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第48話 一つの食べ物を分け合えれば、それはもう友達だ

〇駅前大型ショッピング施設  「ミオンモール」敷地内の「ムーンバックス」店内




真白に北海道のお土産を渡す為待ち合わせいていたミオンモール敷地内のムーンバックスから出ようとした所、偶然にも出くわした藍瑠に懇願され出た所のムーンバックスに逆戻りして藍瑠からの相談事を聞いていた


藍瑠の話を聞くと北野家から俺との婚約解消の代替案として、尊との婚約を打診されている宮下家は諸手を上げて歓迎してる様だが...


当の本人である藍瑠はいまいち乗り気では無さそうだ、魔東99では主人公とメインヒロインと言うだけあって初期の段階からかなり好感度が高く、サブクエや他のヒロインとの好感度イベントを適当に進めてるだけであれば、とてもじゃ無いが藍瑠との好感度を超えて個別の恋愛ルートへは到達できない


ゲームをプレイしていて他のヒロインとの恋愛ルートとエンディングを目指すにあたって、宮下 藍瑠とは好感度という高い壁となってプレイヤーに立ちはだかって来るのだ...


その宮下 藍瑠本人が主人公である北野 尊に対し不信感を抱き始めてる...この事が俺にとって...いやこの世界にとって吉となるのか凶となるのか...


「それで、宮下家は北野家に尊と宮下さんの婚約の件、何て伝えたの?」


「...今の所 保留にしてもらってる」


その表情は相変わらず暗い...きっと藍瑠自身もどうしたら良いのかはっきりしないのだろう


「何時迄に返事するの?」


「ハッキリと何時とか言われて無いけど学校の行事が終わってひと段落する迄かな?...」


「となると1週間後の秘境テストが終わる頃かな...」


藍瑠は黙って頷いた


「宮下さんは尊と一緒にパーティーを組んで挑むんだろ?そこで最終判断したらいいんじゃないかな?」


「俺の眼から見ても、義弟ながら素質も実力も十分だし北野家という枠に収まらない傑物だと思ってる」


「!?ほ、本気?本気でそんな...城二君が尊君を褒めるなんて...あり得ない...」


しまった、ゲームの進捗を正常に戻したいという想いから尊の事を持ち上げる様な事を口にしてしまった...俺自身の努力で成し遂げないと意味ないのに藍瑠と尊の関係に干渉する様な事を...


俺が自分の発した言葉で自己嫌悪で落ち込んでいると


真白がポンポンと俺の背中を優しく叩いてくれる


(そうだよな...俺は俺の信じる道を進むのみ、自分の眼で、自分の耳で、自分の心で、さっき真白が教えてくれた...迷う事は無い)


「宮下さんが尊の事をどう思うか、それは宮下さん自身が決める事だよ宮下さんに尊を想う強い気持ちが有ればきっと尊は道を間違わないと思うし、逆に宮下さんが尊を拒絶するなら...尊もそれまでの男だった...という事なんだろう、その時は宮下さんも自分自身の為に歩き始めれば良い」


「城二君...」


俺は笑顔で宮下さんに手を差し出す...宮下さんは恐る恐る俺の手を取り握手に応じた


「その時は宮下さんの選択した未来を精一杯応援させて貰うよ」


そう...時は...



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


宮下さんとムーンバックス前で分かれ、真白と近くの公園へとやってきた


真白への手土産であるメロンマカロンの封が開けられ6個入りのはずが今は4個しか箱の中に無い...


「前へ~♪前へ~♪進め~♪フフンフン♪」


ベンチに腰を下した俺達...真白はご機嫌に不滅のテーマ曲を口ずさみながらネズミ子のキーホルダーを掲げ眺めていた


「なぁ真白...ちょっとお前に紹介したい奴が居るんだけど」


「ん――――だぁれ―――」


真白の興味はネズミ子にしか無いのか上の空だ...


「ちょっと呼び出すから待っててくれ...トラ出て来い」


すると俺の足元からスーッと姿を現した子猫...


