◇那覇市内 天草極限流 道場
俺の不意打ちの一撃で床に倒れた紅島の脇腹を悪役よろしく執拗に蹴り上げダメージを与えてると、紅島は突如として姿を消す...
道場内を見渡し紅島の姿を探す俺と観客達...そして俺は何を思ったか急に床へとうつ伏せる
パシュ
乾いた破裂音がザワザワする観客の喧騒の中で鳴り響くと、絶叫とも言える悲鳴と共に紅島が股間を押えながら前のめりに倒れ込む
紅島は自分の股間を手で押えながら、白目を剥き口から泡を吹き出し痙攣しいる...
「そいつを逃がすなァァ!!!」
俺は観客や審判たちが紅島に気を取られている中、一人観客の方を指さし叫んだ
「!?」
俺に指をさされた観客は頭から黒いパーカーを被ると騒いでる人込みの中をかき分け出口へと向かって逃げ出した
「誰かそいつを捕まえてくれぇぇ!!」
!?
すると俺の呼びかけに答えてくれた誰かが黒いパーカーの不審者を背後から拘束して羽交い絞めにしていた...
ジタバタと暴れる不審者のパーカーを捲ろうとしたら...
「きゃぁぁぁ血よぉぉぉ!!」「先生しっかりぃぃ!!!」
!?
(はぁ?嘘だろ?!流血沙汰になるなんて、このイベントにそんなシーンなかったぞ!?)
俺は拘束された不審者を無視し野次馬の人込みをかき分け、樹さん達が囲っている紅島の近くへとやって来た...奴は真っ赤な血溜まりの中で倒れ意識を失っていた
「これは...嘘だろ...」
紅島は黒い道着を着ている為、どこの箇所から血が噴き出しているのか見当も付かないが紅島本人が下腹部を押えて昏倒してるからその近辺だと思われる
「先輩!!大至急救急車を!!早く急いで!!」
紅島の家族か親戚と連絡を取りたかったが、紅島ジムの連中はアタフタしてるだけで何の役にも立たない...
暫くすると救急隊の人がストレッチャーを押して道場に現れた...
「救急の患者さんはこの方ですか?」
救急隊の人が応急処置をする間に患者である紅島の情報を伝えるが、当然そこまで詳しい訳では無いので取り合えず紅島のスマホを救急隊の人に預け病院へ輸送中に電話をしてみるとの事だった...
赤いパトランプとサイレンの音が遠くなって行くのを確認した俺達は先ほど拘束された不審者の元に集まる
羽交い絞めされ、既に観念しているのか黒いパーカーの不審者は力なく項垂れている...
そして俺は不審者に近寄り
「草次さん...」
不審者を拘束している草次さんにもう拘束する必要は無い事を伝えると、草次さんはゆっくりと慎重に拘束を解いていく...と、不審者はその場にへたり込んだ
!?
不審者は狂った様な目を小百合さんに向けて、自分の右手を小百合さんに向ける...見えない何かを握ったまま...
「させるかぁぁ!!」
俺は咄嗟にその手を手刀で叩く...するとゴトンと何か鈍い音がして床を何かが跳ねる...
「こ、これは?!...拳銃!?」
何も見えなかった物体は床に落ちクルクルと回転しながら徐々に見えてきてサイレンサー付きの自動拳銃が姿を現した
「まさかコイツが...」
樹さん表情に困惑の色が見える...不審者の顔が見えない真白と天草先輩は樹さんの前に出て不審者のパーカーの中を覗き込む...
「!?何でぇ君が...」
「ん?お前あの時の...」
そう、なんと不審者の正体は...ジムで紅島達に襲われていた女性だった...
「貴方が真の黒幕...紅島の背後で今回の事を仕組んだ真犯人...そうですよね?紅島 奈美恵さん」
「「「!?」」」
俺の言葉に一同が驚き、不審者...いや奈美恵は自らそのフードを下ろし全員にその素顔を見せた