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第29話 藤堂家へ


〇2年1組教室



俺は授業を受けながら前の方の空いてる2つの席に視線を向ける...


あの日、天音さんが初めて参加した魔刑部の部活...先輩達との修練も笑顔で楽しそうにこなしていた天音さん


だが...


今日で4日目...天音さんは火曜日以降学校に姿を見せなくなった、それと同じく藤堂も...


皆川先生の話によると一応家の方からは学校に体調不良だと連絡は入っているが...


「起立、礼」「「「有難う御座いました」」」


帰りのホームルームが終わり皆川先生がバインダーを手に持ち教室から出て行くと、みんな口々に放課後の予定や土日の予定を話だした


「ねぇ城二君の所に何か連絡はあった?」


沈んだ表情の翠さんが俺の席まで来て、そう尋ねてくる


俺は目を閉じゆっくりと首を横に振る


「天音さんだけじゃ無く藤堂からも連絡が無い...」


「そこまで体調が悪いのかな?心配...」


「藤堂は健康だけが取り柄だと思っていたんだがな...」


「ちょっ葛西君失礼でしょ!」


翠さんに咎められバツが悪そうに身体を小さくして落ち込む葛西君


「二人の事は俺の方でも確認してみるよ...ただ今の俺じゃ実家の力は使えないから期待はしないでね」


「「......」」


二人はお互いに顔を見合わせ気まずそうな表情を見せる...


・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・



そう、あれは4日前、丁度天音さんと藤堂が学校に来なくなった日にクラスの連中が例の如く噂で盛り上がっていた


「ねぇ聞いた?3組の北野君と宮下さん婚約したんだって」


「聞いた聞いた、城二君との婚約解消って、想い人の尊君と一緒になりたいからだったって話でしょ?」


「うんうん、確かに尊君なら納得だよ、私が宮下さんの立場でも尊君の方が良いって思っちゃう」


「それに、この間の写真...あれ学校側は合成写真の悪戯って公式に見解を公表して掲示板から削除したけど、殆どの生徒が「そんな訳ない」って思ってるもんね」


「うんうん、あれが実家にバレて城二君は家督相続から外されたって噂だしね」


「いい気味だよ、今後は家柄マウント取られなくてザマァって感じぃ」



学校内で流れる噂を当然耳にしてる翠さんと葛西君は申し訳なさそうに俯いてしまった


「自虐ネタだよ、二人ともそんな申し訳無さそうにしないで、今の俺に出来るだけの事はするから」


「うん...城二君も無理しないで...トラちゃん城二君の事宜しくね」


『眼鏡娘、城二に無茶するな、はフラグ?と言うのか?藪蛇と言うやつだ』


「で、でも...」


「翠?誰と話してるの?」


葛西君にはトラの声は聞こえない...翠さんは葛西君の問いかけに敢えて答えず軽く頭を下げ自分の席へと戻って荷物を片付けだした


葛西君は首を傾げながらも、翠さんの後について自分の席で荷物をかたづける為もどって行った


その後いつも通り部活に迎えに来た天草先輩と真白と一緒に、部活に向う...


・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・


「城二どうした?悩みか?」


俺との併せを終え一息ついてる時に真白から声を掛けられた


「え?あ、あぁ天音さんと藤堂が今週学校に来てなくてな...」


「ん、天音にネズミ子のスタンプ送ったけど返事は無い」


真白にも返事無しか...本当に体調が悪いだけなのか?


「藤堂の方もメッセージが既読にもならない」


「金髪猿は知らぬ」


真白は俺をボコボコにした藤堂と葛西に未だにわだかまっている様だ...あの時、皆川先生が真白を全力で抑え込んで無かったら二人を半殺しにしていたかも知れないと、後で翠さんからこっそりと聞かされた


「まぁ翠さんや葛西も心配してるしな、俺の方で様子を確認してみるよ」


「ん、私も行こうか?」


「いや、体調が悪いって言ってるのに大勢で押しかけたら不味いだろ、俺も家の人にでも話を聞いてみるよ」


「ん、分かった...でも困った事が有れば何時でも言うがいい」


「フフフ了解だ...親友」


俺と真白は隣同士で拳を軽く合わせる



〇―――――――――放課後...藤堂流棒術道場前


俺は「藤堂流棒術道場」と書かれた、看板の横にある大きな両開きの門の前に立ち呼び鈴を鳴らし、名乗った上で今中から人が出てくるのを待っている


ギィィィ


木の軋む音がして、中から中肉中背の道着を身に着けた中年男性が現れる...


