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第26話 神骨頂

「城二ぃ――――大丈夫――――?」


岩場を挟んだ向こうから、俺を心配する真白の声が聞こえる


「お―――!こんなの余裕だぁ―――!心配するな――――!」


と、目いっぱい見栄で返事しておく


滝の背後からゆっくりと前に進み背筋を伸ばして頭、肩、均等に滝を受ける様に立つと...


「おっさっきより良いかも!?」


しかし油断していると直ぐに右左どちらかに体が揺さぶられ川の中に押し込められる...


(集中集中!)


今度は油断しない様に滝に打たれながら目を瞑る......ただ左右の肩にかかる滝の力を感じ取り自分の中でバランスを取る・・


目を閉じていると、頭の天辺や両肩の感覚が鋭くなったように思う...そのうち耳に流れる滝の轟音も聞こえなくなった・・・


ただ、頭上から流れ来る水の流れに逆らわない様に体幹を維持する......



『中々やるでは無いか...少し見直したぞ?』


(...その声は白虎か!?やはりあれは夢では無かったのか......)


『何を訳の分からぬ事を、それより貴様の過去は中々興味深いな...多元世界とな?しかも我と仮契約したのは元の貴様の方の器だ』


(何!?てっきり城二の器と契約したのかと...)




『・・・・』




(何で黙る白虎????)





『まぁ、そう邪険にするな、そもそもこうして我と会話出来ている事こそ滝刑の神骨頂(真骨頂)よ』


(神骨頂...確か滝刑を通じ精神集中状態で一種のトランス状態になり精神だけが秘境の先の神域の神と交信出来るというアレか?)



『ほう...流石に良くしっておるな、まぁ我は仮契約の身だ対話出来てもギフト(恩恵)出来るスキルも無いしな』


(全くの役立たずだな......)


『ハハハ確かに、我も真なる聖獣の器と「召喚」だったか?の契約を得る迄の腰かけでお前に棲んでるだけだ、だがスキルをギフト(恩恵)出来ない代わりに神憑依には応じよう、だからパッシブスキルは憑けてやる』


(あ~はいはい..でも、まぁパッシブだけでも有難いぜ)


いや?これは中々にラッキーなのでは?パッシブのみで他の専用スキルが付与されないのは残念だが、神憑依が出来る事でアピールにはなる


(スキルを見せてと言われたら...の、事は後から考えよう)


🔶


神憑依とは、自身と契約した神の力をその身に宿し現実に行使する為の方法で、神降ろしにおいて最も一般的な方法である


基本的に契約神から付与されるスキルには大きく2種類あり、契約した時点で得れる神憑依してない状態でも発現する常駐スキル(パッシブスキル)と


神憑依時に使用できる恒常スキル(アクティブスキル)の2種類が有る


パッシブスキルには「腕力強化」「知覚強化」「アナライズ(鑑定)」「スティール(隠密)」等がある


一方で、アクティブスキルは「風の攻撃スキル」「回復スキル」「範囲結界」等、神々の特徴により多種多様になっている



そして神憑依の更に上...修練に修練を重ねた者だけが身に着けられる技......神衣というさらに上位の形態が存在する


🔶


『しかし、黒域か...ここは玄武の奴の力が特に強いな、気に入らぬ』


(俺も詳しく知らないけど、4聖獣はそこまでお互い仲良くないのか?)


『相克という奴だ、我等は青龍より左に回る形で相克となっておる青龍→朱雀→白虎→玄武→青龍とな』


(つまり白虎は朱雀と玄武とは仲が悪く青龍とは仲が良いとそういう事か?)


『仲が...まぁそんな簡単な関係では無いが概ねそういう事だ』


(それが玄武の器になる予定の真白の器に収まろうとした理由か?)


『ほう...中々鋭いな』


(成程、相克たる朱雀と玄武の内でも玄武に力を付けられると、本来有利なはずの玄武に力が発揮出来ず白虎一人だけ煽りを受ける事になる..まぁそんな所か)


『恐れいった......では、我が何故力が弱まるのを防ごうとしているか解るか?』


(裏鬼門...富士山麓に出現した神石...天の岩戸と、対を成す..地の岩戸)


『......貴様...本当に何者だ?神である我が身震いしたぞ...我は憑いてはならない者に憑いてしまったのかも知れぬな...』


(......)


それ以降で白虎の声は消え聞こえなくなり、再び耳に滝の轟音が聞こえてくる


「ん??」


目を開けると少し日が陰っていた...どうやら昼をまわって夕方になった様だ


そして滝壷の向こう岸には服を着替えて頬杖をついて此方を見つめる真白の姿が...俺は流れ落ちる滝から身を外すと急に体が軽くなった様な気がした


そのまま滝壷を渡り真白の元へ駆け寄る


「ん?あ、終わった?城二、結構集中してた...かなり神視も研げたはず」


「おう、手ごたえ有ったぞ!!」




俺は真白に笑顔で答えピースサインを送った



こうして3日間と短いが中身の濃い「玄武の雨濡らし岩場」での真白との修練が終わった...




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