだった真白が声を掛けて来る


「ま、真白!?無事か!?」


真白の流星眼はやはり白銀に輝いていたがそれ以外は普通だった


「急に城二が目の前に現れてビックリした」


「急に?何言ってるんだ?俺はさっきから...ん?何だこの部屋!?」


真白と白虎に気を取られて居たが、さっきまで居た真白の部屋ではない...石作りの密室で窓も無ければ出入口らしき物も無い


石作りの祭壇と思われる台座とその両脇に白い炎が燃え盛る2つの篝火かがりび


何度も見た光景、何度も入った部屋、本来であれば秘境を超えた先でしか見れない世界・・・・


【我が神域に土足で踏み入る貴様は何者だ?】


真白と向き合っていると背後から背筋が凍てつく様な声と圧を感じ全身から嫌な汗が噴き出る


ゆっくりと振り返ると...


そこには、座ってるだけで3メートルはあろうかと言う巨大な白い虎、白虎だった、白虎は俺の胴体より太い大きな牙を剥きだしにして、敵意の籠った目で俺を見据えていた


身体が、心が、萎縮し言葉も出ない...圧倒的


此れが神域に住まう神そのもの...神憑依でワダツミを降ろした真白とは併せにて接触していたが、幸いと言うか情けない事に俺の神視レベルが足りない為、ワダツミを認識出来て無く此処までの絶望を味わ無くて済んだのだ


「私の親友、城二」


【我は今、器と話をしておる邪魔だてするな】


「私は嫌」


【我の力が欲しくないと?】


「そう言ってる、いい加減ウザい」


(まさか...これって白虎イベントでトランスしてる真白の精神の中なのか!?あのイベントの最中真白の頭の中でこんなやり取りが!?スゲ――感動!!い、いやそれどころじゃない!!絶対絶命だぞ)


【...何だ貴様、さっきから何を言っている?】


「!?まさか俺の考えてる事を!!?」


「?城二の考えてる事?何それ興味ある」


(心の声は真白には聞こえてないが白虎には聞こえてる...いや、これは不幸中の幸いか...)


(白虎、少し俺の話を聞いてくれ)


【何故我が貴様程度の人間の話しを聞く必要がある?】


「城二、この大きな白猫と何を話すの?」


「い、いや...白猫って...まぁ良いか、俺の方で話をつけてみる、任せてくれ」


「ん、まぁ解らんけど任せた!」


(と、言う事だ、俺れが真白の代理だ)


【下らん...引っ込んでおれ】


(お前こそ、玄武からすれば引っ込んでろって言われんじゃないの?)


【...何を知っている?】


(お前は4聖獣の中でも特に力を持つ玄武を出し抜く為に、玄武の器たる真白を引き込もうとしてる、そうだな)


【(お前は何者だ?)】


(俺に直接、語り掛けてるのは正解だよ、ただし俺が何者かは此処で語るつもりはない、まぁお前がビビっるのも解るがな)


これはハッタリだ、白虎が本気になれば...いや本気にならずとも俺など爪の一掻きで絶命するだろう...まさかこんな所に死亡フラグが潜んでるとは...


(はっきり言って、真白は綿津見神(ワダツミ)と既に契約している、如何に4聖獣とは言え同列の神との契約を勝手に書き換えは出来ないはずだ)


【(貴様、我等神の契約にまつわる事まで知っておるのか?)】


(そこで交渉だ、真白は何れ契約という概念を必要としない特別な力を得る事になる、其れ迄真白...器に入るのは待って貰えないだろうか?)


【(何だその契約を必要としない特別な力とは?)】


(召喚だ)


【(しょうかん?聞いた事の無い言葉だ...それは如何なる力だ?)】


(ここで詳しく説明しても今のお前では理解出来ないだろう、俺を信じるも信じないもお前次第だが神たるお前には判るのでは無いか?真白が既に別の神と契約をしている事が)


【(確かに...それは貴様の言う通りの様だ)】


(真白が召喚の力を得たら必ず、お前と真っ先に召喚契約する事を約束する、それまで俺と仮に契約して時期を待て)


【(...その約に何を掛ける?貴様なら解るであろう神に何かを要求する場合は、願い出る側に担保が必要だ、貴様は何を差し出す?)】


(俺の命ではどうだ?安いかもだが今の俺に出せる手札は無い、それと仮契約すれば俺の正体も判るかもしれんぞ?)


【(まぁ良かろう、不本意だが一時的に貴様と仮契約をしてやろう、幸い貴様の枠が1、開いている...そこに納まり貴様の言が正しいか妄言か見届けてやろう)】


そう言うと、白虎は徐々に透明になり...やがて消えてしまった、消える寸前に一陣の風が俺を吹き抜けその風に両サイドにある白く燃える松明が消えてしまい部屋が真っ暗になる


・・・・・・・・・・・・・・


!?



石部屋が暗くなったと思っていたがどうやら自分で目を閉じていた様だ...ゆっくりと目を開けると、そこは元の真白の部屋の中...ふと右手に感触が有り見てみると、真白が俺の手を掴んで握っていた


「城二、あのねさっきソコに大きな白い猫が居たんだけど」


「あ、ああゴメン俺見てないや、縫いぐるみ?」


「あ、いや...何でもないよ、それよりご飯でしょ?いこう」


取り合えずその場は適当に誤魔化しておいた...命を懸けて白虎と交渉したなどと、知られる訳にいかない


その日の夕食時も、真白に特に変わった様子も無くいつも通り沢山お代わりしていた


(まぁ俺の方が夢見てた可能性も有るしな...取り合えず後1日修練を頑張ろう)




しかし、翌日の黒域での修練中に俺はこの事が夢じゃ無かったと知る事になる...








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