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第35話 見知らぬ実家

〇北海道 札幌市郊外



俺はバスと電車を乗り継ぎ、ようやく実家のある近くのバス停に降り立つ


「ふぅ―――流石に体が痛いな――――ン―――――」


トランクケースを降ろして、一息つきながら背伸びをする


札幌市とは言え郊外の田舎...バスの乗客は2,3人しかおらず、バス停に俺を降ろした後、砂埃を巻き上げ走り去った


本当に何も無い、山と、田んぼと、畑だけが見える田舎道の真ん中で周囲を確認する


城二の記憶が無い俺にとっては初めて来たも同然...右も左も分からない...が


「あの奥に見える大きな屋敷かな?」


田んぼ道の奥に、ポツンと1軒だけ見える大きな屋敷、取り合えずそこへ向かう事にした



・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


【北野】


達筆な行書体で書かれた大きな木製の表札の掛かった大きな門の前に俺は今立っている...


(これ、見覚えがある、確か決闘チュートリアルで城二が尊に殴り飛ばされた際に、吹き飛んでブチ破った玄関の門だ)


俺は若干感動しながら門の木質を手で触って確かめていた...



ギィィィィィィ



すると突然、門が重たく軋む様な音と共にゆっくりと開いて...


「「「お帰りなさいませ城二様」」」


数名のお手伝いさんや執事の方が頭を下げて出迎えてくれた...呆気にとられていた俺も慌てて頭を下げる


「あ、どうも...ただいま...です」


ヤバい、全然顔と名前が分からない...あ、奥にいるのは立花さんだ...


「あ、あぁ~立花さん先ほどはありがとう御座いましたぁ~」


俺はワザとらしく手を振りながら、トランクを転がし立花さんの元に歩み寄る


『立花さん、申し訳ないのですが、この方達の名前教えて頂けませんか?』


『本当にどうなされたのですか?城二様...いえ、畏まりました、先ず左におりますのが...』


俺は一通りお手伝いの皆さんの、顔と名前を頭に叩き込み立花さんに案内されながらお屋敷の中に通される


自分の部屋も判らないので、ここは仕方なく立花さんに荷物の運搬をお願いして、白々しくその後ろを付いて歩き、無事に北野 城二の部屋に到着出来た


「では此処に荷物を置いておきますので、私は失礼させて頂きます」


連れて来られた部屋は、今のマンションとほぼ同じ広さの16畳くらいある広い部屋だった


部屋の中にはタンスが2基と勉強机と本棚、そして壁際に大型のテレビと部屋の4角の天井に音響スピーカー


転生前の自分の部屋を思い出し比較して考えると、この家具の充実ぶりには驚いてしまう


「幼少期の城二はどんな生活をしていたんだろ・・・・」


ふとそんな興味を抱き、本棚に小学校とか中学校の卒業アルバムでも無いかと探して見るが、そうやら城二はそう言うのに興味が無いのか、真っ新な参考書の数倍の量の漫画が本棚を埋め尽くしていた


どの位この部屋に滞在するのか分からないが着ていた上着を脱ぎタンスに掛け持って来た参考書と効率化した修練の攻略法を書き記した㊙ノートを取り出し机に並べる


「この後で時間が取れるか分からない...今の内に日課をこなそう」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・97、98、99、100っと


「ふぅ―――取り合えず日課の筋トレとオリジナルの型の刑は終わったな...」


真白との玄武修練場での併せにより、目覚ましい成長を遂げてる事に実感を感じる...身体つきも以前より筋肉量が増えた気もしてきた


『この地は地脈が豊かだな』


「!?白虎か!?」


ポンッ!


白虎の声が聞こえたと思った途端、俺の足元で白い煙が上がったり中から白と黒の縞模様の猫が現れる


「ニャ―――ニャ――――」


「っ?!まさか白虎か!?」


『フフフ、驚いたか?中々に愛らしかろう、これなら、あの玄武の器の娘もイチコロであろうが』


猫の姿になった白虎は、白と黒の縞模様に青と黄色の瞳をした、どこか貴賓を感じる御猫様の様だった


しかし...


「だがなぁ~」


『なんだ?』


俺は白虎のお尻の方を指さし


「その尻尾...2本有るのは、おかしいだろ」


『これは白虎の誇りだ、如何に姿を愛玩動物に落とそうとも、誇りは譲れん』


何やら良い事を言った体で、澄ました顔をしている白ドラ猫に、だんだんとイライラしてきた


「あぁ~そうかい、じゃお前のもう一つの自称、「愛らしい」姿に名前を付けてやらないとな!!」


『おおお、それは良いな是非カッコいいのか可愛いのを頼むぞ』


「トラだ」


『......はぁ~?トラぁ?お前のネーミングセンスは壊滅的だな、幼子が思いつく様な安直な名だな、再考を要求する』


「フフフ、残念だな俺は知ってるんだ、契約した聖獣が、使役状態の姿を固定化するのに名前を付ける事で強制力を持たす事が出来るって」


『!?貴様ぁ儂を謀ったな!!』


「残念だったな、お前は俺が「白虎」と...」


白虎は、俺が「白虎」と言葉に出した途端、猫の姿から部屋の天井を突き破る程の大きさの神獣である白虎の姿に変身した


「そんで俺が「トラ」と...」


そして今度は俺の「トラ」という言葉に反応し先ほどの子猫の姿に変身する


「て訳で、お前の名前は「トラ」だ、フフフ、仮とは言え俺とは契約してんだ契約者の権限だしな~」


『グヌヌヌヌ...まさか聖獣の使役方法まで知っておろうとは...侮ったか」


「でも、まぁお前がこうして近くに居てくれて今は心強いぜ」


『ふん、都合よく煽てても儂の機嫌は取れぬわ』




トラは行儀よくお座りした状態で、プイとソッポを向いてしまった




ヤレヤレ...































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