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第34話 かの者、禍つ風と怨嗟を纏い現るる

〇池上家 正面入り口 勝手口


俺を見送りに来てくれた天音さんは、ここ数日間寝たきりで何も口にしてなかった事もありふら付きながら倒れそうになった


俺は咄嗟に天音さんを抱きとめる...


天音さんは立ち上がろうとしていて、俺の背後の何かに気付いた様に一点を見つめている...



俺は天音さんの視線の先を確認する為、背後を振り返ると


「と、藤堂・・・・」


そこに立っていたのはボロボロの道着に少しだけ伸びた金髪の藤堂だった


「藤堂!?お前今まで一体何処に、親父さんも...いやクラスの皆も心配してるぞ!」


「...」


街灯に照らし出された藤堂の表情は見て取れない...しかし何時もの様子では無い


「ちょっ!?時哉?アンタこんな所で何してんのよ!」


「うるせぇぇぇぇ!!」


「「!?」」


天音さんの声かけに、怒声を上げる藤堂...気のせいか周囲の空気がビリビリとひり付く


「...やはり...ヤツの言う通り...のか...」


藤堂は何か口にしているが、離れている為良く聞き取れない


「と、藤堂?...」


「アハ、アハハハハ、ア―――――ハハハ...」


藤堂は狂った様に笑いだす


「なっ!?何を笑って...」


「城二...俺はこれでもお前の事、気に入っていたんだぜ?秘境テストの事でもお前には恩が有る...」


「何を...」


「だがな!!!お前の性根はやっぱり、クズ下衆だって事がやっと分かったぜ!雨宮や宮下だけじゃ無く天音まで...女を食い物にしてる貴様は俺が絶対に許さない!!絶対にお前を地獄に叩き落としてやる!!!」


藤堂の眼には、以前にも増して凄まじい憎悪の輝きを放つ


はっ!?


「ちょっ!?ちょっと待て藤堂!!これは違うんだ、俺の話を!」


「こい、サルタヒコ!」


「サルタヒコだと!?...まさかっ!?」


藤堂の足下から風が旋風の様に舞い上がり竜巻と化し藤堂の身体を包み込む...


...猿田毘古神、今の俺には視認出来る...あれは木を司る上位神...


藤堂の背後には長い鼻に赤らんだ顔...大きな楓の団扇を手に修道者の様な出で立ちの...伝説の天狗の様な神が立っていた


「俺は力を手に入れた...お前の白虎と同等のな...今はまだ俺の力がサルタヒコの神憑依に耐えれない...だが、近いうちに必ずお前を...せいぜい今のうちに女と楽しんでいれば良いさ」


そう言うと藤堂は俺たちに背を向け街灯の明かりの届かない闇へと消えて行く


「時哉ぁ!待ちなさいよ!!」


『天音...必ずお前をそのクズから助け...』


そう暗闇の奥から藤堂の声が聞こえたが、最後まで聞き取れないまま静寂が周囲を包む


天音さんに肩を貸し、玄関まで連れて行き音羽さんに声を掛け天音さんを託した


音羽さんに介助してもらっている時に天音さんからは藤堂と仲の良い友人の名を聞いてメモをしておいた


土日でゆっくり身体を休めて月曜には元気な姿を見せて欲しいと伝え池上家を後にした


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


〇城二のマンションの部屋


「はい...池上さんの家の前で...はい、そうです...申し訳ありません...はい、僕の方でもあたってみます...はい...失礼します」


スマホをベッドに放り投げ、倒れ込む様にベッドの上で大の字になる


番号を交換していた、時哉の父である高虎さんと池上家の前で時哉と出会った事を伝えてた


だが内容までは伝えれてない...これは俺と藤堂の問題だ


『だが、近いうちに必ずお前を...』


藤堂は近い内に必ず俺の前に現れる...だがその時俺は...



・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・



その翌日の土曜日...俺は天音さんから教えて貰った藤堂と仲の良かったとされる人達を訪ねていた


「そうですか...急に押しかけてしまって申し訳ありません」


これで天音さんに聞いた人は全部尋ねた、が...全員が時哉と連絡を試みるも音沙汰が無いと言う


「あ、あぁ...お前、北野 城二だよな?...何で時哉の事を探してんだ?」


「いえ、藤堂君とはクラスメートなんですがここ最近学校に来なくて...家にも帰ってないみたいで」


「たかがクラスメートが?時哉を探してんの?お前変わってんな...俺の聞いてる北野 城二は...あ、まっいっか...俺の方でも何か判れば藤堂の親父さんに伝えておくよ」


年上なのだろう藤堂の友人らしき男性は、そう言うと俺に軽く手を振りながら立ち去って行った


ピロロン♪ピロロン♪


(ん?真白?)


「はい、城二です」


『ん、真白』


「おう、どうした?真白は土日で家の行事が有るって言ってなかったか?」


『ん、今まだ途中の移動中...すこし城二に話したい事ある』


「どうした?」


『実は数日前に、国に委託され雨宮家が管理するB級の秘境に隣接する修練場が、誰かに不正に使用された形跡がある』


「え?玄武の?」


『いや、龍脈の通ってるあそこは厳重な結界が施されているから無理だけど、他の修練場はそこまで厳重では無い』


「で、その不正に使用した犯人は分かってるのか?」


『ん、それは未だでも梅姉が責任者で調査してる』


「そっか...貝塚さんが...」確かに貝塚さんは管理者というより諜報員ってイメージだしな...


『それで、監視カメラに少しだけ犯人らしき人影が写ってて、ボロボロの道着に短い金髪の男だったらしい』


「!?そ、それって...」


『ん、もしかしたら金髪猿(藤堂の事)かもしれん』


「...そうか...だが確証が有るわけじゃないんだろ?」


『ん、そうだから梅姉が調査してる』


「解った俺の方でも何か判ったら連絡する...真白も何か判れば教えてくれ」


『ん、それじゃそろそろ到着するから電話切る...また月曜学校で』


「あぁ、有難うな」


・・・・・・・・・・・


真白との通話を終了し近くのベンチに腰を下ろす


(雨宮の修練場に現れた不審者が藤堂なら...B級の秘境...そこで猿田毘古神の神域に至り、神と契約を結んだと考えれば昨晩の藤堂の様子と辻褄が合う...)


だが藤堂が如何に強かろうと今の神視レベルで、上位神と簡単に契約出来るとは思えない...それに単独でB級の秘境を攻略するのは並大抵では無いはず


...誰か他に協力者が?


今の時点では全てが憶測でしかない、何れにしろ藤堂を見つけてからキチンと話を付けなければ

















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