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第66話 拾い物の勝利

〇東光高等学校 郊外施設 秘境 管理ランク[D]秘境最深部 闘技場内





白虎からギフトされた風スキルによって偽神の4本の腕を破壊する事に成功したが、仮契約の状態でのギフトにはチャージタイムが必要らしく10分の間は白虎を降ろせない...


絶体絶命のピンチの中、腕を失った偽神は野生の獣宜しく、古典的な噛み付きによる攻撃を繰り出してくる...


おれは偽神の鋭い嘴の攻撃を右に左に後方にと飛びのいて何とか躱してみる...そして


「うぉぉぉりゃぁぁ!」


先ほどビッグオークに喰らわせた時と同じ様に全力のパンチを偽神の頭部におみまいする...が...


「ってぇぇ、固ってぇぇぇ!!」


偽神の身体はあまりにも固くて逆に自分の拳の方を痛めてしまう...打撃攻撃は無理だ...


だがこのまま避け続けても何れ体力切れで偽神に捕まってしまう...そうなれば一貫の終わりだ


『大丈夫...城二なら出来る』


真白?


急に頭の中に真白の声が響く...


『城二が努力を諦めない限り、私も諦めない』


『それが親友』


俺の中の真白が、諦めるなと俺の背中を押す...


「うぉぉぉぉ!!」


俺は自分の拳が傷つき痛む事も顧みず、偽神の攻撃に対し全力で反撃を繰り出す


偽神は物言わないがその不気味に見開かれた目は狂気的に俺の事を捉え、何度も何度も俺の周囲に周りこんで噛み付きの攻撃を繰り出す...


俺も左右のステップで出来るだけ負担にならない様に躱しておいて全力の正拳突きを偽神の頭部、腹部、局部に打ち込む...が...



「ね、ねぇ池上さん...あれ北野君の手...血まみれになってない?」


「っつ!!」


その様子は天音にも見えている...しかし足を負傷し身動きの取れない自分が助けに入っても足手まとい...だが



カァッン!乾いた音と共に偽神に何かが当たって城二の足元に転がった


偽神も突然の事に動きが止まる...


「城二っちぃぃぃ!!やっちゃえぇぇ―――!!」


天音さんの声に振り向き先ほど転がった物を見ると...


「これ...祭壇の所にあった結晶じゃん」


天音さんが放り投げたのは、祭壇でゲットした試験合格の証である希少アイテムの結晶だ


(確かに、これなら!!)


俺は結晶を拾い右手に握りキョロキョロと周囲を見渡してる偽神の頭部に思いっきり叩き付ける


ガギィィィン――――


音叉で共鳴する様な耳鳴り音と共に叩き付けた結晶が粉々に砕けた...


「ダメ...なのか?...ん?」


殆ど無傷の偽神の頭部を見て愕然としていたが、良く見ると結晶の当たった箇所にほんのわずかな亀裂が見えた


俺はフゥ―――――と息を吐き腰を落とし正拳突きの構えを取る...中学の途中で辞めてしまったが空手と柔道だけは素人では無い



俺は引いた拳に力を込め一気に突きだし力を開放する


「せいやぁぁぁ」


すると、さっきのビッグオークの時みたいに俺の右拳が赤く輝く...


ガシッ!


石がぶつかった様な鈍い音が闘技場内に鳴り響き俺の正拳突きが偽神の頭に出来た亀裂を捉えた...


ピシピシと音がして亀裂が徐々に大きくなる...が...


途中まで赤く光っていた俺の拳が突如輝きを失い...バギッと乾いた音と共に俺の右手の骨が砕ける


「がぁぁぁ!!まだまだぁぁ!!」


右の拳を一旦引き、今度は右足を踏み込むと左拳を大きくなってひび割れてる偽神の頭部に叩き込む


ガシッ!


しかし無常にも俺の左拳は赤く輝く事無く右拳と同様に骨が砕ける音がして両手に激痛がはしる...


「やだぁぁぁ!城二っちぃぃ!!」


力を使い果たし痛みで両手をダラリと下げた状態で膝から崩れる俺の頭をかみ砕こうと偽神が大きな嘴を開けた...









