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第52話 アウトローな城二


尊と藍瑠のクラスの前で不本意ながらもニアミスしてしまい一触即発の事態を何とか切り抜けた


それ以降極力、尊や藍瑠と接触しない様に注意して無事週末を迎え...本日は土曜日


俺は物語の進行においてどうしてもやっておかねばならない事があった...




〇5月11日土曜日  都内某所にある地下施設



「何だテメェ―――此処に何しに来たんだ?用事の無い奴は出て行けよ」


俺はオフィスビル街の奥に有る地下の商業店舗跡に来ていた...


「俺は此処に用事があんだよ」


「テメェェ~顔を見せろ!!」


店舗入り口のドアの前に立っていたスキンヘッドの肥満体系の大男が頭から被っていた俺の黒いパーカーを乱暴に掴み後ろにズラず


「赤髪?それにその凶悪な顔つき...北野か?」


「俺の事を知ってるなら話は早い...俺はこの中に用が有んだ入らせてもらうぞ」


俺が肥満男の横を通ろうとした時、ガッ!


肥満男の大きな手が俺の顔面を掴み放り投げられ俺の身体は数メートル後方へ弾き飛ばされる


「ガハッ!!」


背中から地面に叩き付けられ肺が収縮し息が一気に吐き出されショックで空気を吸い込めない


「ゴホッ!ゴホッ!ハァハァ...フゥ――――」


「オイオイ、東光の北野 城二の名前が俺達アウトローに通用すると思ってんのかぁ?あぁ~ん?」


何とか上体を起こし手を付いてふら付きながらも立ち上がる...右手の甲で口元を拭うと真っ赤な鮮血が僅かに付着した


「痛ってぇ―――な―――」


「馬—————鹿————、俺は昔、大相撲で関脇まで行った本物の力士だぞ、酒に酔って女将さんを襲って乱暴した事がバレて追放になったが、あのまま続けていたら今頃は横綱になってただろうなぁ~!アハハハ」


一撃でフラフラの俺に向かって余裕の笑みを見せる肥満大男...


『城二、儂が力を貸すか?』


「余計だなトラ、あんな肉だるま俺の力だけで十分だ」


『ふむ...確かにな、では高みの見物と行こうかの』


「俺の足元の影に潜んでて高見とは...まぁ良いか...真白との修練の成果を見せてやるよ」


スゥ――――


ハァ――――


俺は一度だけ深呼吸をして左手を開き体の正面に向け真っ直ぐ伸ばし右の拳を腰の位置に引いて大男に向かって身構える


「何だぁ?空手か?素人に毛が生えた程度で俺のツッパリが防げるかよ」


すると肥満大男は俺の構えに対し気分が盛り上がったのか、その場所で四股を踏みだし腰を低く落とすと右拳を地面に付ける...


「はっけよい...残った!!」


自分で口にした掛け声と共に俺に向かって突進してくる、肥満大男の身体が右側によじれ大きく右手を後方に引き突っ張りの体制に入るのが見えた


「どすこい!!」


激しく突きだされた掌底が俺の顔面に向かって飛んでくる


俺は突きだしていた左手で肥満男の掌底で真正面から受ける...手のひらと手のひらが衝突する瞬間に左手の力を抜くと俺の左手が物凄い勢いで後方に押し込まれる


相手の勢いを殺さない様に左手を後ろに引きながら右の肘を折りたたみ、一歩だけ力強く踏み込み大男の鎖骨と喉元の付け根を目掛けて肘打ち叩き込む


大男は一瞬で白目を剥いて口から泡を吹き出しそのまま前のめりで地面に倒れる


「相撲協会を追われて目標が無くなったからって、こんな所でチンピラに顎で使われる三下になったお前なんぞに本気で努力してる俺が負ける訳ねぇだろ、お前は途中で全て投げ出した根性無しだ」


既に気を失っているので肥満大男は何も答えはしない...答えを求めるつもりないが


俺は、男の背後の建物にあっる扉のノブを回し中に入る...


『キャハハ』『うぃ~いもっと若い女連れて来いよ』『てめぇ!!イカさましてるだろ!』


薄暗い部屋に入るとそこは、数人の男女が立っており何やら騒いでいる、室内はたばこの煙とアルコールの匂いそれと女性の付ける香水の匂いが入交充満している


俺は飲み物をお盆に乗せて運んでる男性スタッフに尋ねる...


