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第9話 勝敗の行方



〇———————————東光高校 修練場



神衣した真白と九鬼先輩だが、最終的には九鬼先輩が真白を力で押し込んだ様な形で膠着し時間だけが過ぎていく...



「時間だ!双方其れ迄!!」



二人の間に皆川先生が割って入り、学園最強と噂される二人の練習試合は終了した...


「この勝負、時間いっぱいで引き分け!よって白虎による判定にて勝者を決める!!」


白虎を神視で捉える事の出来る者は白虎のあげる名を固唾を飲んで見守っている...



『勝者は...』





『雨宮 真白』


「なっ!?」


俺だけでなく他の白虎の声が聞こえる者も同じように驚く...


「ね、ねぇ城二っち...アタシの目には九鬼パイセンの方が優勢に見えたけど...?」


「あ、あぁ贔屓目なしで九鬼先輩が最終推していた様に俺にも見えた...」


武舞台の上で茫然とする真白は既に神衣状態を解除しており肩で息をしていて呼吸が浅い...


一方の九鬼先輩は静かに目を瞑り神衣を解除すると、その口元に僅かな笑みを見せる


「北野!!白虎は一体どっちを勝者に選んだのだ!?」


皆川先生には白虎を視認できない様で、その答えを俺に尋ねて来た


「白虎は...雨宮 真白を勝者に選びました...」


「なっ!?」ザワザワ...ザワザワ...


俺の言葉に皆川先生だけでなく会場中がザワザワと騒ぎ出した...その中には非難めいた言葉まで飛び出した


「ふざけるなぁ!どう見ても九鬼先輩のが優勢だったじゃねぇか!!北のクズからがいい加減な嘘ついてんだ!!」


「そうよ、現人神とか言われていても所詮その程度なのよ、噂が先行しすぎて偶像化しちゃってただけでしょ!」


「北のクズからに嘘までつかせて勝ちを得ようとか、屋上のアリエルどころか、臆病のアリエルだ!」


一つの誹謗中傷が大きな渦となって修練場全体を飲み込もうとしていた...武舞台上の二人はお互い見つめ合ったまま一歩も動かない


(くっ...確かに九鬼先輩が優勢に見えたのは事実だが真白だって精一杯戦ったんだ...それを!!)



「おまえらぁぁぁぁだまれぇぇえぇぇぇ!!!!」



気付けば俺は武舞台の上に上がり観衆を前に絶叫に近い怒鳴声を上げていた


「確かに真白は不利に見えた、だが白虎が勝者に指名したのは間違い無く真白だ!!勝敗に不満があるのは解る、だが目の前で全力で戦った選手を口汚く非難して、お前等は恥ずかしくないのか!!!」


「文句が有る奴は全員降りて来い!!俺が纏めて相手をしてやる!!!」


俺は観客に向かって指さした後、自分の足元の武舞台へ降りてこいと指差す、文句が有る奴はここへ来いと...


観衆がシーンと静まり返る中...



「オイオイ、無能なクズ兄貴が随分正論で粋がってくれてんじゃねぇか―――」


「その生意気な口を今すぐ閉じてやるぜぇ―――」


「家の名前だけで粋がって来たボンボンが、もう家からも見放されたって皆知ってんだ、今更お前に遠慮する様な奴は居ねぇ――ぞぉ!」



武舞台に向かって3人の大男が俺の方へと向かって不敵な笑みを浮かべ歩いて来る...


(誰だコイツ等...魔都東京1999で見かけた事の無い連中だ、ただのモブか?)


