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第50話 人気イラストマン

〇5月7日火曜日  東光高校 屋上にて



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・・・・・・・・・


「...て事が有ったんだよ」


「ん?それと寅之助が何か関係してるの?」


「いや...トラって俺が名前を付け...まぁ何でもいいか」


『おい!儂の扱い適当すぎじゃないか、そもそもお前はな4聖獣と言う物をだな...』


「あぁぁぁハイハイ煩いよ、これでも食ってろ」


俺はメロンパンを半分千切ってトラの方へと差し出す


『モゴモゴ...儂はこのような俗世に塗れた...ムシャムシャ食い物をだな...モゴモゴ...神域ではなモゴモゴ...』


「ほら、こうすれば喧嘩しなくても二人で美味しく分かち合えるね、これでネズミ子と寅之助は友達だ」


「いや真白も、その下りもう良いから...」


真白は自分のお弁当をハムハムと食べながら俺とトラのやり取りを見て嬉しそうに不滅の刀の下りをぶっ込んで来る...


「ん、で?」


「あ?あぁそれで、猫が良いって言われて思いつかないからトラを思い出してイラスト書いたらスゲー喜ばれてさぁ教室で他の女子に自慢するもんでヒヤヒヤもんよ―――」


「へぇ―――城二って絵が上手いの?」


「いや...まぁそれなり?」


前世でキャラデザの担当者が辞めて俺が見様見真似で兼務してたからな...まぁプロレベルでは無いがイラストレーターさんに要点を伝えるくらいには画ける自信はある


『ふん、儂に言わせればあんな絵、ワビサビなどない子供の遊びじゃな、儂からしたら狩野派の...』


何かほざいてる、うっとおしいドラ猫を無視して真白と会話を続ける


「ん、じゃ城二私にも絵描いて」


「はぁ?嘘だろ?」


「嘘違う描いて」


真白の流星眼はいつに無く真剣で、頑として譲りそうも無い...はぁ~仕方ないか...


「で?何を画けって?トラの絵か?」


「寅之助も捨てがたいけどやっぱネズミ子一択!」


真白はブレザーのポケットからスマホを取り出し先日プレゼントしたネズミ子のご当地キーホルダーをストラップにしているのを俺に見せる


「まぁ画いてみるけど真白の思ってるのと違っても怒るなよ?」


「ん、城二が画いてくれた絵に文句言うはずない気にせず描け」


真白はニコッと笑顔で俺の方へネズミ子のストラップを揺らしながら見せつけて来る


「わぁ―――た、わぁ~たって描く、描くから!!」


「ん、宜しい」


『器...じゃなかた真白、そんなけったいな小娘の絵より儂の絵の方が何倍もマシじゃろうが?』


「あぁぁ?」


トラの一言に真白の流星眼が黒く染まり今まで感じた事の無い威圧感が真白から放たれる


「ま、真白待てって!つかトラ今すぐ謝れ!!!」


『は、はぁぁ何で儂が...い、いや...儂も言い過ぎたかもしれん...よく見ると愛らしい童女じゃな...アハハハ』


「ん、当然ネズミ子は世界一Pretty」


何とか機嫌を直してくれた真白に俺とトラは情けなくも相槌をするしか無かった...


(真白の前で不滅の刀の事を馬鹿にするのは止めような...)


《そこは同意じゃ...》


キーンコーン♪カーンコーン♪予鈴が鳴ったので俺達は片づけをして屋上から出ようとする...


「ん、城二 寅之助昼から私が預かる」


「え?真白が?...しかし...」


『問題ない、いざとなれば真白の影から貴様の影へ移動出来る、それに儂も他の人間に少し興味あるのでな...何より真白の事を少しでも知れば今後、玄武の奴に後れを取らない為のヒントも得れるかも知れん』


「と、言う事だそれじゃ真白昼からトラを頼むぞ」


「ん、任せろ丁度話し相手が居なくて暇してた」


「いや普通に授業中にお喋りしちゃダメだかんな!?」


そう忠告してみたものの、俺の話しは華麗にスルーされトラは真白の足元の影へと消えて行った...


(まぁ真白なら、神とかと話してるとか思われても平気だろう...て、トラは本物の神だったわ)


3Fから2Fに降りた所で真白の教室は目の前なのでそこで一言二言会話して真白は自分の教室に入って行った


教室に入る真白の足元の影に一瞬だけトラが姿を現し、俺に対し勝ち誇った様な笑みを見せ影の中に沈んんで消えていった...なんかムカつく...


