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第15話 新たなるクズ登場


土日を利用し俺は天草先輩に連れられ真白を伴い天草先輩の実家がある沖縄へとやってきていた


目的は天草先輩の恋人役として、因縁深い婚約者と戦う為...


本来であれば、俺の立ち位置は主人公である尊であり、真白の立ち位置はヒロインである藍瑠の勤めるポジションだが俺が話の流れで魔刑部へと入部した為、お鉢が回って来た様だ...



このイベントは物語の本筋のイベントでありながらも、天草先輩のヒロインルートへとつながるイベントでもある


天草先輩の実家に着いた俺は家に通される前に、隣接する道場へと通され今、天草先輩の父親である樹さんに覚悟の程を問われてる...


そして俺の出した答えは...


「勿論です、小百合さんは俺が守ります!」


「有難う...城二君...」


横で今にも泣きそうな表情を見せる天草先輩...俺から断られるんじゃないかと不安で一杯だったのだろう


俺の望む所は主人公の尊が導く平和な世界の実現だが、それと同じくらいヒロイン達には幸せに生きてもらいたい


だからこの場で俺が引く理由は無い...ただ俺が尊の代わりになれるのか?


「心配要りません、俺に任せて下さい」


そんな自身の不安も一緒に吹き飛ばす様に先輩に対し力強く微笑むと、先輩はそっと目元の涙を拭ってゆっくりと頷く...しかし...


「儂は未だ北野君を、小百合の恋人として奴への挑戦者には認めてはおらぬぞ」


「ちょっと、父さん約束がちがうよボクがこの人ならと認めた男の子を連れて来いって話だっただろ?!」


しかし、樹さんの表情は相変わらず険しく、俺の事を鋭く睨みつけたままだ


「わかりました、では僕が小百合さんの恋人として婚約者に挑む資格が有るかを証明すれば宜しいんですね?」


俺の言葉に少し眉を動かしたが再び鋭く睨み付ける


「その言葉、武道家の前で口にする事の意味は解ってるのか?北野 城二君」


「勿論です、僕もあまり時間をかける訳に行かないので、こういうスタイルの方が琉球の荒熊にはご理解いただけると思いまして」


俺は其の場を立ち上がると、上着を脱いで道場の真ん中まで移動し神棚と樹さんへと頭を下げ、準備の為の柔軟を始める


「ほう...一応の礼は知っておるのか...」


「まぁ昔少しかじっていたもので...」


いやこれは、城二の話では無く譲二の話だ...友達の影響で小学生から高校までは極真空手を習っていた


ただ所詮は素人付け焼刃のお遊び程度...琉球の荒熊に通用する訳は無い


「神憑依しても?」


「構わん...好きにするがよい」


立ち上がった樹さんは帯の紐を締め直すと俺と同じように神棚に一礼し、俺の待つ道場中央へと頭を下げる


「手加減は出来んから、怪我をしたら病院だけは連れて行くから安心せよ」


「いや、それは俺も同じです、ただ知らない土地ですので病院へはご自身でお願いします」


審判は小百合さんが勤める...真白は何も言わず俺の方をジーと見つめている


俺と向き合った樹さんは正面で立ち会って見ると更に迫力が有る...普通に戦っても勝てる見込みは殆どない


「では、無制限一本勝負‥‥‥始め!!」


振り下ろされた小百合さんの右手を合図に、俺は挨拶代わりに右の回し蹴りを撃ち込む


バシッ!


しかし軽く樹さんにいなされる...では、と左のハイキック...バシッしかし、かなりの余裕をもって樹さんにガードされてしまう...


「次は儂から行くぞ...チェストォ!」


ブオ―――ン


物凄い音と共に打ち出される正拳突きは、大巨漢である樹さんからは想像も出来ない速度で俺の顔面へと迫る...バシッ


両腕をクロスして受けるが、その衝撃はとんでも無くハンマーで殴られた様な衝撃が襲い後方へと吹き飛ぶ


「大口を叩いた割に、大した事が無いな...動きや型はまぁまぁだが打撃力は全然だ...そろそろ神憑依したらどうだ?」


「そうですね...僕ももう少し出来ると思って居たんですが...お言葉に甘えて...白虎ぉぉ!!」


「なっ!?4聖獣の白虎...だと!?」


俺の周りに一瞬竜巻が発生し直ぐに収まる...


「さぁ、仕切り直しと行きましょう...」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・



俺の目の前には膝を付いて蹲る樹さんの姿が有った...


