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第23話 ギャル女神の陰


〇—————————東光高校 中庭ガーデニング内



金曜は2年1組の当番で俺と天音さんは、無駄にやたら広い東光高校のガーデニングの世話を放課後にしていた


「・・・・てな事が有って、天草先輩と特訓する事になったんだよ」


「へぇ...」


金木犀きんもくせいのガーデンロードの両脇に分かれ軍手を嵌めて雑草をむしってる俺達...


中々の重労働なのと地味な作業で気が滅入りそうなので、何時も以上に天音さんに話しかけてみるが...


「うん...城二っち頑張ってるんだ...」


振り返ると天音さんはスカートにジャージを履いた姿で座り込んで黙々と雑草と向き合い処理していた


いっけん会話は成立しているが、天音さんが此方を振り返る素振りは無い、何より何時もの向日葵の様な元気が無い...


「天音さん何か有ったの?困り事?」


俺がそう尋ねると


「あぁ~うん、何でも無いよ―――うんゴメンね少し疲れちゃったのかな?ア、アハハ...」


ダメだ天音さんに関しては細かい知識が何も無い...今彼女が何に困ってるのかさえ分からない


だが、何故か今天音さんが何かに悩んで苦しんでいる事だけはハッキリと判る...本当に何故なんだろう?



譲二の記憶を辿ると天音さんについての知識は、魔東99ユーザーからの強い要望に応える形で追加ダウンロードコンテンツとして天音の恋愛ルートをリリースする事になって、ロードマップが完成しいざルートシナリオ作成、音源、映像の開発に取り掛かると言った矢先に親会社からの急な開発中止連絡...そこまでの知識しか俺には無い


その時俺は、既に別ゲームの開発陣に引き抜かれおり魔東99の追加パッケージについては、俺の部下が作成し完成したシナリオを元に俺が評価し細かい修正点を指示するという手筈だったのだが、俺の所に完成したシナリオが降りてくる前に企画自体がボツった。


俺がこの世界で唯一自信の持てるアイデンティティが、この世界の知識だったのに、俺の事を笑顔で何時も助けてくれてる天音さんの助けに...救いにならない事が本当に悔しくて仕方ない...


「あ、そ、そう言えば、天音さんって猫が好きって言ったよね?」


「え?あ、あぁ―――うん、猫ちゃん大好きィ―――」


流石に猫の話題になれば少しだけだが、表情が明るくなった


「もし良かったら、猫カフェの特別ペア招待チケットが有るから天音さん誰か誘って行っておいでよ、ドリンクも1杯までなら無料だし」


俺は音田さんと山吹さんから「レポートが無事に完成して提出出来たよ♪城二君ありがと~」とお礼に貰った猫カフェの無料チケットを天音さんに差し出す


「え?此処って最近、星女(星城女子大)の近くにオープンした、女子に人気の話題の猫カフェじゃない!?良いの?貰っても?」


「うん、天音さんには何時も助けて貰ってるし、せめてものお礼だよ」


天音さんは目をキラキラさせてチケットを受け取ると...


「城二っちは猫カフェ行きたくないの?折角の招待券なのにぃ」


「え?いや、天音さんが誘いたい人を誘って行けば良いよ、正直貰い物だし変な遠慮はしないで」


天音さんはチケットを目の前で握りしめ俺の方をジィ―と見つめ


「私が誘いたい人で良いんだよね?」


「え?あ?うん」






「じゃ、城二っち明日、一緒に行こっか♪☆」


「うん、解かった...って!?エェェェ!?俺ぇ!?何でぇ―――!?」


「えぇ―――?何でぇ―――?って城二っちが誘いたい人誘って良いっていったんじゃん~☆」


天音さんは顔の横でヒラヒラとチケットを揺らして悪戯っぽく俺に微笑む


「いや...ほら天音さんは友達も多いし、翠さんとも最近前より仲良いみたいだし...藤堂だって...」


「んもうっ!ウダウダ言わない!男なら一度言った事は曲げないのぉ!」


「わ、解ったよ、解ったからチケットで頭を叩かないでぇ―――」


思いもかけず、明日の土曜は天音さんと猫カフェに行くことになった...すまんギャル女神を称えるクラスの皆...ただでさえ疎まれ恨まれてるのに、こんな事がクラスにバレたら更にヘイトを集める事になるな...



だが、先ほど迄の天音さんの沈んだ様子が気になるし、なんとか彼女の力になりたい...


これは解決の手掛かりを掴めるかも知れない


俺は天音さんと草むしりをしながら明日の予定を決めるのだった...




〇—————————翌日の土曜日



天音さんと待ち合わせの約束したのは、星城女子大の最寄り駅前のベンチだ


俺は真白とのデート?での反省を生かし、普通に着れるファッションを購入して何とか外見だげは取り繕っていた...


紺色のシャツに、洋楽の歌手の顔がプリントされた白いTシャツ、紺色のジーンズにスニーカーまぁ妥当な組み合わせの服だろう


スマホを取り出し時間を確認すると、約束の時間までまだ30分以上有る


ピコン♪


メッセージが同時に2件入る


《真白:今度私とも猫カフェ》


《小百合:城二君は猫が好きなの?ボクも好きなん     》


真白とは昨日電話でのやり取りで、今日天音さんと猫カフェに行く事を話してあった


本当は一緒に来て欲しかったんだが、家の用事で行けないとの事で次一緒に行く約束を取り付けた


天草先輩は、神衣の為の特訓について色々相談したいから土曜の都合をメッセージで訪ねられたので、正直に天音さんと猫カフェに行く事をメッセージで返信すると既読にはなったが昨晩の内には返信が無かった


そして今返信が来たのだが、真白はともかく小百合さんのメッセージが中途半端で不自然なスペースが入ってるのが気になり返信を送ると...


《城二:天草先輩も猫がお好きなんですね、今日行って見て良ければ猫カフェご招待しますよ?》


《小百合:うん!ボク猫大好き!絶対に行くよ!》直ぐに返信が来て猫がパンチしてるスタンプが送られてきた


天草先輩のスタンプから見ても本当に猫が好きなんだろう、今度、魔刑部の皆で来るのも良いかも知れないな...


スマホのメッセージを確認してると、背後から聞き覚えの有る声が...


「ねぇ――君メッチャイケてるね、高校生?この辺だと東光高校?」


「マジ俺好みだわぁ―――俺達大学生なんだけど此れから一緒にカラオケ行かない?絶対楽しませるからさぁ!なぁ良いだろ?」


「ちょっマジウッザッ、アタイ人待ってるって言ってんじゃん、つかマジナンパとか間に合ってるんでぇ~」






はぁ――――待ち人の女の子に...何処かで見た事のあるチャラい大学生...


恋愛ゲームのお約束に2度目の御挨拶を...










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