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第37話 家族会議中に追い詰められ、再び死亡フラグが...

〇北海道 札幌市郊外 北野家 本家屋敷 応接室




父親から宮下家との婚約解消は全て俺の責任だと告げられ、俺も事実なので全面的に認めた...すると


「宮下家からの返事はまだだが、慰謝料の支払いは既に済ませてある...城二何が言いたいかわかるか?」


再び俺に3人の視線が集まる


「はい、僕に責任を取らせる為、この慰謝料は僕自身で支払えという事ですよね」


「!?」


「......」


俺の言葉に母親は驚き、尊は表情を変えない...


「察しが良いな...」


「ただ、父上は僕に支払い能力が無いとお考えで代替案を用意した」


父親の表情が少しだけ緩み、表情には出さないが俺の話しに興味を示していた


「それが秘境内で得られる、最終地点のダンジョンアイテム...」


「驚いたな...前に電話で話をした時に既にそこ迄予測して儂の問いに答えたのか」


俺は黙って父に頭を下げる


「しかし、解せんなそこ迄考えの及ぶ知恵が有りながら、何故婚約解消となる前に身を正そうとしなかった?」


「それは先に電話でも申しました通り、自分の事を見直す切っ掛けがあったとしか言えません」


父親が俺に対し温和な姿勢をみせた事に、ホッと安堵の表情を浮かべる母親...しかし


「お待ちくださいお義父さん、僕は此処で義兄さんにお聞きしたい事が有ります」



珍しく尊が意見を述べる...



知っての通り尊はこの家に養子として迎え入れられた、それは尊の持つ天才的な素質に目をつけた父の思惑による物なのだが


実子である城二が居るのに迎え入れられた尊の扱いは、やはり城二のスペア(代替)という立ち位置だった


ただ、よくある不遇な環境という訳で無い...北野家の養父母は尊に対しても普通に接してくれたし、北野家の息子として扱って貰えていた


だから尊は養父母に対して不満や恨みなど一切ない寧ろ引き取ってもらい育ててもらった事を感謝してるのだ


だが...実子で義理の兄である城二だけは別だった...


実力が有り、努力を惜しまない尊は凄まじい勢いで成長していく、それを面白く思わない城二は両親に見えない所で尊をイジメだす


養父母に人並み以上の生活をさせて貰い、実の子と同じように育ててくれた養父母に返せない恩義を感じていた尊は城二からのイジメを養父母が知ると悲しむと思い、高校に上がる迄常に耐え続けて来たのだ


東京の高校に城二と通う事になった時も、父が都内に購入したマンションは城二と尊二人で一緒に暮らす事を前提に考えていたが、当然城二は大反発


尊の方も、今まで城二のイジメに耐え続けていたのも有り城二の意見を尊重すると言う建前で自分は学校の寮に入る事を望んで了承したのだ


そんな尊が養父母の前で、城二に対し何かを尋ねるなど、ゲームのプロローグと序盤の物語を知ってる者からすれば違和感でしか無い


「何だ、尊、言いたい事があるなら言って見よ」


父親の許可を得て尊は俺の方を向き直り、鋭い目を向ける


「ではお聞きします、義兄さんは先ほど婚約破棄の慰謝料を立て替えて下さった、お義父さんへの贖罪の為秘境テストへ挑み最深部へ到達しアイテムを持ち帰りその証にするという事でした、間違いないですか?」


「ああ、その通りだ」


「義兄さんはその為に2年生の中で断トツの実力を持つ雨宮さんをパートナーとした」


「確かにその通りだ、それが何か問題あるのか?」


バンッ!!


「大有りです!!義兄さんは、雨宮さんに協力を得る為に強引な手法で無理やり迫ったそうじゃないですか!!」


(コイツもか...お前は主人公なんだぞ?そんな周りの雑音に惑わされちゃラスボスを倒すなんて夢のまた夢だぞ..)


「城二、それは本当か?雨宮家と言えば宮内省にも縁のある古い宮家では無いか、その令嬢に何かしたのか?もし本当なら宮下家との婚約解消どころの騒ぎでは済まないぞ」


父の話を聞いて、母親は顔を真っ青にして震えている


尊は...!?


尊は真剣な表情で変わらず俺の事を睨み付ける...だが最初にこの部屋に入った時に感じた嫌な感じ...今も又俺の背筋をゾクゾクさせる


「どうした?どうして何も言わない」


雰囲気に呑まれ上手く言葉が出てこない...これは、まさか俺に何も弁解させず、誤解されたままで立場を悪くさせ最終死亡フラグに導く流れか‥‥


『城二、何を気圧されてるしっかりしないか!!』


トラからの激励も、息が旨く吸い込めず言葉が紡ぎだせない...不味い...このままでは...ピコン♪


絶体絶命のタイミングでスマホのメッセージが着信を知らせる


おれは震える手でズボンのポケットからスマホを取り出し...ロック画面の上に表示されてるバナーを確認する





《真白:言い忘れた、城二毎日寝る前に電話して》



流石、俺の一推しヒロイン...





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