若干モヤモヤしながら2Fの廊下の一番端にある2年1組の教室に戻ると池上が俺の方へ笑顔で手を振る


「おい!天音、何あんなクソ野郎に愛想振りましてんだ!アイツは女と見れば見境なしに手を出すクズ中のクズだぞ、いい加減人を見てから交友関係を築けよ!」


藤堂が池上の様子に注意をする、周りの連中も藤堂の意見に激しく同意し池上に「関わらない方が良いよ」と苦言を伝える


「えぇぇ―――失礼だなぁ時哉も皆もぉ~私ちゃんと人を見てからしか関わらないよぉ~?城二っちはそんな悪い人じゃないよぉ~」


「はぁぁ!?アイツが悪人じゃ無かったらこの世の殆どの犯罪者は善人になってしまうだろうがぁ、そんな訳あるかぁぁ」


まぁ藤堂の言う事は御尤もだ...俺は池上の周りで俺のクズっぷりをしきりに説明する連中をしり目に自分の席に座り、周囲に人が居ない事を確認しながら真白に頼まれたイラストをノートに書き始める


キーンコーンカーンコーン♪


輪郭だけ描き終わった所で午後の授業が始まる...午後一の授業は皆川先生の受け持つ日本史だ


俺はノートを机の中に片づけると皆川先生の方を向き委員長の挨拶に併せ立ち上がり頭を下げ着席する...その一瞬皆川先生と目線が合うが気不味そうに視線を逸らされた


(まぁ今の時点で俺の目的に影響が無ければ、誤解を解いて和解も必要ないだろう...何れ尊を自分が顧問をしてる部活に勧誘し強くする為の指導者となる立ち位置の人だ、俺の秘密さえ周囲に洩らさなければこれ以上係らない選択も有りだ)


皆川先生へのモヤモヤした個人的な感情は抜きにして真面目に授業を受け、その日もいつも通り午後の授業を終える


そして放課後...


「ふぅ―――やっと描けたぁ――――」


俺はやり切った感の籠った声を上げノートを掲げ椅子の背もたれに体重を預ける


「おお、見せて見せて!」


俺の前の席でトラと戯れていた真白が流星眼をキラキラさせ俺の方を向き直る...他の生徒は既に下校しており教室には真白と俺とトラしか居ない


「おう!俺の中ではかなり良い出来だ」


真白に俺の描いたネズミ子のイラストを見せる


「おおおおお、ネズミ子だぁぁしかも...これもしかして顔は私に似せてる?」


「おっ!流石に気付いたか!そうなんだよ目元とか口元とか真白に似せてみたんだ、どうだ?あまり気に要らないか?」


真白はブルブルと高速で首を振り


「大満足!有難う城二、宝物にする!!」


俺からネズミ子の掛かれたページを切り取り受け取ると大事そうに掲げキラキラと輝く流星眼を大きく見開いて穴が空く程眺めている


「ハハハ、真白が喜んでくれて俺も嬉しいよ」


真白は俺の描いた絵を大事そうに不滅の刀のクリアファイルに挟み鞄に丁寧に仕舞った


「城二に今度お礼する」


「え?いや良いよ...この間修練に付き合ってもらったお返しだと思ってくれれば」


「ダメ私の気が収まらない...あ、明日私が城二のお昼のお弁当を作る」


「え?イヤイヤそんな悪いよ」


「全然悪くない寧ろ良い」


(最推しの手作り弁当...これは最高のご褒美だ)


『城二...お前顔に出過ぎだ...単純な奴め』


トラに辛辣な指摘を受けたが、どうやら俺は自然と頬が緩みだらしない笑みを浮かべていた様だ...


「コホン、そ、それじゃ真白にお願いしようかな?」


「おう!任せろ」


真白はその大きすぎる胸をポンと叩き制服の胸部がブルンと大きく揺れる...マグニチュード8だな


誰も居なくなった学校から真白と並んで下校する...真白からは何が好物なのか?嫌いな食べ物は有るのか?と質問をされ城二では無く南原 譲二の好みで真白に答えていく


コクコクと俺の回答に頷く真白と食べ物について熱く語り合いながら駅まで歩いて帰った





「アレは...城二と雨宮?あの雨宮があんな楽しそうに...という事はやはり城二の言っていた事が...」







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