「おっおお―――!」


真白はネズミ子のキーホルダーからようやく目線を外しトラの姿に目を輝かせて驚いていた


『おい城二ぃ!我に対し出て来いとは無礼じゃぞ(お出でませ)とか(お出で下さい)とか言い方が有るじゃろ!』


「おっおおお―――しかも喋る子猫」


「!?お、おいトラ真白に言葉が通じてるぞ!」


『はぁ?仕方なかろう?玄武の器の神視は既に50を超えておる...あと少しで我等だけでなく3柱の神すらもその眼に捕らえるわ』


「ほぇ――――」


「ほぇ――――トラって言うのか...てっきり白虎が名前かと思っていた」


「!?擬態まで見破られてるぅぅぅ!!トラぁぁお前の威厳はこんな簡単に見破られるのか?」


『無茶を言いよる...そもそも神視で我を視認出来る上、星屑の瞳を持つ4聖の器だぞ?欺ける訳なかろう?貴様はもっと隣におる娘に敬意を払うべきだ...勿論儂にもな!』


「うっせぇこのドラ猫が!」


「おおおお!ドラ猫ぉぉぉ4次元のポケットは何処だぁぁぁ」


真白はトラを抱きかかえるとお腹の辺りを手で探り出す


「ん?尻尾が二本...しかも赤と水色のリボン...可愛いな」


「あ、あぁぁその...赤は俺の髪の毛の色で水色は...真白の髪の毛の色...」


「おおおお―――ありがと城二」


真白はご満悦になりユラユラ揺らすトラの尻尾をじっと眺めていた




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・


「て、事で本来は真白に使役されるはずだった白虎に仮契約で俺へ憑いて貰ってんだよ」


「??私には既にワダツミが憑いてる」


「あ、ああ...それは解決する方法があるから...って、まぁ気にするのそこじゃ無くない?」


「??」


「いや俺レベルの神視しか出来ない奴に白虎が憑いてるんだぞ?そこに驚かないの?」


『城二にしては珍しく分をわきまえた言動だな、感心感心』


「ン―――でも城二だし、城二は凄く頑張ってるから報われたとしても驚かないよ?」


こういう素直な意見の真白にはドキッとさせられるんだよなぁ...嬉しいけど


『玄武の器よ、良く聞け我が城二に憑いているのはお前が「召喚」なる術を身に着けた暁には我と其方が契約出来るとコヤツから聞いての事じゃ夢夢わするる事無きように』


「ン―――器とか呼び方変、真白と呼ぶがいい」


『!?きっ、貴様ぁ我を4聖獣の西門を預かる白虎と知っての口の利き方か!?』


「どうでも良いけど私は真白...それ以外で呼ばれても返事しない」


『くぬぬぬぬ...おい!城二なんなんだこの小娘は!!』


「はぁ―――真白...一つ貰うぞ...」


俺はそう言うと、真白へのお土産のメロンマカロンを一つ取り出し半分に千切ると一つは真白にもう一つをトラに差し出す


「ほら、一つの食べ物を二人で分かち合うと友達になれるって言うだろ?ほら、2巻の炭太郎の台詞」


真白は俺の言葉を聞いて目を輝かせマカロンを受け取る


「【ほら、こうすれば喧嘩しなくても二人で美味しく分かち合えるね、これでネズミ子と寅之助は友達だ!】」


真白は不滅の2巻で1つのお煎餅を巡り喧嘩になったネズミ子と寅之助を仲裁した炭太郎の台詞を完コピしてトラに一緒に食べる様に促す


『意味が解らん...それに寅之助って...まぁ良い食い物に罪は無いからな』


そう言いながらも美味しそうにマカロンに噛り付く子猫と真白




え?半分に出来ない食べ物はどうするのかって?


そこはお察しで・・・・この日から真白とトラの食べ物を巡る骨肉争いの火蓋は切って落とされたんだ...















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