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第57話 神視試験開始です

〇5月14日 火曜日  東光高等学校 郊外施設 秘境 管理ランク[D]



時刻AM8:30 



「皆集まったな...欠席者は...2組が欠席か..と言う事で23組から変更し21組で秘境テストを開始する」


皆川先生は出席簿のプリントが挟まっているバインダーを片手に参加者をペンを動かし数えながら出欠を確認した


先生も俺達も運動着であるジャージを着用し俺達の胸元には順番を表示したゼッケンが...


「ん、城二お揃い」


「ああ、なんか俺ら最終組みたいだな」


俺と真白のゼッケンは23番...俺は少し緊張しているが真白は隣で軽く欠伸していて眠そうだ...


「おいおい、なんか緊張感ねぇな...」


「ん、昨日の夜、前に城二から借りた漫画読んでて寝るの遅くなった」


そんな事を言いながら今にも閉じそうな目を擦ってなんとか閉まるのを阻止していた


真白の和やかな雰囲気に絆され俺まで緊張の糸が解れて来たような気がした





そんな時に今一番会いたくない二人が...


「あ、雨宮さん、この度は愚兄がご迷惑おかけしますが何卒よろしくお願いします」


「城二君...それに雨宮さん...その節は迷惑かけてしまって御免なさい、今日は無理せず頑張ってね...」


尊は自分より格上である真白に対し気を使っているのか終始 挙動不審だった


藍瑠はこの間の話の通りいまだに両親に今の気持ちを伝えられて無いんだろう...まぁこの秘境テスト後に気持ちを決めるとか言っていたが...藍瑠の人生だ藍瑠が決めたら良い



だが...それだと尊の相手...ヒロイン不在になってしまう


取り合えず選択肢を増やす為にも、尊には皆川先生が顧問を務めている部活への入部を決めて貰わないとな...




パンパン!



「それじゃ、準備出来た者から一人ずつ私の後ろに有る祭壇に入ってくれ」


皆川先生の呼びかけに対し殆どの生徒が未経験の為、手を上げるのを渋っていると...


「はい!僕が行きます」


先陣を切り手を上げたのは、尊だった


「では17番...北野 尊 中に行くが良い」


「はい!」


尊は心配する周りの生徒に「大丈夫だよ」「心配してくれて有難う」と笑顔で答えながら皆川先生の背後にある祭壇へと進んでいた...


尊が中に入ると皆川先生の周囲の砂や小石がブルブルと震え出し、先生の周囲を淡い光の柱が包んで行く...


周りの生徒も何が起こっているのかとソワソワし始めたが...


俺は知っている...あれは皆川先生とテストで使う秘境の主にして長年交流のある土着神「土童子」つちおわらし、つちどうじとも呼ばれる神との交信を始めた合図だ


しかし、交信してるとは言え土童子は綾瀬に憑いてる訳では無い...実は土童子は皆川先生の亡くなった旦那さんに憑いていた神様なのだ


珍しいケースだが、契約を交わさずに土童子と綾瀬は交友を続けているのだ...丁度、俺とトラの様に


と、まぁ皆川先生に今何が起きているのか当然俺は知っているので他の生徒の様にアタフタする事も無いが、他の生徒に教えてやる義理もない


「ニャハハァァいよいよだねぇ城二っち!」


俺の肩をポンと叩いて来たのはパーマの掛かった長い金髪とピンクのメッシュの入った髪を後ろに束ねた天音だった


「天音さん今日は髪型も気合入ってるね、お互い怪我の無い様に頑張ろう」


「モチロンだよぉ~ん、あ、マシロンも頑張ろうねぇ~」


「ん...金髪は誰だ?」


「こ、こら真白...ほら前に言ったトラの絵を...」


「ん?・・・・・・・・・知らぬ、でもまぁ良い感じに観えてる金髪頑張れ」


「ナッハハハハァァ~マシロンに認めて貰うには、マダマダだなぁ~」


お道化ながらそんな事を言っていると


「天音!こんな所で油売ってんな!次俺達が行くぞ!!」


「ちょっ時哉ぁぁ引っ張んないでよぉぉぉ!!」


天音は藤堂に腕を掴まれ連れて行かれた...