「すまない、店長でオーナーの足元さんにお会いしたくて来ました...僕は北野 城二と言います..名前を伝えて頂ければ解ると思います」


「...少々お待ちください」


短くそう答えると店の奥の方へと消えて行った...なるべく他の客の目に付かない様に入口ちかくの壁にもたれてさっきのスタッフを待っていると...


「お待たせしました...付いて来て下さい」


俺は男性スタッフの後ろに付いて部屋の奥へと向かった...


案内された部屋は豪華な調度品が並べられ家具も高級そうな物ばかり...そんな部屋の真ん中に乱暴に足を組んで両サイドに露出の多い服を着た若い女性を侍らせた男性が此方を見て不敵に笑っていた


「これはこれは、北の名家のお坊ちゃんじゃ無いですか?こんな辺鄙な店に何用ですか?」


男は丁寧なオネエ口調とは裏腹に尊大な態度を崩す事無く女性が手に持っている飲み物のストローに口を付けながら此方を見ている


男の名前は足元 姜(あしもと きょう)年齢は不詳、紫に染めた長い髪を後ろで束ね男性らしからぬド派手なメイク、服装は紫とオレンジを基調とした常人には理解出来ないセンスのスーツを着込んでいる


ガリガリの痩せ型でメイクしてる上からでも頬がコケてるのが解る...しかしその眼は獲物を狙う蛇の様に怪しく輝いている


「今日ここに来たのは売って欲しい物が有るからだ」


足元はそのギラついた目を細め俺の方を見上げる様に覗き込む


「ほう...でしたらこんな場所に態々足を運んで下さらなくても銀座の本店でお渡し出来ますのに」


ニヤニヤしながらあくまで下手な態度を崩さない...


「本店に置かれる予定の品物ならこんな気分の悪い場所になんか来ないさ」


「まぁそれはそれは...ちなみにお探しの商品をお伺いしても?」


「ああ、先日ここに持ち込まれた誰かの遺品である天然石のイヤリングだ」


俺の言葉に一瞬だが目を見開き驚いた様子の足元...しかし直ぐ何時もの余裕の表情を浮かべ


「さぁ?ここには毎日幾つもの品物が持ち込まれ買取しております、そんなイヤリング...覚えて無いですねぇ」


「そうか?だったらこう言えば良いのか?俺を謀れると思ったら大間違いだぞ...のっぺらぼう」


「!?」


俺の一言で足元から余裕の表情は消え失せその額には汗が滲み出る...


「おいおい、早くその汗を拭きとらないと折角のお化粧がとれちゃうぞ?あ、化粧だけならいいんだけどなぁ」


様子が可笑しい足元を心配する様に両サイドの女性がハンカチで足元の汗を拭おうとする...


「やっやめろ!!私の顔にふれるんじゃない!!貴方達今すぐこの部屋から出て行きなさい!!」


足元は両サイドの女性を手を突き倒す...足元の豹変ぶりに恐怖した女性達は逃げる様に部屋から出て行った


「おいおい、追い出すにしてもっと優しく扱えよ、レディーに対して失礼だぞ?」


「うっ五月蝿い!!あんた一体なんなの!?どこで...いやそもそもなんで昨日の夜に持ち込まれた品物の事まで知ってるの!?」


俺はゆっくりと足元の前のソファーに腰を掛け足を組むと背もたれに思いっきりもたれ目の前の足元を不敵な笑みを浮かべ見下した...


「さぁ?何で?それを知ればお前はどうなるか?解るよな...俺の求める答えは一つ、天然石のイヤリングを俺に売るのか売らないのか?YESかNO、それだけだ...」


ダラダラと額から汗が滴り、足元のメイクと一緒に白い液体となってテーブルの上に滴り落ちる...


「わ、解ったわ...貴方に売るわ...」


「そうか、最初から素直にそう言えば良いんだ...で幾らだ?...のっぺらぼう」


「!?......5,500、いっいや...400、400万なら...」


「はぁ?聞こえないんだが?確かお前が買い取った値段は60万だよな?」


「!?......100万で...」


「買った、ホレこれで良いか?」


俺は札束を足元の目の前に放り投げる...足元は白い汗を滴らせながら恐る恐る俺からの札束を受け取り枚数を数えだす


・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・


「...確かに...では商品をお持ちします」


足元はテーブルの横に設置されてる呼び鈴を鳴らしマイクに向かって何か喋っていた...


ガチャ


部屋のカギが急に閉まる...




「フフフ...人間のガキが舐めやがってぇぇぇ」















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