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第69話 屁理屈と正論で論破する

〇東光高等学校 教室前



捕捉だが歯磨きも利き手じゃないと本当に不便だ...


いや、そんな事を考えながら何時もの様に学校へと向かって歩いていると流石に右手が包帯でぐるぐるになってる俺の事が気になるのか何人かの生徒が珍獣でも見るかの様な目線を向けてくる...


でも大半は俺が怪我してるのを「ざまぁ見ろ」「自業自得」「罰があたった」と後ろ指を指し笑っていた


それでも俺のメンタルは傷つかない


(5年近くブラックな会社で不条理、理不尽に耐えて来た社畜企業戦士を舐めんなよ!)


何時もと違う空気感の中、教室へと入る...当然左手でドアを開けると


(おい...来たぞ...)


(なぁお前が聞いてこいよ)


(はぁ嫌だよ)


クラスの連中が俺の方をチラチラ見ながら何時もみたいに陰口をいう訳でも無く無視する訳でも無く、なにやら余所余所しい...


(???良く解らんがまぁ良いか...確か結果発表はこの後のホームルームだったよな...さてどうなるか...)


「あれぇ?城二っちもう学校来ていいん?」


「お早う北野君...その...手大丈夫?」


教室に入って来て早々俺の席へとやってきたのは天音さんと青木さんだった


「あ、二人ともお早う...秘境では色々と迷惑かけたね、二人とも怪我とか大丈夫?」


俺が返事すると二人は顔を見合わせ微笑むと


「何言ってんの?ほら...城二っちの...お友達の...可愛いい...ね?」


「その...例のお友達のお陰で私も痛みが無くなって、病院には一応通ってるけど、打撲だからその内自然に治るって」


「そっか二人が無事でよかったよ」


「で、でも北野君私達のせいで...その怪我した上に...アイツ等に...」


青木さんが悔しそうに俯きながらスカートの裾を強く握っている


「ゴメン俺、偽神に食われそうになった後位からショックか何かで記憶が混乱してて...なんの事かな?」


「え?そ、そんな...北野君もしかして」


「最悪だよぉ...アイツ等取り返しのつかない事をして...」


???


「そう言えば、藤堂君と葛西君は?一緒じゃないの?」


!?


俺の一言に教室の空気が一瞬で凍り付く...?なんだこの雰囲気は?しかし、今はあえて触れず二人の方に向き


「ほら、二人ともあまり俺と話してると幼馴染と彼氏から変な誤解をされちゃうよ?」


キーンコーン♪カーンコーン♪


何か言いたそうな二人だったがホームルームが開始するチャイムに阻まれ渋々自分の席へと戻って行った...


青木さんの号令で挨拶を終えると皆川先生が出欠をとって行く...


「青木、内海、江川、北野...」


(ん?何で俺?俺の前には葛西君が呼ばれるはずだが...?)


気になりクラスの中を見渡すと葛西君と藤堂君の席は空席のままだ...


「では、このロングホームルームで今回のテストの総合順位を順に発表する」


皆川先生はファイルを手にして中身を開き上から確認する様に目線を動かし...


「1位 北野 尊 2位 宮下 藍瑠 3位 雨宮 真白 4位...北野 城二...」


!?


こんな順位で名前が呼ばれるとは思っておらず思わず声が出そうになる、しかしクラスの連中の反応は微妙だ...


(何だ?皆どうした?いつもなら雨宮さんのお陰だろ、とか卑怯者!とか騒ぎ出すのに不気味なほど静かだ...)


「...20位 池上 天音...」


(天音さんが20位!?え?何で?秘境をクリアしたのに何でこんな低い順位?)


疑問に感じ天音さんの方を見ると表情を変える事無く真剣な表情で皆川先生の発表に耳を傾けていた...


「...同率の28位 青木 翠  藤堂 時哉...以上だ」


(どう言う事だ?藤堂君と青木さんが、秘境テスト参加者でリタイアした人より順位が下?...それに)


「これで秘境テストの順位発表を...「待ってください!」...なんだ北野?」


俺は納得できない事が有り包帯がグルグル巻きの右手を思わず上げてしまった...いや此処は確認しとかないと


「あの先ほどの順位ですが、弟...尊と宮下さんの1,2位は解ります...その俺と真白の前にクリアしていた藤堂君と池上さんが何でそんな低い順位なんでしょうか?...それと葛西君の名が呼ばれて無かった様なきがします」


俺の質問に対しクラス中がザワザワし始めた...


「北野、おまえ...まさか覚えてないのか?」


俺が答えようとした所で青木さんが手を上げ立ち上がる


「先生、北野君は敵を倒す少し前からの記憶が欠落している様です...おそらく暴行によるショックでは無いかと...」


(暴行?誰が?俺が?誰に?)


混乱してる俺に追い打ちを掛ける様に...


「あんな卑怯な奴は失格になって当然なんだよ!!」


「そうだそうだ、インテリぶりやがって前から胡散臭い奴だったんだ」


「藤堂君も幾ら天音ちゃんが心配だったからって、訳も聞かない内に暴力を振るっちゃねぇ...」


「そうだよ、男らしいって事はき違えてて普通に短慮で頭悪いとしか思えないもん」


クラスの連中から聞こえて来るのは、ここに居ない藤堂君と葛西君に対する罵詈雑言だった...


「静かにしろ!」


皆川先生の怒号が教室内に響く...


