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第27話 推しの手料理を堪能する

最終日の修練を終え、青域の宿泊部屋に戻る途中で不意に真白が何か思いついた様に俺の前に立つと


「城二、ご飯少し遅くなる先に着替えとお風呂済ませて」


それだけ言うとタッタッタと駆け足で本館の方へ戻って行った


少し気にはなったが、同じ滝刑して俺の方は足腰がガタガタになっており、ここまで歩いて帰るのもガニ股になりながら必死で戻って来た


未だ大きな実力差を真白との間に感じながらも、精一杯頑張れた事に充足感を感じてる


コテージに戻ると手早く着替え用意し、本館裏の露天風呂へと向かう...


今日も貸し切りの大浴場に解放感一杯で、ついつい湯船の中で泳いでしまった




「北野様...これお嬢様からの差し入れに御座います」


「!?貝塚さん!?」


湯船で平泳ぎで遊んでいると、脱衣所のドアのところに貝塚さんが何かを持って立っていた


「ここに置いておきますので、空の容器はお持ちください」


貝塚さんはドアの側にある岩の上に小さなお盆を置いて出て行った


「...何だ?」


お盆に乗っていたのは甘い香りのする白濁とした飲み物...甘酒だった


「甘酒かぁ~おおこれは桜の香りがするな...良い匂いだぁ~」


湯船に浸かりながら、熱々の甘酒を口に運ぶと、鼻先に桜の香りが広がる...


「疲れが吹き飛ぶようだ...」


満月と星空を堪能しながら、玄武の修練場での最後の露天風呂を満喫した



風呂上がりで自分のコテージに戻る途中で、貝塚さんに呼び止められる


「もう直ぐ夕飯の御用意できますのでお荷物を置かれましたら広間へ起こし下さい」


「分かりました」


あまり二人を待たせるのは悪いと思い、手早く支度を済ますと本館にある広間へ向かう


「城二そこ座って」


何時もなら先に座って待っている真白が何故かお膳を運んでる


「あ、真白俺も手伝うよ」


「ん、いい城二は座ってる」


真白は俺の手伝いは不要だと言い空になったお盆を片手に台所に消えて行く


「今日は如何したんだ?エプロンまで着けて...」


暫く座って待っていると、真白が貝塚さんと共にお盆を手に広間に戻って来た


「ん、城二どうぞ」


真白が俺の前でお盆を見せるので一つお椀を取る...蓋がついており中は見えない


真白も自分のお椀をお膳に置くと、エプロンを着けたまま席に着く


「ん、それじゃ頂きます」


「「頂きます」」


本日の夕食は、キノコの炊き込みご飯に、茄子と筍の天ぷら、お漬物盛り合わせと、汁物は...山菜のお吸い物だ


俺はまずお吸い物を一口...ズズズ・・・・・


「うん、美味しい...優しい味だ...」


「ん、良かった」


隣で真白が嬉しそうにしている、俺が疑問に思っていると貝塚さんが


「本日のお料理は真白様が、山で捕ってこられた山菜やキノコを使ってご自身が料理されました」


「え!?真白が?!凄いじゃないか!!本当に美味しいよ」


驚いた、真白の...推しヒロインの手料理を味わえるとか、感無量だ...公式の設定にも真白は料理が得意とも不得意とも記載は無かった


だが、出会った頃に食べていた弁当については自分で作ってる様な事を言っていたので、やはり魔都東京1999の世界観より個人の特徴が深堀されて洗練されている


「ん、城二の為つくった一杯お代わりするといい」


少し照れながら箸を持つ手で小さくブイサインを見せる真白は、やはりゲームの中でも可愛かったがコッチの現実では更輪をかけ最高に可愛いなと思った



・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・



夕飯を食べ終わり、後か片付けはどうしてもと言い手伝わせてもらった...その夜


コンココッコン♪


リズミカルにノックされる部屋のドア、真白だろうとは思いつつドアを開ける


「よ」


額に当てた右手の人差し指を俺の方に突きだし挨拶する真白、反対の左手に何やら包みを抱えていた


「どうした?こんな夜に」


「ん、まぁせっかく持って来たのに遊んでなかったから」


そう言うと真白は俺のベッドの上に包みを置いて中身を取り出す


「ん、一杯ある」


見るとトランプにUNO、ボードゲームにオセロ等、ベッドの上に卓上ゲームが散乱している


「あの大荷物は此れかぁ~」


「ん、漫画は城二が持って来ると思った」


真白は俺の事をよく判っており行動は見抜かれている様だ...ノンビリしていてオットリしてる様で侮れない


「これ全部今からするのか!?」


「ん、モチモチブイブイ、城二...今夜は寝かさないぜ」


口元を吊り上げ悪魔的な笑みでブイサインをする真白


「いや、それ若い男女が夜にベッドの上で言うと本当は別の意味だからな!?」


「ん、ゴチャゴチャ煩い、トランプ配れ」


真っ新なトランプケースを渡され封を開け、新品のトランプを念入りに混ぜながら


「真白何する?」


「ん、知らん」


「はぁ!?トランプ知らないのに持って来たのか!?」


「ん、トランプだけじゃない全部知らぬ、城二教えろ」


真白は流星眼をキラキラ輝かせながら俺の方へ身を乗り出しワクワクと肩を揺らしている


「そんじゃ、ブラックジャックとかにするか...ルールだけど・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・てな感じだ、スペードのエースとスペードのキングの組み合わせの21が一番強い」


「フフフ、ルールは覚えた勝ち筋も見えた楽勝」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・





「グヌヌヌヌ...」


「なぁ真白いい加減、他のやろうぜェ~ブラックジャック飽きたよぉ~」


真白は明らかに21より数がオーバーした手札をベッドに放り投げて


「もう一回、今度は勝てる」


(コイツ...流星眼で俺の心を探れば良いのに...)






その夜...真白の宣言通り一睡もする事は無く翌朝を迎えるのだった
















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