「君が北野君か、何時ぞやは愚息が迷惑を掛けたな、私からも謝罪させてもらう」


そう言うと男性は俺に向って頭を下げた


「で?...息子に何か用かね?」


どうやらこの人は藤堂の父親の様だ、俺の事を上から下まで品定めする様に視線を動かしながら不機嫌そうにそう尋ねる


「はい、藤堂君とは学校で仲良くさせてもらってるんですが、ここ数日体調不良でお休みされてるんで様子を伺いに」


「時哉と仲良く...な...もしそれが本当なら息子は人を見る目が無いな」


(はぁ此処でも敵意を向けられるのか...)


「藤堂君の見る目がどうかと言う話は、他人がどうこう言う話では無いと思いますが?」


「他人?私はアレの父親だ、他人は君だろ?」


「確かに僕は他人です、でも本人以外は全て他人ですよ自分の目で見た物だけが自分にとっての世界の全てです、幾ら肉親だからといって時哉君の見た物を全て理解するのは無理だと思いますよ」


俺の言葉に眉をビクつかせイライラしてる様だ


「どうやら頭は回る様だ...ついでに舌もな...その良く回る舌で時哉の事も丸め込んだのかな?」


「藤堂さんが僕の事をどう思おうと構いません、もし時哉君に僕との交友を止める様に言うなら止めはしません、その程度で破たんする友誼ならそれまでです」


「...言ったな」


「だけど、時哉君が僕に手を差し出してくれてるのに、それを振り払う手は僕には有りません、どんな事をしてもその手を必ず握り取ります」


「......」


「すまない...君の事を噂と思い込みで色眼鏡で見ていたな...許して欲しい」


どうやら時哉の父親は俺の事を半信半疑で見極めていた様だ


「改めて自己紹介させて欲しい、私は時哉の父で高虎と言う、北野君先ほどは失礼な態度を取ってしまい本当に申し訳ない」


「いえ...慣れてるので気にしないでください」


「そうか...君が学校に口添えしてくれて時哉の停学が取り消しになったとは聞いていたが、君の噂は私の耳にも聞こえててね...だが人の噂などあてにならんな...先ほどの君の言葉私の胸にも響いたよ」


初対面の時の態度は正直腹が立ったが、ちゃんと自分の目で耳で心で感じた事を正直に口にして謝罪出来る大人である事に、純粋に敬意を覚えた


「いえ、僕も自分の今までの行いに思う所はありますので...それで最初の話ですが、時哉君の体調は如何ですか?」


そう尋ねると高虎さんは少し気まずそうに顔を背け...


「此処だけの話だがちょっとアイツと喧嘩になってな...そのまま出てたまま帰って来てないんだ...情けない父親で済まない、本来なら私に君の事を非難する資格なんか無いんだ」


「そ、それより...もう4日ですよ!?警察には!?」


「もちろん警察にも届けたよ...私も彼方此方に聞いて回ってるんだが...」


(時夜が家出して行方不明?...4日も!?一体何処に...?)


「差支え無ければ、喧嘩になった理由を聞かせてもらって宜しいですか?」


落ち込んでいる高虎さんに理由を尋ねると、言いにくそうにしていたが渋々答えてくれた


「月曜だったか、いつもより道して夕方遅くに帰って来てた時哉が珍しく早く帰って来てな...早く帰って来たなら稽古をつけてやるから道場に顔を出すように言ったら」


『俺は、こんな古臭い棒術なんかに割く時間は無いんだ...もっと強い力を...アイツを超える力を...だから放っておいてくれ!!』


『何だと貴様ぁぁ我が藤堂流棒術を、「なんか」と言うたか!!』


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


「で、言い争いになって思わず手が出てしまったと...」


「あぁ...大人気無かったとは思う...だがあの時は私もカッとなってしまってね...」


「それは...しかし、藤堂の言っていたアイツを超える力...と言うのが気になりますね」


高虎さんは、落ち込んだ様子で俺に軽く頭を下げ


「君たちにも心配をかけて申し訳ない...時哉が見つかれば必ず君に連絡させる...私も今から思い当たる所を探して回ろうと思う」


「解りました...僕も今から池上さんの所に行ってみようと思ってるので、時哉君と仲の良さそうな人を尋ねてみます」


「すまない...私も真っ先に池上さんのお宅に尋ねてみたが、天音ちゃんは本当に体調不良だと聞いてる...無理はさせないであげて欲しい」


「解りました頭に入れときます...それじゃ僕の方でも探してみますので高虎さんもご無理なさらず」


俺はそう告げ頭を下げると、高虎さんも頭を下げ門は閉じられた...


(藤堂...一体何処へ...こんな展開、魔都東京1999では無かったから全く予想が立たない、取り合えず高虎さんに言ったように天音さんなら何か判るかもそれないな...)


おれは藤堂の事が気にはなっていたが、取り合えず天音さんの話を聞く為にも藤堂の家の数軒先にある池上家を目指した...







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