「北野...それと池上と青木一緒に生徒指導室まで来い...他の連中は自習だ前回のテスト範囲の再テストをするからな良く予習しとけもし再テストで、この3人に点数で負ける様なら...覚悟しとけ」


皆川先生の非常な宣告にさっき迄の雰囲気から一転お葬式の様な雰囲気に変わる


「お前等行くぞ」


俺達は皆川先生の後について生活指導室へと向かう...今は授業中という事もあり前みたいに他の生徒に後ろ指を刺される様な事が無いのは幸いだ


「まぁ座れ」


先生は俺達が入った後に生徒指導室のカギを締め自分も俺達の目の前の席に腰を下した


「北野、記憶が欠落してると言っていたが?」


「欠落しているかは分かりませんが、偽神に頭を齧られそうになった辺りから記憶が無いんです...」


「青木、池上お前等は何か見て無いか?」


先生は俺の左右に座った天音さんと青木さんの方を交互に見るが...二人とも首を横に振る


「あ、でもトラちゃんなら知ってるかも!」


「うんそうだねぇ北野君トラちゃんに聞いてみようよ?」


「トラちゃん?」


皆川先生は意味が解らないと言った様子で首を傾げている...


(無闇にトラを見せて回って良いのか?いやなんでそもそも天音さんと青木さんがトラの事を知ってるんだ?)


『はぁ~貴様は本当に後先考えずに、行動する人間じゃな』


「これが4聖獣の内一体である白虎か...」


「へ?何で皆川先生がしってるんですか!?」


トラを見ても驚かない皆川先生と、驚かない皆川先生を見て驚く俺...


「土童子も九十九神だ、上位の聖獣とは言えその存在を認識出来ない訳がない、お前が偽神を退けて再び秘境を監視下に置いた土童子が私に白虎の存在を教えてくれたんだ...まぁ名前がトラなんて安易なネーミングだとは思って無かったがな...」


「...つまり俺は秘境の中でトラを呼び出した訳ですね...」


「その事については私達から説明するね」


それから青木さんと天音さんから秘境内で起こった事について詳しく話を聞いた


まず俺が偽神に食われそうになった瞬間に閃光が走り一瞬で偽神の頭を吹き飛ばし間一髪で助かった事


俺が両手を怪我してて痛みで暴れ回ってトラを呼び出し痛みを緩和してもらった事


そして...天音さんと青木さんが俺に乱暴されたと勘違いした藤堂君と葛西君に殴る蹴るの暴行を受け気を失った事


そして...


「葛西の行いは明らかな不正だ、それによって青木に怪我を負わせ結果今回の混乱を招いた...情状酌量の余地は無い...今回のテストの全得点の没収と1ヵ月の停学処分とした」


「藤堂は自分の行いを反省してない様なので、ご両親に報告し1週間の自宅謹慎とした、謹慎明けの処遇についてはお前の意見をある程度尊重しようと思う」


「先生...葛西君なんですが本当に不正をしてたんですか?あ、いや不正をしたのは事実なんでしょうが、不正をしようとしてマジックピックを用意してた...と言うのがにわかに信じられないんです...」


「確かに、「自分はそんなの持ち込んで無い、ボス部屋の前に落ちて居たから拾っただけだ」と供述していたがな...まぁマジックピックはモンスターのドロップアイテムでもある...道中にいたラビットボルトから万が一ドロップしていたら...と考えはしたが...」


「ラビットボルトはマジックピックをドロップしない」


俺が皆川先生に被せる様にそう話すと


「そうだ、その通り...だからマジックピックは外部から持ち込まれたはずなんだ」


「そもそもで言うと確か秘境テストでの違反は「マジックアイテムの持ち込み禁止」でしたよね?何処にも拾ったアイテムを使用してはダメとは書いてない...でなきゃ俺達も宝箱から入したアイテムを使ったので失格になるはず...いや全員宝箱から入手した鍵を使用してるんだ失格になる...屁理屈を言えばそうなるんじゃないですか?」


「フフフ...確かに屁理屈だ...だがお前の言う事は正論だ...だが葛西が持ち込んだ物で無いという証拠は?」


「...それは未だ此れからですが...葛西君達の前に秘境に入ったパーティーなら可能なんじゃ無いですか?」


俺の言葉に他の皆は頷いたり考え込んだりしていた


「僕の勝手な意見ですが、葛西君が禁止されてるアイテムを使用したのは事実としても持ち込みに関してはグレーだという事も鑑みて、今少し温情のある処分が妥当では無いかと思います」


「ふむ...しかし藤堂もだが葛西もお前に対する暴行については?これは私も現場を見ている訳だそれにお前は暴行により怪我もして入院した訳だ...これは教育の現場として見過ごせんぞ」


皆川先生の言う事はもっともで、教職者として100点に近い回答だが...


「まぁ建前ですよね」


「なっ!?建前とは何だ、私はお前の...被害に遭った者のだな...」


「僕の今までの行いから、二人の取った行動はしごく当然の行動原理です、自分の大事な女性が襲われたと思ったら怒りに思考が支配されてもおかしくは無いでしょう」


「お、お前は自分が暴行を受けたんだぞ!?」


「ええ、でも僕は前に言いました...今までのして来た事に対し責めを負うのは覚悟してると...」


「城二っち...」「北野君」



「だから、僕に対する暴行については僕自身が不問にしますので学校側からもその事で二人に過失を追及し処罰をしないで下さい」




‥‥そう、藤堂も池上もこんな所で退場して良い奴等じゃない...







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