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第62話 隠しアイテム「神の秘薬」

〇東光高等学校 郊外施設 秘境 管理ランク[D]




俺と真白のパーティーは第三階層に到達していた...


「そういや此処お使いクエストだったな...」


「ん?お使いクエスト?」


「あ、あ、いや何でもないよ、アハハハハ」


第三階層は宝箱を開けて次の宝箱の場所と開け方のヒントを手に入れながら迷路の様な第三階層をウロウロと歩かせる、所謂「お使いクエスト」と呼ばれるプレイヤーに嫌われるタイプのだるいクエストだ


だが...


「まぁ真白俺の勘を信じて付いてきてくれ」


「ん?まぁ私は正直方向音痴だから城二に任せる」


「あ、あぁ...」


(そういやコイツ玄武の修練場へ向かう時、地図を反対に向けていたな...あれがウケ狙いじゃ無くてマジのヤツだったとは...イチ推しヒロインの残念ポイントを知らなかった事が悔しいぜ)


まぁそう言う事なら俺がズルしても真白に気付かれないな...


俺は最初の宝箱を開ける事無く扉の右側の脇道へと進む...


「あ、城二宝箱が2つある」


脇道に入ると直ぐに開けた空間になっており奥の壁際に2つの宝箱が並んで置いてある...


「真白、右側の宝箱の番号は『803』だ」


「ん、かしこまり!」


真白は俺に敬礼のポーズを取ると宝箱の前に蹲りダイヤルを回して俺の言った数字に合わせる


カチッ


鍵が開く音がして宝箱を開けると...


「城二、鍵ゲットだぜ!」


俺に向かって鍵を掲げてドヤってくる...


「ところで城二、隣の宝箱は?この宝箱、鍵みたいな物もダイヤルも無いよ?」


「あぁぁこれはな...」


俺は宝箱の蓋横の装飾部分の一部をつまんで引っ張り右に2回左に3回程回して元の位置に押し込む...


ガチャ


すると扉の鍵が外れた


「おおお、凄い何で開け方知ってるの?」


「ん?まぁ野生の勘だ...こいうの良く小説で見るからもしかしたら?ってね」


「ふぅぅぅん...」


真白の流星眼は明らかに俺の事を疑っていたが...


「そ、それより中身を開けて確認しよう!」


そう中身は...


「ん?薬の瓶?なんの薬?」


この薬は神視の上限を開放する為の隠しアイテムだ...これがこのまま宝箱の中に残ってるという事は尊はこの薬を手に入れて無いんだろう...これは持って帰ってアイツにそっと飲ませるか?


そんな事を思案してると...


!?


「んんん!?ん―――――!?」


不意に真白によって先ほどの隠しアイテムの瓶を口に突っ込まれた!


ごくッ


飲んでしまった...大事な主人公の神視レベルアップアイテムを...


「真白!?急に何すんだ飲んじゃったじゃねぇか!!」


「ん?寅之助が城二に飲ませろって言ってた」


「え?トラ?」


真白の頭の上によじ登って来たのは少し眠そうなトラだった...


「はぁ?テメェ何か大人しいと思ったら真白さんの頭の上でお昼寝たぁ良い御身分だなぁえええ?解ってんのか!?このアイテムは一度しか手に入らないんだぞ!!」


俺は真白の頭の上で欠伸をしながらな後ろ脚で耳元を搔いているトラに怒鳴り散らす...いやマジもう猫じゃん...


「って、いや!?あの薬は尊の神視レベルを上げるのに必須でだな、アイツに!!」


『城二!!』


トラの声で俺の言葉が遮られる...はっ!?俺は真白の方に目を向けるとキョトンとした様子で俺の方を見ている


(あぶねぇぇ余計な事を言って墓穴を掘る所だった...)


『貴重な能力上昇の薬の様だったからな、既に高レベルの真白が飲むより弱小な貴様が飲むべきであろう?』


「(テメェ判ってて真白に俺に飲ますように勧めたなぁ―――!)」


『(お前は何事も後ろ向き過ぎる...お前の知る未来に何が有るのかは知らぬが今を精一杯生きようと言っておる貴様が生きる為の力を得るチャンスをみすみす棒に振るのは矛盾してないか?)』


「(くっっ猫の分際で正論ばっか言いやがってぇ―――)」


『真白、城二の神視レベルはどうだ?』


「ん、見てみる」


真白は俺の額に手をあてると自分も目を閉じ集中している...


「おっおおおおお、凄いぞ城二一気にレベルが跳ね上がった、今なら学年で上の下くらいあるぞ」


「あ、あぁぁう、うん」


あの隠しアイテム神の秘薬は神視レベルの上限を10上げてくれるチートアイテムだ..元々上限がLV20前後の俺に飲ませてもLV30位迄しか上がらない、神アイテムの無駄撃ちだ...


しかし今更どうする事も出来ない、あの場で手に入れた貴重なアイテムを「尊に渡すんだ」と説明するのもどうかと思う...


でもこれで尊の神視レベル99への道はかなり険しくなって来た...真のエンディングルートは無理かも知れんな...異郷神 コス・タータルト...か...


複雑な心境の俺を他所にトラと真白はズンズンと進み第4階層への扉を鍵を使い開くと中に消えて行った




「真のラスボスの登場しない世界線か...」



第四階層に到着すると、魔都東京1999の初期配置モンスター兎型モンスター、ラビボルトがダンジョン内を徘徊している...この階層のマップは真正面に進だけで五階層へ降りる為の扉があり脇道に入らずに進めば最短なのだが、当然の事だが初期ステの段階では最弱魔物とは言え連戦は厳しい


そこで脇道でラビボルトを躱しながら5階層への出口に向かうのが王道というか一般的な攻略である


しかし...


「水の型、潮騒しおさいののさざめ」


真白は綿津見神ワダツミを神憑依してフロア全体に水の攻撃スキルを放ち一撃でフロア全体のラビボルトを全滅させた...



いやいや、まさにボン〇ーマンやん!




すっかり水浸しになった第四階層...ワダツミの力で俺達の足元だけ水が押し出され濡れずに歩けるのは有難いが...真白ってチート過ぎない?


確かにこれは終盤に登場するキャラだわ...序盤に出てたら無双状態で誰が主人公か解らんわ..



俺達は何の苦労をする事も無く




続く第五階層に侵入すると、石造りの大きめなドーム状の部屋に出た...


ゴゴゴゴゴ


地響きと共に今通って来た第四階層の扉が石の壁で覆われる...同じように先に進む為の扉であろう正面の扉も石の壁に覆われる


「真白上だ」


俺は真白に声を掛けるが既に真白は上空を見上げて敵を捕捉していた...


「水の型 氷浄ひようじょう飛沫しぶき


真白が指先を天井の檻から落下しようとしてるビッグオークに向け右手をピストル状にして構えると指先に野球ボール程の水の球が現れ勢いよく渦巻いて...


撃ち出‥‥『待て真白』!?


真白の放った水の弾丸はビッグオークを閉じ込めていた檻の鎖を打ち抜き、ビッグオークは檻ごと地面に叩き付けられる


「なに?寅之助外したじゃん」


『真白ここは城二に任せてみよ』


「ん?何で?」


『あやつも、お前との修練で成長したんだ...お前にはそれを見届ける責任が有ると思うがな?』


「...ん、わかった城二頼む」


なんか俺の居ない所で勝手に背中を押される様にビッグオークの前に立ってしまっている...


「あ、あは...は...は、や、やぁ...あ、相変わらず...イケブタだね」







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