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第67話 けんだマン、同級生にボコボコにされる

〇東光高等学校 郊外施設 秘境 管理ランク[D]秘境最深部 闘技場内



俺の活躍か?は記憶に無いので凄く微妙な所だが何はともあれ、結果は偽神を倒し天音さんと青木さんを守る事が出来た


が...


「これ...」


俺は二人の体操着の一部がグルグル巻きになってボーリングの球位の大きさになった両手を見ながら...


「けんだマンみたいだ...」


「はぁ?けんだマン?」


「なんです?それ?」


『城二...そんなつまらない事よりもっと他に言う事あるだろ...ゴロゴロ』


俺は、前世で流行っていたリメイク作品で宇宙規模のプロレス漫画に出て来るマイナーな悪役超人を思い浮かべつい口にしてしまった...


「はぁ、他に言う事ね...」


「にゃぁぁって鳴いてて、可愛いぃぃ」


「アタイ猫ちゃん大好きぃぃ!これって前に城二っちが描いてくれた猫ちゃんだよね――――モデルちゃんが居たんだぁ~可愛いぃぃ尻尾フルフル――――!」


俺の目の前では我がクラスが誇る眼鏡美女とギャル美女の二人が白い縞模様の子猫の首やお腹を撫でて愛でていた...


「ねぇ城二っちこの子トラちゃんって名前なの?」


「えぇ―――トラちゃん?可愛いぃぃ―――」


『おい!ゴロゴロ...グフッ..小娘共、ニャァよく聞け!儂はゴロゴロ...ロロロ、かの4聖獣、ミャァァ、白虎、フニャァァ なるぞ!』


ダメだコイツ...前から思っていたけど女の人に愛でられてると猫色が強くて何を言っててもネコの鳴き声に聞こえてくる...


「あぁコイツは一応4門を守ってるという4聖獣のうちの白虎なんだけど、普段外に出る時はこうして子猫の姿になる様に俺と誓約を交わしてるんだ」


「にゃるほどぉ~トラちゃんは城二っちとの約束守れて偉いでちゅねぇ~」


「こんな可愛い4聖獣なら私も欲しいぃぃ!」


『止めぬかぁぁ、不届き者ぉぉ!』


「というか二人ともトラの声聞こえてるんだよね?」


「え?うん聞こえてるけど?普通は聞こえないの?」


「あ、私も聞こえてる」


天音さんも青木さんも返事はしてくれたが目線はトラに釘付けだ...まぁ女子の反応は大体これがテンプレなのか、ただトラの奴ワザとじゃ無いかと最近思う様になった


「あざと猫」ふと頭の中に今の状況を表すピッタリのネームングが思い浮かんだ...



【バァン!!】



そんなしょうもない事を考えてると急に闘技場の扉が開いたので俺達3人はビクっとなり背中に一瞬冷たい物が流れた


「天音ぇぇ!!」「翠!!」「城二無事か?」


「は?え?」「!?」


扉が開くと同時に俺達の方へと駆け寄ってくる人影...


鬼気迫る表情の藤堂と葛西君だった、その後ろには皆川先生と真白...そして尊と藍瑠


「あ、天音ぇぇ無事か?怪我は?ボロボロだし...て、何だその服!?半分千切れてんじゃねーか!!」


「葵も!?服が聞き千切られて!!一体...」


その瞬間二人の視線が俺の方へと向きその瞳には激しい怒りが満ちていた...


「?...何で俺の方を? バギッィ!! っ!?ガハッ!!!」


急に藤堂に顔面を殴られ、思いっきり後方へ倒れ込む


「この外道がぁぁぁ!!!」


「まっ待て!ガハッ!!」


倒れた俺の腹を葛西君が思い切り蹴り上げ俺の胃が中で切れ口から吐血する...


「お前等!!!何をする、止めないか!!!」


「城二に何する!!」


皆川先生の言葉も真白の叫びも今の藤堂と葛西には全く届かない、我を忘れ倒れ込んだ俺を何度も何度も足蹴にする


「やめてぇぇぇ!!」「いやぁぁぁぁ!!」


「!?天音!?」「翠!!」


袋叩きにされる俺に覆いかぶさり二人の蹴りから身を挺して俺を庇う天音さんと青木さん...


「なんて酷い事するの!!城二っちは怪我人なのよ!!!」


「そうよぉ!!こんなボロボロになって私らを偽神から守ってくれたのに何でこんな酷い事が出来るの!?アンタら二人は最低よ!!!」


俺の頭を抱きしめ、二人の事を睨み付け涙を浮かべる天音さんと、その前で両手を広げ同じく二人を睨み付ける青木さん...二人の姿と言葉に驚き固まってしまう藤堂と葛西...


