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第29話 ゴールデンウィーク中日の登校で元許嫁とニアミスする

「道代さん行ってきます」


「城二様いってらっしゃいませ」


今日は連休中日で平日だ、大手企業は9連休とか取るらしいが、前の世界では連休が有った記憶が無い


電車に揺られ通勤姿のサラリーマンの数が疎らな様子を眺めながらふとそんな事を思い出す


『南原君...君ねぇデバッグ作業が遅れているのに連休とか...仕事舐めてるの?』


『社員の福利厚生ぇ?そんな一銭にも成らない事を考えるより一つでも多く仕事を取ってきて会社の利益確保だよ』


『アハハハ、俺のような時代の兆児に、付いて来れる君達社員は幸せ者だぁ~休んでなんか居れないぞ?』


目の前で吊革に摑まっている会社員の浮かない表情を見ていると、何だか少し懐かしいとさえ感じる



【東光橋東ィ~東光橋東ィ~出口は左側になります、御降りの際はホームとの段差にお気をつけ下さい、次は東光橋東ィ~】


もう直ぐ最寄り駅へ到着する旨のアナウンスに現実に引き戻される


(イカンイカン、今はサラリーマンじゃない学生だ、学生の本分を全うするのみ!!)


俺は席を立ち、目の前の吊革に摑まってる疲れてそうなサラリーマンの男性に「どうぞ」と告げドア付近へと移動した


ちらっと元の席を確認すると、あのサラリーマンの男性は無事座れた様だ、心の中で良かったと安心する


電車の乗客の殆どが学生だったのか、着いた駅で多くの生徒が合流する


中には待ち合わせいてた者、連休で何処行ったとかの話題で盛り上がってる者、だが殆どの生徒は俺と同じく一人で学校に向かって行く



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・



登校時...相変わらず他の生徒は俺の周りに近づかない様に距離を置いて、遠巻きにヒソヒソと好き勝手いってくれてる


慣れてしまったと言ってしまうと評価を挽回する為、今頑張って努力してる事を否定する様な気がしたので気にしなくなった...としておこう


下駄箱で上履きに履き替え、2Fの自分のクラスに入る


「・・・・・・・・・」


ドア越しに聞こえていた楽しそうな会話は俺の姿を見た途端、波が引くようにシーンと静まり返る


(地味にこれが一番堪えるよな...)


誰とも挨拶する事も無く自分の席に着く


「あ、あのぉ城二君?...連休はどうだったのかなぁ?」


かと思っていると、取り巻きの男の子が作り笑いを浮かべ俺の席へとやって来る


(正直あんまり関わり合いになりたくないんだがな...)


そう思いながらも表情に出さない様に答える


「あぁ、3日間は自然豊かな所で過ごしたよ」


「おぉぉ、箱根とか伊豆とかかな?流石城二君、大人な休日の過ごし方だねぇ」


勝手に勘違いしているが、俺の言ってることは間違ってないので敢えて何も答えず机の中に教科書やノートを仕舞って行く


「と、所で...前に言っていた...秘境テストのパートナーって...」


(ああ、コイツ無理やり俺にパ7ートナーにされるのかとビビってるのか...それはコッチが願い下げだ)


「ああ、もう決まったよ」


「そ、そうかぁいやぁ~俺も城二君と一緒に秘境テスト挑んで暴れまわりたかったんだけどなぁ~残念だぁ」


ワザとらしい態度に流石にイライラするので、少し乱暴に立ち上がり取り巻きの生徒を無視して教室から出て行った


閉めたドアから声が漏れる


『なんだよ!あの態度!!偉そうにぃ神視もまともに出来ない出来損ないがぁマジ「北のクズから」だな!!』


そんな罵声も今の俺には発奮材料にしかならない...明日のメンバー発表が楽しみだ


俺はポケットに仕舞った真白と俺の名が書かれたメンバー表を持って職員室に向かった



「失礼します、担任の皆川先生はいらっしゃいますか?」


俺の姿を見た数名の教員は嫌な顔をして目を逸らす...まぁそらそうだよな


入口で立って待っていると、他の先生に言われ俺の方を向いた皆川先生が俺の元へとやって来る


「どうした、北野...私に何か用事か?」


「これを提出に来ました」


俺は秘境テストのメンバー表を皆川先生に手渡す、皆川先生は俺のメンバー表に目を向けると、書かれてる名前を見て驚きで目を見開き俺の方を向く


「き、北野...これ」


「はい、これでメンバーは揃いました秘境テスト全力で頑張ります」


それだけ告げると皆川先生に頭を下げ教室を後にする...



