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第32話 主人公とメインヒロインの誤算

◇ 2年5組の教室(真白のクラス)―――――――――――



朝のホームルームにて秘境テスト参加者の発表があった後の昼休み直後......2年5組の教室にて


「そ、その...雨宮さん、北野君が雨宮さんに話があるって...」


「ん」


当然、真白のクラスでも秘境メンバーの発表が有り、クラスメートの思う事は城二のクラスの連中と同じだった


しかし、真白に対して距離を置いて接していたクラスの皆は、恐れ多くて誰も真白に事情を尋ねる事が出来ず今に至るのだ


そんなクラスメートの事情など意に介さない真白は、呼ばれた教室の入り口に目を向けると、そこに立って居たのは...




「初めまして、3組の北野 尊です」


「?誰」


真白と目が合い、笑顔で真白の席の前にやってきて自己紹介をする尊...しかし真白の態度は素っ気ない


「義兄の城二が、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」


尊は真白の冷たい態度が義兄のせいだと勘違いしていて、まず先に真白に謝罪から入ったのだが...


「城二は迷惑なんか掛けて無い、寧ろ迷惑を掛けてきても良い」


「へ?」


尊は真白の言葉の意味が今一理解出来てないのか、間の抜けた声を上げる


「用事が無いなら、私行くとこあるから」


「ま、待ってくれ、兄に...城二の頼みを断れない事情があるんだろ?必ず僕が力になるから、クズな兄の言いなりになんかならないで」


「はぁ?」


真白の流星眼が冷たく輝き目の前で必死な表情で訴えてくる男を睨み付ける


「あ、そっ、そうだ、雨宮さんさえ良ければ秘境テスト、俺達とパーティー組まないか?今ならまだ先生達もメンバー変更を許してくれるはずだよ」


「宮下さんも一緒なんだ、兄も僕が一緒のパーティーだって知れば手出しは出来ないから、どうかな?いい案だと思うんだ!」


真白は尊の話しを無視して、弁当の袋を手に持ち席を立つ


「ちょっ!雨宮さんまだ話が・・・・」


「下らない、私は城二以外と組まない、もちろん貴方...名前は憶えて無いけど貴方とも組まない、これが私の返事、もう良いかしら」


冷たく尊に告げると唖然としている尊とクラスメート達を無視して教室から出て行った



・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・




◇ 学校屋上―――――――――――



「お、ようやく来たか、遅かったな真白」


「ん、少し邪魔が入った」


真白の教室は3Fへの階段の真ん前なので、何時も俺より先に来て弁当を広げて待っているのに、今日は珍しく俺のが先に来ていた


何時もと同じ小さな弁当を広げハムハムとよく噛んで食べてる真白に何処か違和感を感じる...


「何かあったのか?少し変だぞ?」


「ん、大丈夫、大した事ない」


まぁほんの小さな違和感なので、真白の言う通り大した事では無いのだろう


「あ、俺、明日から北海道の本家に帰省するんだ」


「へぇ~急ね」


「ああ、昨日親父から電話で義弟と帰ってくる様に言われたんだ」


「義弟...」


弟の話をした途端、真白の箸が止まる


「ん?どうかしたか?」


「ん、イヤなんでも無い...どの位帰ってるの?」


「俺的には早く帰って、秘境テストに向けて準備したいんだけど・・・こればかりは俺に決定権は無いよ」


「そっか...何かあれば連絡して」


「おう!頼りにしてるぜ相棒」


「ん」


「あ、そういや、お手伝いさん...立花さんて言うんだけど、北海道のお土産でメロン味のマカロンが有るらしいんだ、真白メロンにハマってんじゃんお土産に買って帰るよ」


「メロン...マカロン...」


真白の雰囲気が少しだけ明るくなった様な気がした


「ん、楽しみにしてる、城二は帰ってこなくてもメロンマカロンだけは送れ」


「おい!!どういう事だ!」


「フフフ、冗談」


「ちぇ~ひでぇヤツ...フフフフ」


二人で冗談を言い合いながら楽しく昼食を食べてる内に、いつの間にか真白に感じた小さな違和感も解消していた



・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・



◇ 2年3組教室(尊と藍瑠のクラス)―――――――――――


隣り合わせの席で昼食を食べてる尊と藍瑠は、いつに無く深刻な雰囲気だった...


「そう・・・雨宮さんは城二君としか組まないって?」


「ああ、きっとあのクズ兄貴が雨宮さんの弱みを握って脅してるに違いないんだ」


箸を握り潰しそうな程力を込め拳を握り悔しさを露わにする尊...


しかし藍瑠は以前、屋上で見た二人の楽しそうに談笑してる姿が頭の中で巡り別の意味で心がザワついている


(何だろ...この不安な気持ち)


「俺、明日実家に帰ったらお義父さんにクズ兄貴の事を全部正直に話すよ」


「え?」


「いや、さっき言っただろ?明日、実家に帰省するんだ兄貴も呼ばれている」


「え?そうなの?ゴメン聞いて無かった...」


「どうしたんだ?体調でも悪いのか?さっきから変だぞ?」


「ご、ごめん...昨日筆記テストに向けて、少し復習してて遅くなっちゃったから...」


これは事実だ、昨日勉強に集中してたら何時も寝る時間を、かなり過ぎてしまって2時間遅れで就寝したのだ


「そっか...まぁ頑張るのは良い事だけど、試験までまだ一週間以上あるんだ今から根を詰めてたら身体が持たないぞ?」


「う、うん判ってる...と、ところで何で急に実家に帰省する事になったの?」


(まさか...私と尊君の婚約の話が、また私の知らない所で進んでる?)


「さぁ?話が有るからとしか、お義父さんは言って無かったからなぁ~」


この様子だと尊君は本当に知らない様だ...とにかく自分の知らない所で、勝手に自分の将来を左右する事を決められるのはもう懲り懲りだ


「そう...気を付けて行って来てね」






(何で、こんな事になってるの...そもそも何がしたくて城二君と婚約破棄したんだっけ...あの地獄から抜け出す為?それとも尊君と?・・・・判らない・・・)


藍瑠は自分の中にある不安感と、モヤモヤ、そして目の前に居る北野 尊への気持ちの変化に自分自身が戸惑い悩んでいた...


















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