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第11話 メインヒロインの目線



〇———————————メインヒロインの独白



結局私は家の都合に流され尊君との婚約をさせられる事になった...


少し前であれば、不安より期待の方が勝っていたのかも知れない...だが城二君と雨宮さんに話た後からも不安は払拭される事無く逆に増すばかり...


婚約破棄を告げた前日夜のやり取り、秘境テスト最終地点で封印された偽神の周りでの不審な行動...


私の悩みに寄り添い親身になって寄り添ってくれた尊君とは別人の様だ...いや、何処がと言われると上手く説明できないが、一つ確かな事は城二君に対して明らか嫌悪感を表しだした点だ


いや、今までもそう思っていて中々表に出せなかったのが此処に来て婚約破棄という一連の出来事で箍が外れたって可能性も有る...


だとしたら、義兄弟の仲を破綻に導いた原因は私に有るのだろうか?...


そんな悩みを抱えつつも今私は、クラスの友人に誘われ放課後に魔刑部の修練場に来ている...


周りにも野次馬の様なギャラリーが大勢詰めかけていて、一見すると何かの大会の様な異様な盛り上がりを見せていた...


そして私の視線の先には、今から試合をする雨宮さんと魔刑部の部長である九鬼先輩...


では無く、何故か主賓席の真ん中に座っている元婚約者の背中...


何であんな所に...学園長に隣は...確か秘境テストの時に一緒に居た池上さん?


元婚約者の背中に注目している中、隣のクラスメートの友人が私の肩をポンポンと軽く叩きアレアレと小声で指差している...


その先には同じく友人と思われる数名と一緒に身に来ていた尊君の背中が見えた...


声掛けて来る?と尋ねる友人に首を振って再び視線を元婚約者に向けると、急に勢い良く立ち上がり上の方を向いて叫び出した


「全て、お前の入れ知恵か...白虎ぉぉぉぉぉぉ!!!!」


背中越しに表情は伺えないが、昔から何度も聞いてる不機嫌な時の怒鳴り声...当時は嫌で怖くて耳を覆いたくなるその怒声も今耳にすると何故か懐かしく思え私一人笑みがこぼれてしまう...


!?


何これ...馬鹿じゃないの?あんな最低な奴の声なんか二度と聞きたくない!


しかしその瞬間、隣にいた友人の顔から一気に血の気が失せ真っ青になって震え出した...その眼は焦点が定まらず寒いのか両肩を抱き震えてる...


確かに私も首筋にピリピリと電気が流れる様な不快感を感じる...しかしそれは私達だけでなく修練場に集まったギャラリー全員に起こっている様だ...


キャァァ、ヒィィィィ


周囲には悲鳴や叫び声が響きわたり見える範囲に居る数名の生徒が口から泡を吹いて気を失ってしまっていた


「白虎!!!会場内の人に神格で威圧するのは止めろ!!」


悲鳴と絶叫が鳴りやまない修練場に響き渡る、元婚約者からの二度目の怒号...


しかしその怒号の後には首筋に感じていた不快な感じも収まり、会場全体も徐々に落ち着きを取り戻して行った...


友人の背中をさすりながら、ふと尊君の様子を見てみると隣で苦しんで観客席の手すりに摑まって蹲っている友人に目もくれず修練場の中央を見据え微動だにしてかった...


この位置から表情は見て取れないが、一瞬見えた口元がギリッと食いしばった様に見えた


流石の尊君もこのプレッシャーに気合を入れざるを得なかったのだろう


友人の背中をさすり回復を待ちながらも、私の視線は元婚約者の背中に向けれれる...中央の武舞台では雨宮さんと九鬼先輩の神衣を纏った者同士の超常的な戦いが繰り広げられていて、野次馬達も二人の応援に必死だ...