(後は残り11日悔いのない様に全力で努力するだけだ...)



そう自分にプレッシャーを掛けつつ気合を入れていると...


「城二君...」


下駄箱からの正面上り階段前で、かつての婚約者である宮下 藍瑠と出くわした


「宮下さん...おはよう」


最低限の挨拶だけすると、1F奥の上り階段を目指し横を通り抜けて行く


「まっ待って、少しだけでも話が出来ないかな?」


「今更何を話しするっていうの?俺達はもう婚約者でも無ければ、恋人ですら無い赤の他人だよ?俺も君に金輪際関わらないから、君も俺に関わらないでくれ、それじゃ」


「ちょっ」


藍瑠は何か言おうとしていたが、ここで関わりを持つのは俺の身の破滅だ...俺は心を鬼にして後ろを振り返る事無く足早にその場から立ち去った


教室に戻ると丁度朝のホームルームのチャイムが鳴り皆川先生が出席簿を手に教壇に立つ


一瞬だけ俺と目が合った気がしたが...


(いや、今は真白以外のヒロインとの接触は極力避けよう)


午前の授業を終え、クラスの様子を見ると俺の方をチラチラと気にする生徒が何人も居る


(ヤレヤレ...友達と連休の出来事を話したいから早くどっか行けって顔に書いてあんだよ)


俺は昼飯となるメロンパンとフルーツ牛乳を手に何時もの屋上へと足を運ぶ



・・・・・・・・・・・・


・・・・・・


「今週号のシャンプで城二の言ってた通りあの化け物が兄妹だって言ってた」


「お、おおお、そっかぁ~いやぁ俺の推理も中々の物だぁ~アハハハ」


真白からは疑いの目を向けられていた...不味い会話を逸らさないと


「と、所で俺、朝一でメンバー表を皆川先生に提出しておいたぞ」


「ん、私もお昼ここに前に先生に提出した」


「そっか(アブねぇ~うまく会話を変えれた)真白は先生にメンバーについて何か言われなかったか?」


「ん、特に「北野君がパートナーなら最強だ」て言われた」


「あ、あぁ~それ...弟の尊と勘違いしてるポイな~」


「何それ知らない、ちゃんと北野 城二って書いたマジマジブイブイ」


真白はピースしてドヤってくる


「まぁ今日の職員会議のメンバー合わせで、俺が提出したメンバー表と照らし合わせすれば解る事だけどな」


「真白...宜しくな」


「ん」


俺達は、笑顔で右拳を突き合わせた



・・・・・・一方その日の放課後職員ミーティングにて


バンッ!!


「馬鹿な!!何でうちのクラスの雨宮さんが、皆川先生の所のクズ・・北野君とパーティーを組む事になってるんですか!?」


真白のクラス担任は机を叩いて抗議を始める


「そうは言いましてもですね、うちのクラスの北野 城二からも、雨宮 真白の名前が書いてあるメンバー表が提出されてます、間違いと言うのは無いかと」


「雨宮さんは間違って名前を書いたんですよ、北野は北野でも尊・・・弟のほうですよ!いやそうに違いない!!そうですよね、先生!!」


真白のクラスの担任は、尊のクラスの担任の先生に問いただす...しかし尊のクラスの担任が会議テーブルの中央に広げた2枚の用紙...



《秘境テストパーティーメンバー届  氏名:北野 尊》


①北野 尊 ②宮下 藍瑠 以上2名



《秘境テストパーティーメンバー届  氏名:宮下 藍瑠》


①宮下 藍瑠 ②北野 尊  以上2名



「「「・・・・」」」


「これでハッキリしましたね、北野 城二と雨宮 真白の2名が秘境テストのパーティーメンバーです」


皆川の言葉に納得して無い教員連中もテーブルに出された尊と藍瑠のメンバー表を目にしては何も言えない


結局その後も納得出来てない真白の担任は雨宮の家に直接電話で確認し


「ん、城二としかパーティー組まない」


と真白本人にハッキリと言われ、職員室で静かに膝から崩れ落ちたと言う...


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