〇???
「うぅぅぅ...いてててて...ここは?」
自分の左腕に刺さってる違和感に気付き目を向けると何かの点滴が刺さっていた...
(あぁそういや、偽神に頭から喰われそうになって...あれ?なんだっけ?全然覚えてないや...)
!?
「ひ、秘境、秘境テストは!?」
俺は起き上がり周囲を確認すると...どうやら此処は病室で俺はベッドに寝ていた様だ...
『やれやれ...お前は怪我をしても大人しく寝てられないのか?』
良く見ると俺の膝の上あたりにトラが丸まって寝ていて片目だけ開けて欠伸をしながらそう俺に告げる
「は?けが人??...っ!?」
針で刺した様な軽い痛みと共に俺は両手を布団から出す...
「げぇ両手共包帯でぐるぐる巻きじゃないか!」
『ふむ、右手の骨は何か所か骨折、左手も数か所ヒビが入ってるらしいぞ?それにしても人間のレン・トゲという発明は凄いな切り刻まなくても骨の様子が解るらしいぞ?』
「いや、切り刻むとか...お前こえーよ」
『誰か来たな...隠形で姿を隠すから儂の事は気にするな...』
コンコン♪
「失礼します~...って、あら目が覚めましたか?」
看護師さんが大きな透明な瓶を手に持ち病室の中に入って来た...
「あ、あの...俺どの位寝てました?...」
「えぇぇと...」
看護師さんは瓶を脇に挟んでペラペラとカルテのバインダーを捲り...いやその瓶気になるんですが
「あ、あぁ北野さんは3日前にここに運ばれて来てますね」
3日...という事は今は16日か
「それより北野様、トイレのお時間になります」
看護師さんは先ほど脇に抱えた透明な瓶...尿瓶を俺に向けながら無邪気な笑顔を見せる
「い、いえ...自分で何とか」
「フフフ、冗談ばっかりぃ~両手がそんな状態でどうやってするんですか?では始めますよぉ~」
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北野 城二になる前の南原 譲二の時も含めこんな恥ずかしい思いをしたのは初めてであった...
点滴の影響か自分で思ってる以上に沢山出てメチャ恥ずかしくてまともに看護師さんの顔を見れずに終始うつむいたままだった...
「北野さん3日分の点滴が出ただけなんで、そんなに恥ずかしがる事なんか有りませんよ?フフフ」
看護師さんもこんな事は日常茶飯事で慣れた物なのか、俺みたいな凹んでる患者への声かけも慣れたもんだ...でも恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ
『クククク、これは良い見世物だったぞ?城二、クククク』
ドラ猫が俺の事を馬鹿にしてクスクスと笑ってやがる...
両手が自由になったあかつきには、その2本の尻尾を固結びしてやろう...と心に誓う
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その日の夕方の診察で右手は全治2週間と言われたが、幸い左手のヒビはそこまで重症じゃない様で
「北野さん、このまま入院してもらっても構わないんだが学業の方もあるし通院に切り替えても問題は御座いませんが如何されますか?」
「通院で!!」
迷いなく即答でそう答えその日の内に退院する為の手続きをする...その為、今道代さんに迎えに来てもらってる...
退院する際の清算は救急外来入口近くにある、メインロビーと別の受付で支払わなけれならない...
長椅子に腰かけて荷物の番をしなが道代さんの真剣に説明を聞いてる姿を見つめる...
確か前に誰かに言った道代さんのお世話体質...勿論キャラのモデルになった美千代も同じように人のお世話が好きな優しい彼女だった...だから常に人から必要とされたい役に立ちたいという欲求が強かったのだろう...俺から離れていった理由もそこに有る
そんな昔懐かしい思い出に拭けて居ると目の前に道代さんが立っていた
「城二様?如何されました?ボーとして...もしかしてお薬の影響ですか?」
心配そうに俺の顔を覗き込む道代さんに慌てて首を振り否定すると、早く家に帰りたいと告げ先に外へと出る...
――――――道代さんが用意してくれたタクシーに乗りようやく我が家へと帰ってきた
「城二様、お気をつけ下さい」
「あ、はい有難う御座います...はぁ~やっぱここが一番落ち着きます~」
道代さんに気遣われながら部屋に上がり荷物を床に置いてリビングのソファーへと腰を下す...
「フフフ、城二様もう病院で夕飯は食べられたんですよね?」
「いやぁ~病院のご飯はお世辞にも美味しいとは言えないんで道代さんの料理が恋しいかったですよ」
「あら、嬉しいですそれじゃ軽く何か作りましょうか?」
「お手間じゃ無ければ...あ、久しぶりに道代さんのオムライス食べたいです!」
「はい!お任せを!!」
道代さんはご機嫌に鼻歌を歌いながらエプロンを身に着けると冷蔵庫を明け卵や鶏肉ケチャップや玉ねぎ等をキッチンに用意し始めた...
おれはその間に持って帰った荷物を片付けようとしたが...
「右手が使えないのは...かなり不便だな...」
トランクのチャックを開けるのも、部屋のドアノブを回すのも右手じゃなく左手でするのに若干戸惑いがあったが何とか荷物を出して部屋の棚に片づけ洗濯物を持って洗面所へと行く
ついでに風呂も入るか...
左手で不器用ながらも服のボタンをはずして脱ぎ下着を左手を使ってズラす様にして脱ぎ右手が濡れない様にビニールで括ってから浴室へと入る
「左手だけだと髪の毛が洗い辛いな...」
これは思ってる以上に不便だぞ?...そして一番の問題が...
「か、身体が洗えない...」
左手で右の方は洗えるが左腕や左の肩周りが上手く洗えない
「城二様ここら辺ですか?」
「あ、ああぁそこそこ...痒くて...ん?えぇぇぇ!!」
驚き振り返るとTシャツに短パン姿の道代さんが俺の背中を洗ってくれていた
「い、いや道代さん俺裸で!?」
「大丈夫ですよ?城二様が洗えない所はこの道代が洗って差し上げます!」
これはちゃんと断らないと...と思ったが元カノの美千代の事を思い出しお世話体質の「誰かに必要とされたい、誰かの役に立ちたい」そんな純粋な思いを踏みにじるのは過去の過ちを繰り返す事になる...そんな思いから...
「...そ、その...洗えない所だけ...お願いします」
「はい!!」
そして洗い終わった後は、背中をシャワーで流して貰いタオルで後ろを拭いてもらった...
着替だけは自分ですると断り、何時もの何倍も時間を掛けてようやく着替おわるとリビングには道代さん特製のオムライスとトラ用のキャットフードが用意されておりトラは一足先に食べていた
「わぁぁコレコレ!頂きます!!」
『何で城二はちゃんとした供物なのに儂はこのような乾物なのだ?』
何やら文句を言ってるトラを無視し慣れない左手でスプーンを握ると一心不乱にオムライスを口の中に運ぶ...キッチンで後片付けしながらその様子を微笑みながら見つめる道代さん
「ご馳走様ぁぁ!!」『儂は肉が食いたいのじゃ!』
トラはキャットフードに文句を言いながらも用意された分は全部完食していた
俺もオムライスを一気に食べ終わり、道代さんが食器を片付けをしながら明日からの学校をどうするか尋ねて来た...
「いえ、怪我してるのは右手だけなので学校には行こうと思ってます」
「そうですか、でもご無理をなさいません様に」
こうして明日4日ぶりに学校へと行く事になった...気になる学科テストと秘境テストの結果を聞く為に...