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第8話 火いずる中に海より来たり



〇———————————東光高校 修練場




「神衣、火之迦具土神」


「神衣、綿津見神」


相対する九鬼先輩と真白は、いきなり憑いた神を降ろしその身に纏った...



神衣かむい


神憑依かみひょういでは至らない神と人との融合...人の身で神を自身の身体に衣の様に纏うスキル


高い神視の能力と絶え間ない修練を重ねた者が至る至高の領域...神衣で行使出来る神の力は神憑依の非では無い


その身には神秘の衣が発現し、神に準じた神具と呼ばれる武具も出現する


魔都東京1999でも主人公 尊はゲーム中盤の最後に神衣を習得し一気に数段階強くなることが出来た


終盤は神衣により強化された尊の力で3柱の神との契約へと至って、その強大な力を以ってラスボスへと挑むと言うのが本筋の流れだ...



神衣 火之迦具土神 九鬼 可憐


炎の神であるヒノカグツチの力を顕現し、赤く揺らめく胸当てと肩当、それと小手を身に纏い、その手には炎に揺らめく長めの日本刀、斬馬刀が握られている


神具 赤鎚あかつち


ヒノカグツチの炎の力を宿す日本刀、その刀身の切れ味は鋭く、さらに切られた箇所はマグマに晒されたかの如く焼け爛れる..


かつて産みの母神たる伊邪那美イザナミを火傷させ死の国へと至る原因を作ったとされる閻魔の刀




神衣 綿津見神 雨宮 真白


海の神であるワダツミの力を顕現し、水色に揺らめく胸当てと肩当、それと鉢金はちがねを身に纏い、その手には水が凝縮した様な弓矢が握られている


神具 蒼珊瑚あおさんご


ワダツミの海(水)の力を宿す弓矢、一度弓から放たれた矢は凝固された水圧により例えダイアモンドでも穿つとされる、また打ち放った真白の狙った先へは百発百中であり不可避の矢とも呼ばれている




「これが...神衣...この目で実際に見るのは初めてだ...」


俺は目の前で対峙する2名の圧倒的な力の前に全身の毛が逆立つ様な感覚を覚えた...


「学生の時点で神衣迄至れるとか...マジでマシロンて凄いんだぁ――――」




!?


すると接近戦用の武器を持つ九鬼先輩から先に動く...


肩口の肩当に乗せる様な形で長刀を担いで、一直線に真白に向かって突進していく


ブゥン


風すらも切り割くのかと言う様な異様な爆音と共に九鬼先輩が長刀を一気に振り下ろす...


しかし真白は目にも止まらぬ速さで遥後方の武舞台ギリギリまで飛び退いて躱す...


「先生方!!防御結界を崩さないでぇぇ!!」


皆川先生の掛け声に武舞台を見渡すと4角に配置された先生たちは武舞台中央に向かって必死の形相で両手を翳していた...


「フォフォフォ...衝撃吸収の結界じゃよ...」


隣の学園長が小声で状況を捕捉してくれた


学園長の言葉に視線を移していたが、再び武舞台へと視線を戻す...今の戦況は真白が武舞台際に追い込まれた状態だ...


「ましっっっ!?」


真白に声を掛けようとした所で、武舞台上の真白と視線がぶつかり鋭い目つきで軽く首を振られた...


(そうか...九鬼先輩はそれ程迄の強敵か、あの真白がたった一人に全力集中しないとならない程の...)


真白は華麗に武舞台上空に飛び上がると空中で回転しながら九鬼先輩の頭上を取り


パシュッン、パシュッン、パシュッン


細く研ぎ澄ました水の弓矢を3発連続で九鬼先輩目掛けて打ち込む


ブゥン


九鬼先輩は上空から降り注ぐ水の矢を一振りで叩き落とす...ジュ――と赤鎚と水の矢が打ち合った際に水蒸気となり白い煙が発生する...


!?


全て撃ち落としたかに見えた水の矢の内一本が撃ち落とされず九鬼先輩目掛けて飛んで来る...


カキッン!!


九鬼先輩は咄嗟に赤鎚の柄の端で矢を叩き落とし軌道をそらされた矢は武舞台へと突き刺さり、ただの水へと変わった


「やるな、雨宮...全国でもこの私とここまで競える奴はそうは居ない...現人神というのは伊達では無いな」


九鬼先輩は真白への敬意と畏怖を口にしたが、その言葉とは裏腹にこの試合を楽しんでいるようで口元には余裕の笑みが浮かんでいる


初撃をしのがれた真白は九鬼先輩と反対の武舞台端に着地すると、再び青く光る流星眼で九鬼先輩を睨み付け力いっぱい蒼珊瑚を引き絞る...


「これで終わり...神衣式弓術かむいしききゅうじゅつ 水の宗みずのそう 黒渦潮くろうずしお


蒼珊瑚より放たれた水の矢は蒼黒く変色しドリルの様な回転をしながら武舞台の表面を削りつつ九鬼先輩へと放たれる


「甘いな、九鬼一刀流が接近戦しか出来ないと思うな...神衣九鬼一刀流かむいくきいっとうりゅう 火の宗ひのそう 火喰い鳥ひくいとり


ブゥン


両手で握り直し渾身の横払いを放つと、赤鎚の炎より炎の鳥の様な衝撃波が打ち出され真白の放った黒渦潮に向かって飛んで行く...


バシィィィン!!!


修錬場内に響き渡る轟音と共に両者の必殺の神衣スキルが武舞台中央で激突し物凄い水蒸気と共に二人の姿が見えなくなる...


「なっ!?」


一瞬だが白煙の中で人影が動いた様な気がした


水蒸気が晴れていくと二人が近接で組み合って居る様な影が揺らいで見える...



「グゥゥゥゥ」


「フフフフ...」


水蒸気の中から現れたのは、九鬼先輩により振り下ろされた赤鎚を、蒼珊瑚の側面で受け止め膝を床に落す真白の姿だった...


力技では九鬼先輩に分が有る様だ...真白の表情にはいつもの余裕は見て取れない





「時間だ!双方其れ迄!!」



二人の間に皆川先生が割って入り、学園最強と噂される二人の練習試合は終了した...



「この勝負、引き分け!よって白虎による判定にて勝者を決める!!」


白虎を神視で捉える事の出来る者は白虎のあげる名を固唾を飲んで見守っている...






『勝者は...』









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