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第36話 針の筵の家族会議

〇北海道 札幌市郊外 北野家 本家屋敷



猫化した、トラ(白虎)の2本の尻尾に赤と水色のリボンを付ける


「貴様ぁ気高き聖獣白虎の誇りたる、二股の尾を何と心得るか!!」


ちなみに、こうして俺と会話しているが俺以外の人からは


「ニャー、フシュ―!!、ミャ――」


としか聞こえない様だ、先ほど部屋にやって来たお手伝いさんに、慌ててトラの事を誤魔化そうとしたが


「城二様、その猫は迷い猫でしょうか?さっきから鳴き声がしてましたので」


其れをトラに確認すると、白虎の認めた者もしくは神域や秘境の様な特殊な状況下でしか俺以外に声は聞こえないらしい...先に言えよ、焦ったじゃないか


しかし、自室とは言え猫を勝手に飼ってるのは不味い...トラには取り合えず姿を隠して貰う


「...てか、それ薄くなって透けているが消えては無いよな?」


「貴様は無知だな、これは隠形といってだな人の認識から自分の姿を外す能力だ、貴様が儂の事を見えてるのは儂と言う存在を認識してるからじゃ」


何を言ってるのか半分も理解出来て無いが、つまるところ白虎に誰も気付かないのであればそれで良い


そんな時...



コンコン♪



部屋のドアがノックされる


「どうぞ~」


俺の返事に「失礼します」とお手伝いさんが部屋に入って来て頭を下げる


「城二様、旦那様がお話しがあるとの事で応接までお越しください」


「分かりました」


俺はお手伝いさんに付いて部屋を後にした...俺の足元には隠形のスキルを使って身を隠している、トラが一緒について来ている


お手伝いさんは大きなドアの前で止まり


「城二様をお連れしました」


そう話しドアを開け、ドアノブを手にもったままドアの横に立ち頭を軽く下げ、俺に中に入る様に促した...



部屋に入ると大きなテーブルを囲う様にソファーが4基配置されており、そこには既に3名が座っていた


「久しいな...直接会うのは1年ぶりか」


正面に座るのは父親の北野 文弥だ、相変わらず気難しそうな雰囲気を出している


俺から見て右側に座っているのが母親の北野 牧子、母は少し潤んだ目で俺の事を見ている


そして一番手前に座っているのが...



「やぁ、義兄さん...来る途中で立花さんに聞いたけど電車とバスを乗り継いて帰ってきたって?どういう風の吹き回しだい?」


(尊の表情はいつも通りだ...ゲームでは城二にイビられながらも、義兄が何時か自分の行いを恥じて更生してくれる事を望んでる様な心理描写だったが...)


「ああ、立花さんに気を遣わすのも申し訳ないと思ってな、それに久しぶりの地元だ街の風景でも見ながら帰ろうと思っただけさ」


「へぇ――――」


(なんだ?この違和感...尊...いや主人公から感じるこの嫌な雰囲気は...)


しかし、尊の表情に変化は無い...俺の気のせいか?


『おい、城二気を付けろコイツの気配は少しヤバい事になりそうだ、気を抜くな』


白虎からの助言に声を出して返事する事も出来ないので頷くだけにする


「まぁ、とにかくそこに座れ」


父親から指示されたのは左側のソファーだ、俺はゆっくりと浅めに腰を掛け3人を見渡す


「家族が揃った所で、本題だが」


父は一瞬だが俺の方へ視線を向け


「この度、正式に城二と宮下 藍瑠 嬢の婚約を両家の合意で解消する事になった」


その話を聞いて母親が悲しそうな表情をする...こんなクズでもお腹を痛めて生んだ実の息子だ...心配するなと言う方が無理だろう


(一番悪いのは、散々人に迷惑をかけてきた城二本人だからな)


俺は視線だけ右に向け尊の表情を伺う...


(表情に...変化無し...か)


「しかし、これは北野家側の不徳で招いた事...そうだな城二」


俺に皆の視線が集まる


「はい、この度の宮下 藍瑠さんからの婚約破棄は全て僕の不実、不徳、不敬な行いによる物です、非は全て僕に有ります」


淡々と答える俺に母親は顔を覆って俯く


「そこで儂は、宮下家に対し正式な謝罪をして、婚約解消に対する慰謝料を支払う事にした」


(そうか...慰謝料が発生する所まで考えて無かった...これは不味いな)


想定外の話に動揺するが、表情には出さない様に務めた...


「その上で、新たに宮下 藍瑠 嬢と尊との婚約を申し入れた」


「あ、あなた!?」


此れには流石に母親も黙ってられない...嫡男がダメにした婚約者を養子縁組した次男が嫁にする


分家や地元の名士達がこの事実をしれば、北野家の跡継ぎに相応しいのは何れであるか確認するまでも無い...


「宮下家からの返事はまだだが、慰謝料の支払いは既に済ませてある...城二何が言いたいかわかるか?」


再び俺に3人の視線が集まる



「はい、僕に責任を取らせる為、この慰謝料は僕自身で支払えという事ですよね」


こうして針の筵に座らせられた、綱渡りの様な家族会議が始まった






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