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第3話 先輩との手合わせ



「それまで!!勝者 北野!!」


皆川先生の右手が上がり俺の勝利を告げる...そして俺の目の前には...



〇少し時間を遡る――――――――――


俺は放課後真白達との約束を断り、学校の修練場に訪れた


「失礼します...」


金属の合わせ扉を開き中の様子を伺うと...十数名の女性達が修練着を身に着け組技や型の練習をしていたその全員が一斉に俺の方へと視線を向ける


「皆川先生に呼ばれて来ました、北野です」


中には入らず外に立ったまま頭を下げると...奥から天草先輩が手を上げて俺に元にやって来る


「やぁ北野君、よく来たね...本当に来るとは思って無かったよ、君は怖いもの知らずなのかな?」


天草先輩はボーイッシュな雰囲気にアンマッチな愛らしい瞳を悪戯っぽく細め俺の事を上下に舐める様に見る...


「怖いもの知らずとかは無いですね、怖いものだらけです、昼間に放課後もう一度ここに来る様に言われて来ただけなんで用が無い様でしたらこれにて失礼します」


俺は天草先輩に頭を下げると、天草先輩に背を向け帰ろうとした...


「まぁそうだろうな、偽神を倒しただの秘境最深部を踏破しただの...所詮は雨宮のオマケ君が大アタリを引いただけだろ?」


「......」


「雨宮も雨宮だこんな小者に入れ込んで、現人神だなんだと煽てられて調子に乗った色ボケ娘だったわけだ、部長も先生も何でこんな連中に固執してんのかボクには理解出来ないよ~」


「なぁ...テメェ真白が何だって?俺の目を見て言って見ろよ...」


俺は真白を馬鹿にされた事で怒りで頭に血が上り冷静さを欠いてしまっていた...


「へぇ――――いいねぇ―――中々の殺気じゃないか...何度だって言うさ雨宮は色ボケ娘だよ」


バァァァン!!


俺が裏拳を放つと修練場の右の鉄扉がくの字に曲がって吹き飛んだ...


修錬場に居た他の部員はその音にビックリしていたが、眼の前に居る天草先輩は微動だにしない...


「お前が言う小者が、どんな物か見せてやるよ...その後でもう一度俺の目を見て今の台詞を吐けるか見ものだ」


「へぇそれは楽しみだ...上着を脱いで上がりなよ」


城二と天草は部員たちの取り囲んだ修練用の武舞台で相対する...流石に玄武の赤域程の大きさは無いが床は多少ダメージを軽減する緩衝材が入っている様だ...


「まぁハンデをあげるよ、ボクは神衣も神憑依も使わないから君は全力で掛かって来ると良いよ」


「先輩ぃ~そんなサービスして後悔しますよ?」


「あ―――はいはい、それじゃ誰か開始の合図頼めるかな?」


武舞台の真ん中付近に居た子と天草先輩の視線が合い女の子は自分を指さしながらも、不安そうにゆっくりと武舞台の中央にやってきて手を掲げた...


「それでは!一本勝負!開始!!」


!?


開始の合図と共に天草先輩は右に素早く移動し、城二の視界から姿を眩ます


城二からしたら天草先輩が消えた様に感じただろう...そして城二の右からストレートを顔面目掛けて打ち込む


バシッ!


しかし城二の左手で拳は受け止められる...しかも城二は視線を天草先輩に向けて無いノールックだ


「へぇ―――まぁまぁやるね...だが!」


天草先輩は受け止められた拳を引かず逆に押し込む様に反動を付けると其の場で飛び上がり城二の延髄目掛けて左足の飛び蹴りを狙う...が


城二は頭を下げてその延髄を交わすとその勢いで城二に摑まれていた拳が離れる...


「これも躱すとか...少し舐めてたかもね...」


「...もう良いすか?」


城二はつまらなそうに頭を掻く


「へぇ面白く無かったかい?...じゃぁこれはどうだい?」


天草先輩は腰を落とし右手を腰に引き...蒼拳の構えを取った...


そして俺も同じように腰を落と蒼拳の構えを見せる...


「「そいやぁぁ!」」


二人同時に拳を撃ち出した...しかし...


「グッ...なんだ今の赤い拳は...」


「俺のオリジナルの紅拳ですよ」


そう城二はこの1ヵ月の間にトラと密かに特訓を重ね秘境内で偶然に出来た赤く光る正拳突き「紅拳」を習得したのだ...


「蒼では無く...紅...だと...?」


お腹を押さえて蹲る天草先輩を見下ろし...審判をしてくれた子に視線を向けるがオロオロしてて一向に勝ち名乗りを言わない...




「それまで!!勝者 北野!!」



いつの間にか修練場に来ていた皆川先生の右手が上がり俺の勝利を告げる


「小百合油断ね...」


「可憐...油断とかじゃないけボクの負けは負けさ...」


九鬼先輩の差し出した手を押し返して断り、立ち上がった天草先輩は俺の方へと近づき


「雨宮の事、君の事...馬鹿にした事を謝らせてもらいたい...この通りだ」


天草先輩は俺に向かって頭を下げた...


「天草先輩...俺の事を謀りましたね...」


「フフフ、まぁボクは演技が下手だからね~やっぱバレてたか―――こういう役目は可憐の方が良いって言ったんだけどね」


顔を上げた天草先輩は苦い顔をして照れ笑いを浮かべ頭を掻いて言い訳をしていた...


「たっく...小百合の大根ぶりには呆れるわ...憎まれ口を叩くならもっと悪役ぽい雰囲気作りしてくれなきゃ北野君の全力を測り切れないじゃない...はぁ~」


「へぇ―――城二君は未だ何か隠し球があるのかい?さっきの紅拳だっけ?あれだけでもボク的には結構お腹一杯だけど?」


「まぁ見せて貰った方が早いでしょうね...ですよね、白虎様」


「!?」


『フフフまさか真白以外に我を神視出来る者が居たとはな...これは驚きじゃ』


隠形を解き白い縞模様の子猫の姿で俺の足元から現れる...


「わぁ可愛い子猫だね――」


「小百合、口は慎んだ方が良いわこの方が4聖獣の西門を守護されてる白虎様よ」


「!?えぇぇ―――そんな聖獣クラスの神格の神様が普通に顕現してるのかい!?」


天草先輩は九鬼先輩の説明に驚き、モフモフしようとした手を引っ込める。


「そうか...ゴールデンウィーク前と後では比べ物にならない程の力を感じたのは聖獣クラスの神と契約したからか...」


皆川先生は鋭い視線で俺の方を見つめながら顎に手を置いて何やら納得している様だ...


「そんな大層なもんじゃ無いですよ...俺とトラ...白虎は仮契約なのでパッシブスキルは使えますがアクティブスキルは使えません」


『まぁ儂クラスになればパッシブだけでも相当な力じゃからな』


「仮契約...聞いた事無いな...」「ええ」「私と土童子の関係みたいな物ね」


トラの事を色んな角度から眺めながら3人の女性はアレコレと話し込んでいる様だった...


「あ、あのぉ―――魔刑部への勧誘の件なんですが――――」


盛り上がってる九鬼先輩達に恐る恐る声を掛け


「あ、あぁぁすまない、神が人域に顕現するなんて初めて見るからつい興奮してしまったよ」


九鬼部長は俺の方へと歩み寄り右手を差し出して来た...


「北野 城二君、改めて君を我が校の魔刑部へと勧誘したい!」




「あ、それはお断りします」




「「「ええええええええええええ!?」」」

































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