「は?え?コイツが守った?偽神?な、なに言ってんだ?天音...」


「そ、そんな目で見ないでくれよ翠...僕は君がコイツに襲われたのかと...」


「あ、あま...ね...さ...あお...き...さ...ま...し.」


真白の名を呼ぼうとグルグルの手を真白に向かって伸ばし、悲壮な表情の真白が俺の元へ駆け寄って来る姿がぼやけ俺の意識は無くなった...







●藍瑠 視点—————————————



私は尊君に言われるがまま先に転送宝珠により秘境の入り口の祭壇の前へと戻って来た...


(尊君...偽神の像の前で何してたのかな?)


私は転送の光に包まれる前に見た尊君の不気味に笑った口元が気になって仕方無かった...


(何だろ...この不安な気持ち...首筋がザワザワする...)


「どうした?宮下、北野弟は一緒じゃないのか?二人共出てこないと合格には出来んぞ?」


「あ、はい...尊君ももうじき...あ、来ました」


私が指さすと祭壇の前に光が柱が出現し中から何時もの優しい笑顔の尊君が現れ嬉しそうに結晶を渡しに向かって掲げた


「藍瑠、俺達が最初のクリアパーティーだぁ!!やったな!」


私の手に結晶をそっと置いて両肩をポンポンと優しく叩いて、満足そうに満面の笑顔を見せてくれる


「そ、そうね...尊君のお陰だね...ありがと...」


「何言ってるんだ、藍瑠もメチャメチャ頑張ったじゃないか!俺の方こそありがとね、俺達二人が掴んだ結果だよ」


「うむ...見事だ、北野 尊、宮下 藍瑠ペアクリアだ!」


「おおおおお!!」「パチパチ♪」「やったなぁ尊」「凄ーい、おめでと!!」


皆川先生のクリアの宣言に、その場にいた全員が拍手喝采で賞賛してくれた


皆に向かって笑顔で手を振る尊君の横顔をジーと見つめる...


「?どうした藍瑠?俺の顔に何かついてるか?」


私の視線に気付いた尊君は首を傾げながら私の方へ向き訪ねて来た...私は慌てて何でも無いと視線を外す


大勢の輪の中心で笑顔で会話してる尊君を少し離れた場所で眺めている...その間にも次々と失格者が皆川先生によって呼び戻されていた...


そんな中でようやく次のクリアパーティーが転送されて来た...と思ったら


「ん?何で藤堂と葛西が一緒に転送されて来る?それに葛西どうした?その怪我は」


藤堂君に肩を借りてようやく立っている葛西君...藤堂君は嫌そうな顔をして葛西君に貸していた肩を外した


「!?」


藤堂君の支えが無くなって、膝から崩れ両手を地面に突く葛西君...


だが葛西君俯いたまま顔を上げようとしない...


「ほら、ちゃんと先生に言えよお前が何したのか」


「......」


「葛西、何があった?どのみち後から土童子に話を聞けば解かる事だぞ?」


皆川先生の言葉に肩をピクッと揺らし震えながら自分のした事を話だす葛西君...



・・・・・・・・・・・・・・・


昔から図書委員を率先して努めてくれ読書好きな真面目な優等生ってイメージだったのに、

まさかテストで不正して失敗した挙句に恋人である青木さんに怪我を負わせ、関係ない藤堂君達や城二君達にまで迷惑をかけるとか...


落ち着いた口調だが冷たく凍える様な雰囲気で淡々と処分を伝えてる皆川先生の前には、既に生ける死人と化した葛西君が俯いていた


そんな中...次の転送者が現れる...


「!?雨宮!天音は?天音はどうした!?何で一人で...」


転送されてきた雨宮さんに向かって駆け寄り必死の形相で問いただす藤堂君を鬱陶しそうに払いのける雨宮さん...


「先生緊急事態、城二達が何か大きな影に襲われた」


!?


鋭い光を湛え少し離れてる私にも見える只ならない雰囲気の流星眼からは事態の深刻さが直ぐに分かった...


「そんな!?いや...土童子よ顕現せよ!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・


しかし、土童子は現れなない...


「人域と神域を繋ぐ秘境内が異分子により遮断された...」


「綾瀬ちゃんそれって...」


藤堂君が恐る恐る尋ねると...


「異なる世界の神...偽神だ...」





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