「城二...そろそろ出て来るみたい」


真白が祭壇の入り口を指さすと...ゆっくりと歩きながら尊が出て来た


尊の無事な姿に周りの生徒が駆け寄り、あれやこれや色々と尊に質問を始めた...


「19番 合格だ」


皆川先生から合格のお墨付きをもらい他の生徒達とハイタッチして喜ぶ尊...しかし


(藍瑠の奴さっきから一向に尊の所に行かないな...)


藍瑠は尊から少し離れた所で特に表情を変える事も無く尊達の様子を見つめている


しかしそんな藍瑠の元に笑顔の尊がハイタッチを求めてやって来たので、貼り付けた様な笑顔でハイタッチを返していた...


最初の挑戦者である尊の合格を受け次々と神視試験への挑戦に名乗りを上げる...


「4番...不合格」ペアやトリオの誰かひとりでも不合格になるとそのパーティーは秘境への挑戦権を失う...つまり3人パーティーは頭数的に秘境の攻略にはアドバンテージが有るが、こういう事態になった際には...


「真下ぁ!お前、何試験に落ちてんだよ、絶対に大丈夫だって言ってたじゃないか!!」


「はぁ知らねぇよ!受けた事無いんだから!!そもそも目の前に見える神様の姿を答えろとか...なんも見えねーし!!」


「は、はぁぁ?ふざけるなぁ見えませんでしたぁぁじゃねぇんんだよ!!どうしてくれんだよ!」


仲間割れが始まった...真下、草野、堤の3人は何時も冗談を言い合うお笑いトリオの仲良しだったのに今は相手を口汚く罵ってる姿がどうにもいたたまれない...


「4番、不合格」


「「え?」」


「悪い...真下 堤...全然ダメだったわ...」


「いや...草野...俺もなんだ...」


「ダセェな!ま、まぁあ、しゃ――ないよな!次、次頑張ろ!!」「「いやお前も行けよ!」」


「4番 不合格...てか試験を受けるレベルではないぞ?堤は今まで最低成績だ、もう一度小学生からやり直したらどうだ?」


「「......」」


「あ、あのぉ...また次3人で頑張ろ?」


「「はぁ?お前となんか二度と組むかよ!!」」


「19番 合格」「やったぁ♪」


天音さんは合格のコールを聞いて俺達の方へ小さくブイサインをして微笑んだ...しかし流石人気者、直ぐに大勢に取り囲まれお祝いされていた


「ん、城二行ってくる」


俺の横で体育座りしていた真白が立ち上がりお尻についた土を叩いて落としながら祭壇に向かっていった


「雨宮か...お前は試験を受ける迄も無いと思うがな...」


「ん、まぁ平等に」


そう言うと真白は祭壇の中に入っていった...


!?すると祭壇の入り口から黄金に輝く光が溢れ...直ぐに真白が出て来る


「23番、合格だ...流石だな雨宮...お前の神視レベルは私をも超えてる様だ...」


「ん、そう」


真白は驚愕する周囲を無視してスタスタと俺の元に戻って来ると俺の顔の近くに手を伸ばしていた


「?どしたん?」


「ん!」


「いや...だから」


「ん!!」


なにやら真白さんは不機嫌そうに頬を膨らませ手を上げたまま俺を睨み付ける...!?


俺はハッと気づき真白の手をパッン!と叩き返した


「ん、次城二の番頑張れ」


「おう!」


真白に背中を軽く押され祭壇に向かって歩く...途中で皆川先生と目が合ったが...何を言われる事も無く直ぐに名簿に目を戻した


「城二がんばれよ...」


ボソッと聞こえるか聞こえないかの大きさでそんな風に声を掛けられた気がした...俺は振り返る事無く微笑むと祭壇の先にある入口へと入って行った


「アハハ、どうせ不合格に決まってるぜ」


「そうよ、あのクズ一度も神視出来た事ないって聞いたよ?そもそもこの試験受ける資格ないんだってぇ」


「さっきの堤の最低スコアを大幅更新待った無しだ!」


俺が祭壇の中に消えてから、他の参加者は好き勝手に言いたい放題言っていた...



しかし尊は真剣な表情で祭壇の入り口を睨み付ける




「・・・・・・・」(尊君?何でそんな冷たい目で・・・)























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