そしてアッと言う間に5分が経過し、見た感じ九鬼先輩が押して居る様な状況で試合は終了し


引き分けの為、城二君が召喚したらしい聖獣白虎が判定を下すらしい...そして


「白虎は...雨宮 真白を勝者に選びました...」


皆川先生が判定の結果を城二君に尋ねた所、白虎は以外にも雨宮さんを勝者に選んだ様だ...


しかし此処で不満が爆発する...


批判の矛先は白虎の判定結果を口伝えた城二君に対して虚言だと決めつける様な内容が殆どだったが、中には雨宮さんを貶める様な心無い批判も有った


「おまえらぁぁぁぁだまれぇぇえぇぇぇ!!!!」


城二君は武舞台に上がり私達のいる客席に向かって鬼の様な形相で怒鳴り散らす


「確かに真白は不利に見えた、だが白虎が勝者に指名したのは間違い無く真白だ!!勝敗に不満があるのは解る、だが目の前で全力で戦った選手を口汚く非難して、お前等は恥ずかしくないのかぁ――――!」


「文句が有る奴は全員降りて来い!!俺が纏めて相手をしてやる!!!」


城二君は自分の足元を指さし、観客席に向かってコイコイと手招きしていた...


すると、1Fの修練場の入り口ドアが開き3人の大男達が武舞台の城二君に向かってにじり寄って行き何やら口論していた...


その内3人が武舞台に上がりまさに一触即発


「じょ!?」わぁぁぁぁ!!


声を掛けようとしたした途端、観客達は3人の大男に城二君を叩きのめせと煽り出す...私は声を上げる事無く胸の中に飲み込む...


しかしそんな無責任な煽り一瞬で静まる...大男3人が同時に城二君に襲い掛かったが、あっと言う間に捻じ伏せられ大の男が無残に武舞台に倒れ込む...


それでも攻撃の手を緩めようとしない城二君は以前の様な醜悪な表情から不敵な笑みを浮かべ大男の一人に向かって赤く発光した拳を打ち下ろした


爆音と埃を巻き上げたが、城二君の拳は大男の顔面を捉える事なくその顔の横の床板を打ち抜いていた...


顔面横を打ち抜かれた男は気絶したのかピクリとも動かない...他の2人は転げる様に武舞台を降りると悲鳴を上げながら修練場から逃げて行った、気絶した大男を武舞台からどかし


「おらぁぁぁ!他に文句が有る奴、降りて来い!!つかさっきから罵声を上げてた奴全員顔を覚えてるからな!!降りて来なくても俺の方から出向くからな!!」


城二君の鋭い目線にさっきから煽るような声援を送っていた生徒は身を屈め視線を避ける様に隠れていた...


それにしてもだ...前から難癖付けての喧嘩は日常だったがいつも取り巻きの男子生徒に痛めつけさせた後、相手が満身創痍になった後からトドメの様な攻撃をするだけの小者だったはずなのに...


明らか体格も力も上であろう3人の大男の同時攻撃を一瞬で打ち伏せたのには本当にビックリした...


元々実力を隠していたのか...雨宮さんと特訓したのか...何れにしても私の知る城二君では無かった



クズで下衆だった元婚約者は、日常的に行われていた悪行は也を潜め学業も真面目にこなし実際に秘境テストの総合では4位に食い込むという有り得ない結果をたたき出した


そして今、雨宮さんの名誉を大勢の生徒を敵に回してまで守ろうとする気概...今の城二君は、まるで別人の様だ


一方で私の悩みに向き合い寄り添ってくれた尊君は、見た感じと雰囲気は変わって無い様に思えるが一瞬感じるドス黒い雰囲気...


尊君も何やら人が変わったみたいな...



ふと尊君に視線を向けてみるが、いつの間にか友人達も含め居なくなっていた...


隣の友人も帰ろうと言って来たので、私達も修練場を後にする...帰りにムーンバックスで友人が今日の練習試合の事を熱弁に語っていたが、私は適当に相槌を打ちつつも別の事で頭が一杯になっていた...




今更ながら思う...城二君との婚約破棄は、正しい選択だったのだろうか?



















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