〇池上家 天音の部屋
神域に囚われている天音さんを救い出す為、玄武の修練場で真白に行った時と同じく神視の同機を試みる
「これから天音さんと神視の同機をします」
二度目だが上手く行ってくれよ...
『城二儂も此処で補助しよう、聖獣を開放しろ』
「...分かった天音の家の人を威圧する様な事はするなよ?」
「北野様?だれと話しているのですか?」
音羽さんは怪訝な表情で俺を見つめていた...
「大丈夫です、僕も神を降ろさなきゃ天音さんを捉えてる上位神、アメノウズメを抑え込めないので」
「あ、アメノウズメ!?娘がそんな上位神に!?」
驚く音羽さんを無視し...
「白虎出て来い」
「びゃ?!白虎!?四聖獣!?」
『やれやれ...金髪娘の親は中々に騒々しいのぉ城二黙らせて良いか?』
「やめとけ...それより始めるぞ」
天音さんの額に掛かる髪の毛を手でどかし、ギュッと目を固く瞑ると、自分の額を天音の額にくっ付け意識を集中する...
フゥ――――深く息を吐きだし集中する...
「くっ!?」
耳の奥の鼓膜が激しく痛み出し、瞑っていた目の奥がヒリヒリと痛み出す
!?
目を開けると、周囲を竹林に囲まれ色鮮やかな花々が咲き誇る草原の中に能の舞台がポツンと建っておりその中央には笹の葉を手に妖艶な舞を舞う美しい女神が居た...
「あれが...アメノウズメ...!?天音さんは!?居た!!」
天音さんは部隊袖でアメノウズメの舞に見とれている...あの目...なんだか真白の流星眼に...
「いや!?今は其れ処では、天音さ――――ん!!」
「答えてくれ天音さ――――ん!!」
【なんじゃ、騒々しい...妾の美しき舞を妨げるなどと、不遜である】
笹の枝を手に舞いを舞っていたアメノウズメが手を止め俺の方へ視線を向けてくる
「貴方がアメノウズメか...舞を邪魔したのは詫びるが貴方が舞うのは人々に喜びをもたらす時や荒魂を鎮める時だと聞いたが?」
【ほう...中々の博識じゃな、じゃが神域の中で妾が如何様に舞おうと妾の勝手...違うか?】
「確かに勝手だが、天音さんを...その子を巻き込むのは違うと思うがな」
【天音...この小娘の事か...この娘は妾の依り代に選ばれたのじゃ】
アメノウズメは顔に余裕の笑みを見せながら天音さんの方を向く
「依り代...つまり貴方は天音さんと契約する訳では無く取り込もうと...そう言う事ですか?」
【貴様ら人間の見識に興味は無い...それより光栄に思うが良い、舞と歌の美の女神である妾に選ばれしかの娘は此れからあらゆる者を魅了する美の化身となろう】
俺の言葉に興味を示す訳でもなく、自分の語る美について酔いしれ語るアメノウズメ
「それこそ俺には興味無いな...女性の魅力とは見た目の美しさだけでは無い、その内面からあふれ出る物...ワリィが俺は貴方にそれを感じない」
俺の言葉にアメノウズメから怒りの感情が見て取れた...和魂であるアメノウズメが、一瞬だけ荒魂の側面を見せた
(これは...使えるな...)
人知を超えた存在である神が俺の言葉に感情が揺れている...和魂から荒魂へと...
「見た目だけの美しさを論じるのは、永遠の命を持つ神の論法だな...それを唯一の美の価値観と決めつけるのは視野が狭いと思うがな?」
【言うでは無いか...人間の小僧が聖獣と契約してるからと、気を大きく持ち過ぎじゃの】
流石にバレているな...確かにアメノウズメと白虎は神格で言えば同等の上位神、狛狗神やキジムナーの時の様には行かない...だが
「白虎の事か?他の神の神域に別の神が許可なく入れないのは、俺でも知ってるぞ?だがその契約者が中に居ればその力を行使する事は出来る」
【!?そんな話、聞いた事ないわ、神たる妾を謀るな】
よし、上手く乗って来た
「なら試して見るか?...風の型...風の結界」
神域の外で発動していた白虎の風スキルとギフトしてもらうと、俺は手を天音さんの方へ翳し風の防御スキルを天音さんに施す
【アハハ、何をしておる、自分に結界を使わず依り代に使うなど...賢しい小僧と思っておったが買いかぶりじゃな】
これで再びギフト迄に10分はチャージタイムが必要だ...しかし
「そうか?どう思う?天音さん」
【!?】
「にゃぁぁ?城二っちどうして此処に?てかここ何処?」
アメノウズメの魅了から解放された天音さんは周囲をキョロキョロしながら何時もの調子で間の抜けた声を上げる
【貴様ぁ、娘に結界を張って妾の魅了を妨害したな!】
さらにアメノウズメの感情を揺さぶり時間を稼ぐ...
「ご明察...で、此処からアメノウズメ様に御相談なんだが...先程貴方に示した見た目だけじゃ無い美しさってヤツをこの場で証明したいんだが、どうかな?」
【何を言うかと思えば...そんな物どうやって証明する?】
アメノウズメの興味を引くことに成功した...
俺は天音さんに視線を移す
「??ん?」
天音さんは状況が呑み込めて無いのか自分の方を指さし首を傾げている
「心の美しさを顕現させる方法...活け花だ」