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第16話 負けられない理由



「おい、その辺にしとけよ...クズ」


俺は拘束されて泣き叫ぶ女性のブラを引き千切ろうとする紅島の腕を掴んでそれを阻んだ


「あぁぁん?何だてめぇ――――見ない顔だな、てか誰がクズだぁ?殺されてぇのか?」


紅島は血管を額に浮かび上がらせながら、言葉の通り今にも俺を殺しそうな勢いで睨み付ける


「テメェみたいな、雑魚クズにいちいち名前を名乗るのは面倒なんだが、俺は紳士だからな名乗ってやるよ」


紅島の意識を俺に向けさせる為に出来るだけ煽る様な言葉を選ぶ


「こんな南の島でイキってる雑魚に言っても知らないと思うが、俺は北野 城二って言うんだ」


俺が名乗ると少し驚いた様な表情を見せた紅島...しかしすぐ女性の下着から手を離しもう片方の手で掴んでる俺の腕を強く握る


「へぇ――――お前は北の名家、北野家のクズ息子かぁ~いやぁお前のクズっぷりは日本の端の沖縄まで聞こえて来てて俺達も常々耳にしてるぜぇ――――ゲハハハハ」


北野家の名前は全国でも知れ渡っている、なにせ秘境の個人名義保有数が圧倒的に多いからだ


そこから得られる利益を投資に回し今の莫大な財産を築き上げたのが、先代の祖父と今の当主でる親父だ


「いやいや、恐れ入るねぇ――こんな本土から離れた南の島の無知性の金髪モンキーにまで名前を知って貰えてるとか光栄だな、アハハハハ」


「テメェ...ここは北海道でも本土でもねぇ沖縄だぞ?テメェの家の威光が俺達に通用すると思ってるならその身で後悔する事になっぞ!」


紅島は俺に息が掛かる程顔を近づけ睨みつける...その眼は完全に怒りにかられ血走っていた...


「ん、城二OK」


俺が紅島の注意を引きつけてる間に真白が拘束された女性を解放していたのだ


「な!?テ、テメェ、謀ったな!?」


「だから言っただろ?お前は金髪モンキーだって?」


「殺す!」


紅島は俺の胸倉を掴み絞り上げる...


「紅島!、その辺にしとけ今日はお前に話があって来た」


「ちっ!見てわかんねぇ―のか!今取り込み中だ、コイツをミンチにしてからゆっくり話を聞いてやる!!」


「いい加減にして彼はボクの恋人だ、そして君の対戦相手だ」


俺の胸倉を掴んでる紅島の腕を押える天草先輩...


「はっコイツが?正気か?自分で言うのも変だがコイツは俺以上のクズだぞ?」


「君の見解なんか興味ないよ、でどうなんだい?約束通りボクが高校を卒業する前までに君との対戦相手を用意したんだ返事を聞かせてくれ」


紅島は俺の胸から手を離すと、天草先輩のほうへ向き直り下卑た表情を見せながら舌なめずりをする


「はぁ~どうしよっかなぁ~確か約束でそちらが連れて来た対戦相手と勝負するかは俺にも決定権があったはずだよなぁ――――」


「なっ!?」


天草先輩はまさか断られる事を想定して無かったのか、明らかに動揺をし始める...


だが...


「そうだな、もしお前が俺に勝てたなら北野家の保有する秘境をどれでも好きな所をひとつくれてやる」


「!?」


「なっ!?城二君それは?!」


「おい、ドラ息子今の話嘘じゃねぇよな...ちゃんと後で証文書いて貰うからな?」


紅島は目の色を変えて俺の提案に乗り気になっている、それもそうだ今この国で秘境の価値は計り知れない、北野家は個人でBランク以上の秘境を複数保有している数少ない家、その評価価格は数百億と数千億も言われる...それを取引の材料にされて乗らない様な奴では無い


「勿論だ、こっちとしても小百合さんとの婚約解消に加え金輪際、小百合さんや天草道場と関わらないって言う誓約書を書いて貰わないとだしな、証文の件は問題ない、北野 城二の名で約束してやる」


紅島は悪意の籠った笑みを浮かべ俺のほうへ手を差し出した


「いいねぇ~じゃ交渉成...ん?、さっきからお前の横に居る水色の髪の女はお前の何だ?」


紅島は俺の少し後ろで様子を見ていた真白に目線を向けると俺にそう尋ねて来た


「あぁ彼女は北野家の分家の娘で俺のお世話係として同行してる子だ、それが何だ?」


俺の話しを聞いた紅島は更に下卑た笑みを浮かべ


「いや、報酬を追加だ俺が勝ったらそこの娘も貰おう、俺専属のお世話係りになってもらう色々下の世話をなぁ~キヒヒィ」


「!?なっ、それはダメだ!「分かったそれでいい」!?真白!?お前何を勝手に!?」


真白は俺の言葉を遮り勝手に紅島の申し出を受けてしまった...


いや此れは俺のミスだ、ゲーム内では今の真白の様に藍瑠が紅島に指名をされ愛人になる様に要求されていた...藍瑠本人じゃ無かったらこんな下り発生しないと思っていたのに...完全に俺の読み間違い...あってはならない大ミスだ!


「ヒャッハ―――これは良い、こんな色白の上玉の女、沖縄じゃ中々お目にかかれねぇーぜ、小百合共々そのデカい乳を仲良く可愛がってやんぞぉ?ゲハハハハ」


「ま、真白...俺のせいでお前にまで迷惑を...」


「ん?城二には迷惑掛けられても構わない、私ら親友、それに城二は絶対に勝つから問題ない」


笑顔の親友から向けられる信頼の眼差し...また一つ絶対に負けれない理由が出来てしまった



〇——————————


その後、2Fの事務所で複数の証人のサインも貰いお互いに契約書を取り交わす...


「じゃ、明日はお互いにフェアなファイトをしようぜぇ~ゲハハハハ」


「あぁ、フェアでクリーンなファイトをなぁ~アハハハ」


クズ同士の下卑た笑い声の中、無事?調印が終わり胸糞悪い紅島ジムを後にした俺達は、樹さん行きつけの小料理屋で決機会を開催した...


出される郷土料理はどれも初めて見る...前世でも沖縄には行った事が無くテレビや雑誌で見知ってはいるが口にするのは初めてだ...


「この豚の角煮おいしいすね!?」


「あぁラフテーね」


「ん、これコリコリ、苦いでも玉子うまい」


「ゴーヤチャンプルーだね」


先ほどの紅島との嫌な一件を忘れる位に美味しい沖縄料理を堪能していると...少し遅れて到着した天草先輩のもう一人の兄が到着する


「あぁ――――...君が小百合の連れてきた東京の人か...初めまして..僕は小百合の兄で天草 草次って言うんだ...よろしくね」


「ん、雨宮 真白よろしくする」


「僕は北野 城二です、此方こそよろしくお願いします」


(この人が、次男の草次さんか...)


〇天草 草次 22才 天草家の次男


小百合さんと同じように茶色がかった髪をぶっきらぼうに伸ばしており目元は良く見えない、背は俺と同じ位で180cmは有りそうだが背中がまるまっており小さく感じる、身体の線も細く痩せているというよりガリガリだ...


「草次か...一葉はどうした?声を掛けてくるように言っておいただろ?」


「...兄さんは...何時もの...」


「はぁ――――しょうのない奴だ...」


「.........」


俺はこの場に一葉さんが来ない理由も、草次さんが実際にどんな人なのかも全て知っている...


だが今その事で行動を起こすのは時系列的に問題がある...ここは様子見だ





(すべては明日...)






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