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第56話 学科テスト終了、そして秘境テストに掛ける思い

〇5月13日 月曜日  2年1組 城二のクラス



キーンコーン♪カーンコーン♪



「時間だ、全員そこ迄!」 


教室の角にある教師用の机に座って様子を見ていた皆川先生が腕時計を確認しながら立ち上がりテストの終了を告げる


「やったぁぁ終わったぁ――――」


「マジ今回難かった―――」


「今回ヤバいかも...」


生徒の中にはテストの終了に安堵したり不安に頭を抱える者も居たが殆どの生徒は2年生最初のテストなので、そこ迄重要視してないのだろう...


「このまま回答用紙を回収してホームルームを始める、後ろの者は前の席の生徒の回答用紙を回収して私の所迄持って来るように」


一番後ろの席に座っている生徒が立ち上がり自分の列の生徒からか回答用紙を回収して回る...俺もその一人だ


皆川先生は無言で俺達から回答用紙を受け取る...が、


俺から受け取る時にさりげなく左の耳元の髪をかき上げる...


そしてその耳元には天然石の輝くイヤリングがキラリと輝いていた...しかし皆川先生は俺とは視線を合わす事無く教壇の前に立って用紙をトントンと揃えると生徒達を見渡し学級委員長へと視線を向ける


「起立」「礼」「着席」


挨拶を終えると皆川先生から連絡事項が告げられる


「明日の秘境テストだが、このクラスからも何組か参加表明したパーティーが有る参加メンバー以外の者は他のクラスと合同の別メニューで刑の修練をする予定だ」


「えぇぇマジかぁぁ」


「サボれると思ったのにぃぃ」


冗談だと思うが不真面目な発言をする生徒に向かって氷の様な冷たい視線を向ける皆川先生...


「安心しろ、修練を受け持って頂くのは体育教師の山口先生と武道教師の川田先生だ存分にサボると良い」


「ヒィィィあのダブル筋肉ダルマかよぉ~」


「死んだ...俺達死んだ...」


体育教師の山口先生は昔アメフトをしてたらしく雪が吹きすさむ冬でも半袖短パンの色黒筋肉熱血先生だ


武道教師の川田先生は手加減と言うモノを知らないのか常に武道の時間になると保健室に何人か担ぎ込まれるという武闘派教師だ


あの二人にしごかれる他の生徒の明日の様子はお察しである...


「では秘境テストに挑む順番を告げる」


「先ず、1組目は2年2組 浅井と朝倉ペア、2組目は 2年4組 真下、草野、堤トリオ......17組目は2年3組 北野 尊と宮下ペア・・・・」


そのペアが読み上げられた時に数名の生徒が俺の方へと視線を向ける...どいつもこいつも「お前は出来のいい義弟の引き立て役だ」て馬鹿にしてる顔だ...


「19組目がうちのクラスの藤堂と池上ペア・・・・」


「よっしゃぁぁ」


「時哉頑張ろうね~♪」


「21組は青木と葛西...」


「そして最後の23組目が...北野 城二と雨宮ペア...以上だ」


そしてトドメとばかりに俺と真白の名前が呼ばれると皆の白けた様な蔑んだ様な悪意の籠った視線が一気に俺に向いて来た


「...皆前を向け、これで本日のホームルームは終了するが明日の秘境テストに備える為、本日の部活動及び生徒会の活動は休止だ全員速やかに帰宅する様に、では委員長!」


「起立」「礼」「ありがとうございました」


皆川先生が回収したテストの回答用紙を抱え教室を出て行くと...


「あ―――ぁ、なんか白けるよな―――家の力を借りて学年最強を仲間とかぁ―――俺でも余裕で勝てるよ」


「だよねぇ何したのか知らないけど...まぁ納得って感じぃ」


(好きに言ってろ...お前等の評価なんか気にしてねぇよ)


そう思い荷物を手に立ち上がると...


「じゃぁぁん!!」


急に俺の目の前にトラのイラストが現れる


「なっ!?」


「にひぃひひ、城二っち見て見てぇぇ私ぃ城二っちの絵に色ぬってみたんだぁ」


丁寧に色を塗られたトラのイラストが挟まったクリアファイルの横から顔を覗かしたのは池上さんだった...


「あ、あぁぁ、うん上手だよ」


「あ――――ひどぉぉいチャンと見て見てぇ――――」


周りの視線が気になり目を背けた俺の方へとイラストを寄せてくる池上さん


「おい!天音、いい加減にしろ!そんなクズに関わるなって何度も言ってんだろ!!」


奥で藤堂が顔を真っ赤にして此方を睨み付けながら怒鳴り出した


「はぁ?何で時哉にそんな事、言われなきゃなんないの?アタイの話たい人に話かける、話したくない人とは...頑張って話題見つけて話しかける!それが私のスタイルなの余計なお世話」


「し、しかしだな...俺はお前が心配で...」


「余計な心配だよ?城二っちは凄く優しくて良い人なんだから...ねぇ――――」


俺の肩に手を置いて満面の笑みを見せる池上


「い、いや...ほら俺なんかと仲良くしてると池上さんも変な目で見られちゃうし...」


「変な目?う―――ん気にしないかな?私は私の目を信じるよ?他の人が何を見てるかなんか誰にも分かんないじゃん、もしかしたら赤色でも微妙に違う色味に見えてるかも知れないでしょ?それと同じ」


「自分の赤を一番だと信じるよ」


そう言うと池上さんは俺の赤髪を指さし太陽の様な笑顔でコロコロと笑ってくれた...


「池上さん...いや、天音さん...俺今回の学科テストと秘境テストで総合10位以内に入るよ」


「おっやる気だねぇ城二っち...て、天音さん?」


「俺全力で頑張るよ...他の誰に認めて貰えなくても、誰にも賞賛されなくても、自分自身の為に頑張るんだ...だって自分に嘘つけないから...」


「うん...解かった!アタシも応援してる、頑張れ―――城二っち!」


「有難う、天音さんも頑張って...お互いに無事クリアしよう」


一人を除き冷たい視線を背にしながら俺は教室を後にした...だが真白以外でも俺の事を応援してくれる人が居る...今その事が何よりも嬉しくて心強い



(これは確かに恋愛対象になって無い事に対してクレーム来るわな...オタクにも優しいいギャル 池上 天音か...人気になるのも頷けるな)



その日の帰り道...天音が語った言葉に込められた、誰にも譲らない自分という存在への強い自信の言葉を思い出し、自分もそう在りたいと強く心に思うのであった...





























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