〇東光高等学校 郊外施設 秘境 管理ランク[D]秘境最深部 闘技場内
「んもう!折角、昨日ネイルしてきたのにボロボロじゃん!気に入ってたのにぃぃ!!」
構えた時に見えた自分のツメを見てそんな事を言えるのは余裕の表れか...
それとも自棄か...
天音の目の前で先ほど自分達が背にしていた扉が真ん中から裂ける様に砕け
4本腕、4本脚、そして鳥の様な頭を持つ異形の化け物...偽神がゆっくりと狭いドアの隙間からその大きな巨体を引きずり出し闘技場へと姿を現した...
「てか偽神て初めてマジマジ見たけど、凄いキモい...アクキー(アクリルキーホルダー)にしたくないキャラ、ナンバーワンだわ...」
天音が失礼な事を言っていても通じて無さそうなのでピンチな事に変わりはない...
!?
一瞬だった
目の前から偽神が消えたと思った瞬間には、既に天音の目の前に迫っていた
「くっ!?しまった!!」
天音は偽神の両腕で足ごと身体を掴まれ身動きが取れない...そこに残りの2本の腕を握り頭上で思いっきり振りかぶった偽神..掴んだ手の中で藻掻いてる天音に向かって全力を込め握った拳を叩き付ける...
「ヤラれる!?」
確実に頭を潰され死ぬと確信した天音は目を瞑りその瞬間を待った...
「白虎!こい」
ドガッシ!
鈍い音が聞こえたが一向に激痛が襲って来ない...天音は恐る恐る目を見開くと
「城二っち!?」
「天音さん、無事か!?」
俺は天音さんと偽神の隙間に潜り込み頭上で両手をクロスして天音さんの脳天に直撃する前に偽神の一撃を受け止める...
偽神の力は以前戦った妖怪のっぺらぼうやビッグオークと比較にならない
受け止めた両手はミシミシと軋み、衝撃を全部受け止めた足は膝からガクガクと震えている...
『城二、この程度の作り物に情けないぞ?』
俺の背後からノシノシと近寄ってくる白虎は口から青白い煙を吐き出し俄かに風を纏い始めた
「くっ!?白虎テメェェ見てねぇで力を貸しやがれぇぇ!!」
偽神の一撃を受け止め歯を食いしばりながら白虎の方へ視線だけ向け怒鳴り付ける
『ククク、必死だな城二...まぁもう少し耐えよ』
「なっ!?無理無理無理無理、もう持たねぇって――――――!」
膝が手切れずガクッと少しだけ偽神の拳が天音さんに近づく...
「!?城二っち――――!」
天音さんは自分の頭上に迫る拳に目もくれず、目の前で膝を折りそうになってる俺の方を見つめ悲鳴をあげる
「こんのぉぉぉ!!」
トラからの無慈悲な言葉に対する反骨心か天音さんの必死の呼びかけに答える為か...全身の力をふり絞り雄叫びを上げながら何とか元の位置まで偽神の拳を押し返す...
『待たせたな城二...仮契約だし許せ...』
「は、早く!!天音さんを...天音さんを...」
「城二っち?一体誰に...?」
俺は白虎とトラナンスし、白虎のスキルをギフトされる...
「『風の型
俺の腕付近に目に見えない風の刃が発生し回転のノコギリの様に激しく回転しながら偽神の腕を削ぎ取り切断した...
そのまま左右にある天音さんを拘束してる、もう2本の腕も削り落としにかかる...
肘から先を完全に分断され握る力を失った偽神の腕は天音さんの拘束を解き、天音さんは力なく前のめりで倒れてくる
「!?しっかり、天音さん!!」
俺は倒れ込む天音さんを間一髪で抱き留め、軽く頬を叩きながら意識を確認する
「ん?あ、城二っち!」
幸いにも天音さんの意識はそこまで飛んで無かったらしくすぐに気を取り戻す
「天音さんは下がって!」
俺は偽神から天音さんを守る様に向き合うと...
「城二っち!私も!?っっ...」
天音さんは立ち上がろうとしたが右足から崩れる...さっき偽神に摑まれた時に痛めたか...
「天音さんは青木さんを頼む」
「う、うん...解かったぁ―――」
天音さんは右足を引きずる様に後ろに下がり、今だ気を失って倒れてる青木さんの元へと下がった
『城二、残念だが仮契約でのスキルギフトにはチャージタイムが必要だ...次撃てるまで約10分だ』
「なっ!?そ、そんなにぃ?持たねぇって!!何とかしてくれよ!!」
おれは背後の白虎に泣き言を言って見るが...
『城二...お前には力がある...先ほど見せた力お前ならきっと...』
徐々に白虎の姿が薄くなり消えて行く
「待て待て待てってぇ、おい!!」
俺の悲痛な叫びも空しく白虎は完全に見えなくなってしまった...
「白虎、こい!!」
もう一度自分の影に向かって呼びかけるが...一向に現れる気配が無いやはり先ほどの風スキルのギフト技で仕留めれて無いのが致命的だったのか...
俺の目の前には4つの腕を失っても尚、俺の方を狂気の籠った目で睨み付ける偽神...4本の脚は未だ健在...先ほど天音さんとの距離を詰めた時の速度から偽神から逃げる事は、ほぼ不可能...
死亡フラグ・・・・・
イヤな言葉が脳裏をよぎる...
(やはりこの世界は俺の事を排除しにかかってるのか?俺には無残な死に方こそ相応しいって事か?)
今まで精一杯出来る事を頑張って来たつもりだ...だがそんな俺を嘲笑うように運命が残酷にギロチンの紐を手繰り寄せる...
「城二っち!!」
青木さんを抱きかかえたまま俺の方を向き声を掛けてくれる天音さん...
「.ん..んん...いっつつ...身体が...って、池上さん?」
その時抱きかかえた青木さんが目を醒ました...
「!?にょおぉぉ、ビックリした~いんちょー目が覚めたんだ!!」
青木さんは、今だハッキリしない意識の中で不意に俺と偽神の方を向き
「え!?な、なに!?あれ...て、北野君?、ね、ねぇ池上さんあれ...いやどう言う状況!?葛西君は!?」
「あ~あはは、ちょ~と今は説明むずいかなぁ~てか其れ処じゃないよ!!城二っちがピンチなんだって!!」
「は?え?城二っち?あ、あぁ北野君ね...て、あれって...もしかして偽神なの!?」
背後の方で青木さんがタイミング悪く目を醒ましてあんのじょう混乱してる様だ...
益々ピンチだ...
腕を失った偽神は野生の獣宜しく、古典的な噛み付きによる攻撃を繰り出してくる...
おれは其れを右に左に後方にと飛びのいて何とか躱してみる...そして
「うぉぉぉりゃぁぁ!」
先ほどビッグオークに打ち込んだのと同じ様に全力のパンチを偽神の頭部におみまいする...が...
「ってぇぇ、固ってぇぇぇ!!」
鉄の塊を殴った様で逆に自分の拳の方を痛めてしまう、このまま避け続けても何れ体力切れで捕まってしまう...
そうなれば一貫の終わりだ
『大丈夫...城二なら出来る』
真白?