「くっ...ま、まさか聖獣を降ろしていたとは...この儂が手も足も出せん...」


「いや、本来の実力は及ぶべくもありません...神憑依しなければ僕など赤子同然...でも」


「そうだな、アイツも同じく神の力を使って息子を倒したんだ...今回はこっちも同じ条件て訳だ」


俺は黙って頷いた...


(ただ、真実は少し違うんだが...今はまだ言うべきで無いな...)


「それでは早速だが、奴...紅島 顕揚(べにしま けんよう)に話を付けに行こう」



〇————————————



樹さんの運転するワンボックスに乗って訪れたのは同じ那覇市内にある複合施設の入ってる10F建ての大型ビルだ...その1Fに小百合さんの婚約者であり俺の標的でもある紅島 顕揚がジムを構えている


紅島 顕揚:年齢不詳:恐らく20才中頃、180cm、100キロ、総合格闘技である紅島柔術を立ち上げ既に20名以上の門下生を抱える、今沖縄で最も勢いのある格闘技ジムだ


紅島は短く刈り込まれた金髪に城二と同じ様な鋭い目つき、耳元には派手なピアスに全身に派手なタトゥーが...その性格は非情残忍で、序盤に消えた城二の代わりに中盤で最初にヘイトを集めるキャラである


欲しい物はどんな方法でも奪い取る、卑怯も反則も関係ない勝者こそ全て...そんなイカレキャラだ


しかし、その実力は疑いようも無く性格に難は有るが格闘技センスはずば抜けて居る、さらにその上キジムナーという沖縄の土着神の力も操る...まぁこれは置いておこう...


その為、本人はパワーファイターながらキジムナーの隠形系のスキル併せ非常に狡猾で陰湿なファイトスタイルで未だ対外試合では無敗を誇る


小百合の兄である一葉が敗れた理由の一つに、紅島を侮りこの隠形スキルを見破れなかった事も要因の一つとして上げられる


ガチャ


「いやぁぁぁぁぁ!!」


ジムの入り口のドアを開けると、甲高い女性の悲鳴が聞こえて来る


!?


俺達は靴も脱がずにジムの中へと駆け込むと...数名の男性が一人の女性を襲おうとしている所だった


「貴様ぁぁ!!何をしている」


その様子に怒り狂う樹さん


女性は筋トレ用の練習器具に半裸の状態で縛り付けられ今まさに下着を剥ぎ取られ襲われようとしていた


「お、これはこれは義父さんじゃないですかぁ~ゲハハハハハ」


男共の真ん中で、ひと際大柄な短い金髪の筋肉ダルマ...間違いないコイツが紅島だ...


「貴様みたいなクズに義父さん等と呼ばれる筋合いはないわ!早くその女性を解放しろ、この外道が!」


紅島はヤレヤレと言った身振りで周りの男共を下がらせると、おもむろに下着を脱がされかけている女性の胸を掴み揉み出した


「はぁこれは紅島ジムを卒業する為の試験ですよ?この女性は急にジムを辞めたいって言うから、じゃぁジムで練習した成果を俺達に見せて貰おうと思ってこうして試練を与えてるんですよぉ~なぁ――――お前等ぁ?」


「「「顕揚先生の仰る通りです!」」」


余程調教されているのか、ジムの生徒らしきガラの悪そうな連中は顕揚と同じ下卑た笑顔でそう答える


「クズだな...」


「!?これはこれは...我が愛しの婚約者様では無いですかぁ~態々こんな汗臭い場所に来なくて良いのに、言ってくれれば俺が何処へでも愛車のマセラッティーで迎えに行くのにぃ~ゲハハハハ」


紅島は天草先輩を見るなり、さらに醜悪な顔を見せ下品に笑う...


「まぁ少し2Fの事務所で待っててくれ、ちょ――――とこの子に話付けるからよ―――おい...フィアンセ様と義父様に失礼の無い様に応接に案内しとけ...」


「はい!」


ガラの悪そうな生徒の内2名が樹さんと天草先輩の前を塞ぐように立って両手を広げ階段の方へと誘導しようとしていた


「クズの仲間か、どけ儂はアイツに話があるんじゃ」「ボクに触るな!!」


入口付近で揉み合いになってる様子を馬鹿にした様に笑いながら紅島は女性のブラに手をかけ



「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」





一気に...







「おい、その辺にしとけよ...クズ」





俺は紅島の腕を掴んだ




















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