〇—————————星城女子大 駅前のターミナル横待合ベンチ付近
俺はスマホのメッセージ歴を確認しながら天音さんの到着を待っていると、背後から聞き覚えの有る声が...
「ねぇ――君メッチャイケてるね、高校生?この辺だと東光高校?」
「マジ俺好みだわぁ―――俺達大学生なんだけど此れから一緒にカラオケ行かない?絶対楽しませるからさぁ!なぁ良いだろ?」
「ちょっマジウッザッ、アタイ人待ってるって言ってんじゃん、つかマジナンパとか間に合ってるんでぇ~」
はぁ――――待ち人の女の子に...何処かで見た事のあるチャラい大学生...
俺は心底、このお約束展開に呆れ深い溜息を吐き、ギャル女神救出へと向かおうとした...が
「なぁ君、東光高校生なんだろ?北野 城二ってしってるよね?俺、城二の知り合いなんだわぁ~」
「え?城二っちの知り合いなん?」
「おっ?君も城二の事しってる系?いやぁ俺達アイツにめっちゃ頼りにされてる兄貴分でさぁ」
「マジ!?あの城二っちに頼られるとか凄いじゃん!!」
なんか話の流れがおかしくなって来たな...つか天音さん自分の目と耳と心を信じるって俺に言ったじゃん...ちょっと信じてるし...
「そうなんだよ~つか、アイツの知り合いなら解んじゃない?大人しく俺達の言う事聞いて付いて来た方が賢いって...ねぇ」
「はぁ?何それ、城二っちとお兄さん等が知り合いだったら、何でアタシがアンタらに付いてかなきゃならないわけ?」
流石に雰囲気で怪しいと感じたのか、天音さんは2人の金髪チャラ大学生を睨みつける
「おい、ギャル姉ちゃんよ、そんなチャラい恰好しててさ、相当男を喰ってんだろ?俺達にも少し位良い思いさせてくれよ、なぁ」
「キッショ!舐めないでくれる?私は好きでこの格好してんだし、別にアンタらに見て欲しい訳じゃねぇし、アタシの事を見つけてくれる男の子はちゃんと居るし、解ったらとっとと消えてくんない?」
「あぁ?優しくしてりゃ調子に乗りやがってぇテメェ...俺らは城二の兄貴分だって意味わかんねぇのか?城二に逆らったらこの街で平和に暮らしていけねぇぞ!テメェは黙って俺達を楽しませりゃ良いんだよ!」
ポンポン
「あぁ!?誰だ今取り込み...ちゅ...う」
「あ~取り込み中でしたかぁ~いやぁ~何か北野 城二の兄貴分とか聞こえて来たんでぇ~」
振り返ったチャラ大学生は顔面が真っ青になっていた
「ちっ...なんだよ今良い...と...ヒィィィ北野ぉぉぉ!!」
バギッ
俺は肩を掴んでいた手に思いっきり力を入れてやった...
「イデェェェエェ肩がぁぁ外れたァァ」
右肩を押え地面を転がるチャラ大学生...もう一人は前みたいに逃げれないでアタフタしている
「で?俺に逆らったらこの街で平和に暮らせない...だっけ?...だったらそれ、今からお前等で実践してやろうか?」
もう一人の胸倉をつかんで至近距離で睨みつける...
「ヒィィィ許して...あ、女...この女を北野君に...」
金髪チャラ男Bは震える指を背後でポカーンとしてる天音さんに向ける
「この女だぁあ?...」
俺はチャラ男Bを突き飛ばすと天音さんの腰を抱き寄せ「キャッ!ちょっ城二っち?!」
「この女はハナから俺の女だ...テメェら俺の女に手を出したら...前に言ったよな?二人仲良く今晩の東京湾に沈みたいか?」
「ヒィィィ」「嫌ぁぁァァ肩イデェェ」
チャラ男大学生との2度目の御対面は僅か5分で終了した...肩の関節なんか外してねぇしな...大げさな奴
「大丈夫だったかい?天音さん」
俺は天音さんをベンチに座らせ近くの自販機で紅茶を買ってきて手渡した...
「やだぁこれアタシの好きな「午前の紅茶」じゃん、サンキュ~城二っち~」
「アハハ、これからカフェに行くのに飲み物はどうかと思ったけど、喉乾いてると思ってね...」
「大丈夫!午前の紅茶は別腹だしぃ―――それよか城二っちさっきはカッコよかったよ~前にも同じような事したんじゃない~?マシロンかな?やるなぁ~コノコノ~」
天音さんは空いてる方の手で俺の脇に軽くパンチをしてくる
「ア、アハハハ...まぁ悪名もこういう所では役に立つしね」
「よしっと!ほい」
天音さんはスクっと立ち上がり俺の方へ手を差し出す
「?はい握手?」
「ぷっアハハハ城二っちマジイミフ~握手じゃないよぉ~ってか手が逆ぅ~」
天音さんは俺の左手を握って...
「さぁ!猫ちゃんに会いにいこう――――!おぉ―――!」
こうして天音さんと手を繋ぎ、大勢の人が行き交う駅前から目的地へ向かって歩き出した...
「あ、あの、遅くなったけど天音さん、今日も素敵な恰好だね流石センス抜群だよ」
天音さんは、黄色いフェルト生地で青とピンクのラインの入ったアウターに、薄ピンク色のインナー、白いジーンズ生地のホットパンツを履いて足元はニーハイなソックスとお洒落な厚底スニーカーで
まさにギャル女神と呼ぶに相応しい着こなしだ
ハーフアップにした金髪ピンクメッシュの髪型にカチューシャが良く似合ってる
「あれぇ~?そういうのは最初に見かけた時に言うもんだぞ~」
ニシシシシと隣で笑いながらも、有難うとお礼を言ってくれ楽しそうに俺の隣を歩く
すれ違うカップルやサラリーマン達からの羨望の視線を背中に感じつつ、天音さんと世間話しながら目的のカフェへと向かい
「へぇ―――お洒落な雰囲気ぃ―――写真撮っちゃおぉ――ほら城二っちも―――ピィーチ!」
カシャ
急に店をバックに天音さんに肩を組まれ顔を密着した状態で自撮りされてしまった...
「猫カフェMATATABⅠか...聞いた事ないな...」
「えぇ~つい最近になってオープンして、女の子の中でちょっとバズってんだよぉ~」
「へぇ―――」
「猫好きの現役星女学生が起業したお店だって、話題でぇ何でも店内パネルのネコちゃんの写真がめっちゃ可愛くて、その猫ちゃんが凄い人気なんだってぇ~」
「でも、幻のネコちゃんで中々お店に出てこないぃ―――って都市伝説になってるんだよぉ~」
天音さんの話を聞いて、なんだか店のドアを開けるのに躊躇してしまう俺が居るのだった...。