〇東光高等学校 郊外施設 秘境 管理ランク[D]
●————————————尊&藍瑠パーティー 今現在、第五階層 最深部付近
「藍瑠、平気か?」
「ええ、なんとか...」
私達は何とか第五階層まで進み今まさに最深部付近へと向かっていた...
「尊君...私足引っ張っちゃったね...」
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尊君も私も今回が初めての秘境探索だ、最初の密林のエリアは出口が崖の上に有り尊君によじ登ってもらって蔦で作ったロープで私を引っ張り上げて貰った...
第二階層は、床のトラップに最初は掛かって驚いたけどよく見れば違和感を感じる箇所が怪しいと判り安全に次の階層に進むことが出来た
第三階層は下層に降りる為の扉は直ぐに見つかったけど鍵が掛かっており開かなかった...扉には「宝箱を回収してカギを入手せよ」と書かれており扉の横には宝箱が置いてあった、その宝箱を開けると次の宝箱の場所と解除のヒントが記載してあり、三階層を迷路の様に回って宝箱を見つけ鍵を解除すしていった
そしてようやく扉の鍵を入手...しかしその横には一個だけどうしても開かない宝箱が有った
尊君と色々試してみたが全く開く気配は無い...私らは仕方なく諦め次の四階層へと進む
第四階層は手に棍棒を持った成人と同じ大きさの兎の魔物が徘徊しており戦闘は避けられない状況だった
しかし尊君は素手だけで魔物との戦闘を軽くこなしバタバタと討伐していく、私は尊君の背後に控え尊君の取りこぼした魔物に用意していた弓矢で止めを刺す...どの位戦闘したか、私らは真っ直ぐ通路を進んで
第5階層に到着すると、広いドーム型の部屋に出た
私が部屋に入った瞬間背後の四階層へのドアが石壁で塞がれ向かいの扉から先ほどの兎の魔物の倍はあろうかと言う大きな豚の頭を持つ魔物が現れる...豚の魔物も手には大きな棍棒を握っており棍棒だけで私と尊君二人分の重量が有りそうだった
所謂魔物のボスと言う奴なのだろう、今までの兎が可愛く見える様な禍々しい雰囲気の豚の魔物は口元からはみ出した牙の隙間から涎を垂らしながら私らに向かって突進してきた...
身体が大きい分流石に動きは鈍い...だが見た目通り力はとんでも無いみたいだ豚の振り抜いた棍棒が地面に大きな窪みを作るとその勢いのまま私らに向かって振り抜かれる
「藍瑠あぶない!!」
咄嗟に尊君に突き飛ばされ私は棍棒の範囲から外れたが...
「ぐっっ」「尊君!!」
私の代わりに尊君の脇腹に棍棒が命中し尊君は私の横迄吹き飛んで来た...
「藍瑠...このままじゃ勝てない...神憑依を使う」
そう言うと尊君は何やらブツブツと唱え...尊君が風に包まれる...
「狗...」
「そう北野家の守護神である狛狗神だ...これなら」
尊君は棍棒を振りかぶり突進してくる豚の魔物に向かって腰を落とし拳を引いて正拳突きの構えを見せる
「蒼拳!」
豚の魔物棍棒を見切り最小限の動きで避けると、その勢いのまま豚の魔物の腹部目掛けて繰り出した正拳突きはドォォンと物凄い音を残し魔物の腹部にボーリングの球位の穴をあけ一撃のもとに倒してしまった
そして倒れた魔物は黒い霧になり霧散し入口と先への道が通行可能となった...
私らは周囲を警戒しながら先に進み...
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「ハハハ、なぁ~に言ってんだよ藍瑠は精一杯頑張ってたじゃないか、足りない所を補う...その為のパーティー、そうだろ?」
そう言いながら私の方を振り返り屈託のない笑顔を見せる尊君...
(ここに来るまでに見せてくれた尊君の頼りがいのある所、さりげなく私を庇ってくれてる気遣い...そう...前と変わらず優しい尊君...の、はずなのだが)
(何だろこの違和感...素直に受け取れないこの感覚・・・私がおかしいの?)
私は目の前で色々私に対し気遣いしながら話かける尊君の方を冷静に見つめながら先へと進む...
「!?止まれ、藍瑠!!」
急に前を歩いていた尊君が手を横に広げ私を制止する
「え?な、なに?」
シーと口元に人差し指を添え静かにする様に促してきた尊君の見つめる先を確認すると...
「え!?あ、あれは偽神!?」
奥は行き止まりになっており、豪華な祭壇が設置されている...その右横には青く輝き周囲を照らす宝珠が埋め込まれたモニュメントと反対の左側には鳥の頭に大きな翼...4本の腕と同じく4本の脚を持つ人型の様で異なる異形の石像が飾ってあった...
「尊君...これって.」
「あぁ...先生が言っていた封印された偽神だろうな」
確かに石像の様に固まっていてピクリともしない
「藍瑠、祭壇にあるアイテムを取って転移宝珠で脱出しよう」
私は隣の偽神にビクビクしながらも、祭壇に置かれた結晶石を手に取りカバンに入れる
「あ、悪い藍瑠は先に宝珠で脱出しておいてくれるか、俺も気になる所を少し調べたら直ぐに脱出する」
「え?そうなの?その位待つけど?」
「イヤイヤ、藍瑠も疲れただろ?早く戻って休んだ方がいい」
「そう?それじゃ...」
私は宝珠に手を翳し力を注ぐと、青い宝珠が輝きはじめ私の足元に魔法陣が形成され光の柱となって私を飲み込む
私は何故かふと気になり尊君の方を振り返ると...祭壇...では無く偽神の石像に触っていた...
「尊君?何を...」
最後まで声を発する事無く私は魔法陣の光に吸い込まれる...
しかし、私は転移直前に確かに見た...
醜く歪んだ尊君の口元を...