「はぁ?つかお前等こそ誰だ?雑魚の名前なんぞ俺は知らねぇから一人ずつちゃんと名乗れよ」


俺は中指を立てて相手を威嚇する...すると3人は額に血管を浮かび上がらせ血走った眼で俺を睨み付ける


「俺はボクシング部キャプテンで、昨年ミドル級全国2位の 3年の鈴木だぁぁ北のクズ、ミンチにしてやらぁぁぁ」


「馬鹿が粋がる相手を間違えたな、俺は空手部主将、今年のインターハイ準優勝の田中だ、バラバラにしてやんよ馬鹿兄貴ぃゲヘへへ」


「おいそこのクズ馬鹿野郎、俺ら3人同時に相手とか死んだな...俺はレスリング部キャプテンの高橋だ国体110キロ級2位だ」


武舞台の上から睨みつけているが目線の高さが俺とそんなに変わらない...俺でも180cm有るのにコイツラ2m超えてるだろ...本当に高校生か?普通にキモすぎだろ...


俺の怒声に静まり返った観衆だったが、どうやら東光高校ではそれなりに有名な3人らしく煽る様な声援が3人に向かって投げかけられる


「先輩そんなクズなんかぶち殺して下さいぃぃ!!」


なんかデンジャラスな事を言ってる奴が居るなと客席に目線を向けると...同じクラスの取り巻きの一人だった


(名前も知らないが...お前とは二度と関わらんからな、これで本当に永遠にサヨナラだ)


溜息交じりに首を軽く振ると、自分達が馬鹿にされたと思ったのか3人は一斉に武舞台の上に上がって来た


うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!観衆の注目は一気に俺の後悔処刑へと切り替わった様でボルテージが最高潮へ


「お前等ぁぁ神聖な武舞台で私闘に及ぶとか許さんぞぉぉ!!」


皆川先生は必死に俺達の私闘を阻止しようとして怒鳴り込んで来たが...


「!?...身体が...動かん...」


急に金縛りにあったかの様に武舞台袖にて硬直していた...九鬼先輩と真白は相変わらず見つめ合ったまま此方の様子等意識してない様だった...


(自分の吐いた唾だ...自分で飲み込むしかない)


覚悟を決め3人にコイコイと手で合図を送ると...3人の額の血管から血が噴き出し鬼の様な形相で俺へと突進してくる...




バギッ、ドガッ、ボゴッ




数秒でケリが付く...




「なぁ俺に向かって粋がってくれといて、これで済むと思ってねぇよな...」


俺の足元に蹲りながら倒れ込む3人の大男達に俺は右拳を握りしめ力を込める...


「ヒィィィィまってぇぇ許してぇぇぇ」「助けてぇぇぇ」「死ぬ死ぬ死ぬゥゥ―――」


涙と鼻水...それと失禁してる3人を冷たい眼で睨み付け赤いオーラを纏った拳を振り下ろす


「紅拳!!」


ドガァァァァ!


爆音と共に武舞台の床が破壊され木製の床が砕け散る...


俺の撃ち落とした拳は、名前は忘れたが空手の道着を着た大男の頭の横に撃ち落とされ、空手の大男は口から泡を吹いて失神していた...


他の2名を睨みつけると、悲鳴を上げながら武舞台を転げ落ち一目散に修練場から逃げて行った...


気絶した大男を足で軽く蹴って転がし武舞台から転げ落とすと


「おらぁぁぁ!他に文句が有る奴、降りて来い!!つかさっきから罵声を上げてた奴全員顔を覚えてるからな!!降りて来なくても俺の方から後日出向くからな!!」


その言葉に数十名が俺の視線から隠れる様に別の生徒の影に隠れた


「北野...そこ迄だ...これ以上はお前を罰する事になる」


「...ちっ...解かりました…」


皆川先生は俺の肩をトントンと叩くと、俺の前に出て全員に向かって勝ち名乗りを上げる


「では判定により、勝者は雨宮 真「勝利を放棄する、勝ちは火トカゲ女で良いそれじゃ…」...へ?」


真白はそう言うと何時もの澄ました表情のまま修練場を後にした...


「フフフ、勝ちを譲られるとは...この九鬼 可憐一生の屈辱だ...フフフフ、アハハハハ」



この後正式に勝者を九鬼先輩にする事が決まり、学園最強と呼ばれた二人の戦いは幕を下ろした...














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