【困るなこの程度のザコに...】







次の瞬間...俺の頭を丸ごと噛み付こうとしていた偽神の頭が完全に消えて無くなっていた...



「え?な、なに...何が起きたの?ねぇ池上さん...」


「ア、アタシだって、わっかんないしぃ」


「て、てか城二っち、城二っちぃぃぃ!」


ボロボロの青木さんに肩を借りて右足を引きずる様にして俺の元へとやってきた天音さんと青木さん


頭部を失った偽神の身体は、小さな光の粒子となって消えてしまった、同時に先に切り落とされた4本の腕も後を追う様に消え去り痕跡も残ってない...


「うわぁ城二っち両手ヤバいねぇ~」


自分の事の様に痛そうな表情を見せる天音さん


「とにかく今は気を失ってるみたい...」


「ねぇ――いんちょー、さっきね一瞬だけど城二っちの背中が光った様な気がしたんだけど?」


「え?私も北野君の事を見てたけど、それは見て無かったかも」


「あ、あぁ一瞬だし...まぁ気のせいかもね~」


天音は自分のと青木のハンカチを歯で噛んで千切り城二の左右の手に巻き付ける...白かったハンカチは直ぐに城二の血によって真っ赤に染まって行く...


「何か他に巻ける様な布...あっ!?」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・



「お、俺は...!っ!?」


ズキッ!激しい痛みが城二の両手を襲う...


「がぁぁぁぁぁ!手がぁぁ」


「城二っち!!暴れちゃだめだってぇ」


「北野君!!!落ち着いてぇ」


暴れる城二の手が地面や他に当たらない様に注意しながら俺の肩を全体重をかけ地面に強く押え付ける、天音と青木さん


今、城二の両手はボクシングでもするのか?と言うくらい布でぐるぐる巻きにされていた...


「いでぇぇ!!手がァァ」


「城二っちぃぃ!!」


「北野君——————!」


二人は城二の肩を必死に抑えながら、目の前で半狂乱で暴れる俺を目の当たりにして動揺し涙を流している

そんな二人の溢れる涙が城二の頬へと流れ落ちてくる...


「ぐぅぅぅぅ―――くっトラぁぁぁ何とかしてくれぇぇぇ!!」


城二は周りに天音さんと青木さんが居るにも関わらずトラを呼び出した...


『やれやれ...騒々しいな...』


「え?ねっ猫!?」「て...なんかこの猫喋ってない?」


『はぁほれ、お前が我を失って無暗に儂を呼ぶからこんな事に...』


「いいからぁぁぁ早くこの両手を何とかしてくれぇぇぇ!!痛くて死にそうだぁぁ!!」


『良いか?儂は痛みを和らげるだけだからな...』


トラは何からブツブツと唱えると...暖かい風と鼻を突くミントの香りが城二と天音、青木さんの周囲を包んだ


『娘共はまぁオマケだ...』


「うぅぅぅ...ん?痛みが...段々治まって...」


「え?アタイも足痛かったの治ってんだけど?」「わ、私も全身が痛かったのが嘘みたいに...」


『お前等、気を付けろ...今は麻酔性の高い香りを嗅いで痛みを感じてないだけだ効果が消えればまた痛みはぶり返す...その前に治療をお勧めするぞ』


「あ、え?はぁはい?てか何で猫ちゃんが喋ってんの?」


「でもぉ尻尾二股でリボンも可愛」


城二は地面に手を付かない様に起き上がると...


「有難う二人とも...」


「はぁぁ?お礼を言うのはアタシらだってぇ~」


「そ、そうだよ北野君...本当に有難う...」


そう言い顔を上げた青木さんと天音さんの顔は真っ赤だった...


???


不意に二人の体操着姿を見てみると...


「えええええぇぇヘソチラでブラがぁぁぁ!!」


体操着の下の部分が引き千切られいてお腹が丸出しになっており、際の隙間からブラが少し見えてしまって...


「非常時だよぉ~城二っちあんま見ないでぇ~」


「ひ、非常識です!!北野君」


そう言うと二人は顔を赤くして腕で胸元を隠し恥ずかしそうに背を向けた



しかし城二は今ラッキースケベを喜んでる場合ではないのだ...









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