〇———————————昼休み時間の屋上
「ん、城二の噂うちのクラスでも言ってた」
「だよねぇ――マシロンのクラス、城二っちのアンチが多そうだもんねぇ―――」
「小さな噂だから直ぐに収まるよ」
この日、翠は放課後にクラス委員長達の会合があるので葛西と一緒に下準備で駆り出されていてこの場に居ない
俺は真白と天音といつも通り貯水タンク裏で昼食を摂っていた...
「ん、噂とか気にしない私はこの目(流星眼)を信じる」
「あ~ぁそれ私も同感―ー—やっぱマシロンとは気が合うねぇ~」
本日の並びは俺→トラ→天音→真白だトラは相変わらず天音と真白から肉系のオカズをもらいガツガツと食っている、なんでもミートボールが最近の白虎ブームらしい...
「でも城二っち噂は噂だけど事実なんでしょ?」
「あぁ―――まぁそうだな」
「なんで勧誘を受けなかったの?魔刑部なんか誰もが入れる部活じゃないよ?まして男子には特に厳しいって聞くし」
「実力で言えば、俺より勧誘するべきヤツは何人も居るよ、義弟もだし...ほら藤堂だってかなりのもんだ」
「時哉かぁ~時哉はちょい無理だねぇ―――あいつ私以外の女子苦手だし」
「へ?」
いや初耳だしそんな設定知らねぇよ?確かに藤堂が天音以外の女子と二人で話してる様な描写は無かったがまさかそんな感じだったのか...
チリッ「!?」
俺の首筋に電流の様な痛みが走る...
「静電気かな?」
【それはお前が転生したのは別次元の世界だからだ】
!?何だ...今の声は...トラかと思って隣を確認するが、子猫は必死になって真白の用意したチキンバーに噛り付いていた
トラじゃない?気のせい?後ろの首筋を手で触り先ほどの電流が流れる様な痛みを確かめていると...
「やぁやはり此処に居たか」
貯水タンクの足場に重なって姿は見えないが...この声...
「僕に未だ何か御用ですか?九鬼先輩」
「君に用事というより君達にと言った方が正解だね」
「ん?誰?」
真白の流星眼が一瞬だが鋭く輝く...その瞳を臆する事無く見つめ返す九鬼先輩の黒い瞳
「君が雨宮 真白だね、噂は兼ねがね...確かに尋常でない力を持っている様だ...これは是非も無い」
「にゃにゃぁ――?九鬼パイセンって魔刑部の部長の?ほぇ―――初めまして池上 天音だよぉ――」
チキンバーを咥えたままのトラを持ち上げながら緊張感の無い挨拶をする天音さん
「あぁ君があの池上流の...成程、天音だったか...君も中々の力を持っている様だ...実に興味深い」
顎に手を掛け真白と天音さんを値踏みするように見つめる九鬼先輩
「先輩一体俺達に何の用事なんですか?」
「いやね昨日君が言っていた通り弟君を勧誘してみたんだが、あっさり断られてね」
「......そう言う事ですが...昨日の魔刑部での一件、学校中に噂をばら撒いたのは貴方ですか...」
「...ほう」
九鬼先輩は俺の言葉に一瞬驚いた表情を見せたが、直ぐにニヤニヤと口元を緩めていた
「はにゃ?何で九鬼パイセンが城二っちが勧誘断った噂を流すの?イミフなんだけど??」
「つまり、九鬼先輩は俺が魔刑部へ勧誘され断った事に加え、そのときに俺より義弟の尊を勧誘するべきだと言った事も合わせ噂を流す事で、尊が確実に勧誘を断る方向へとバイアスを仕掛けたんだ」
「えぇ?何で?城二っちに推薦して貰えたら喜んで勧誘を受けちゃうんじゃないの?ますますイミフ――」
「普通はな、でも尊は北野家内での立ち位置は俺より下だが、実力と人望では俺に優っているという自負を持っていてそれがアイツのアイデンティティなんだ、そんな時に実力が下だと思っていた俺が先に部活の勧誘を受け、あまつさえ断った上に弟の方を誘ってくれと言った...なんて知ったら?」
「プライドを傷つけられて、誘われても絶対に断る...」
パチパチパチパチ♪
「素晴らしい、やはり他人から聞いた評価とはアテにならんな、私の口にした一言と感情の機敏でそこ迄推測が及ぶとは...恐れ行ったぞ」
笑顔で手を叩く九鬼先輩を睨み付け
「お褒めの言葉有難う御座います、でも俺の質問に答えてくれてませんよね?こんな場所で、そんな与太話をする為じゃ無いですよね...いったい俺達になんの用事なんですか?」
「あぁそうだな昼休憩も、もう終わりそうだし私は回りくどい事は嫌いだ担当直入に言おう」
(よく言うぜ...策士が)
「私と試合え」
九鬼先輩は腰に手をあて指を差す...
「あぁ、お前だ雨宮 真白、私と城二を掛けて試合え」