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第35話 覚悟のほどは?


〇2年1組 教室


日曜に真白から話を通してもらって、貝塚さんの調査の手伝いを願い出たが先方から丁重に断られた


だがジッとはしてられない、思い当たる所を探して回ったが藤堂の足取りは掴めなかった


そして翌週の月曜...日曜にあちこち走り回った疲れもあり、朝寝覚めが悪く何時もより遅めに学校に到着する


「あ、お早う~城二っち!金曜はありがとねぇ~」


教室に入るなり天音さんが元気な笑顔で俺に手を振り挨拶してくれた


「おはよう天音さん、もうすっかり元気そうで良かったよ」


「でもさぁ~せっかく痩せたのにご飯メチャメチャ食べちゃって前より体重増えちゃったよ~ピエン」


天音さんは泣き真似をしてお道化て見せる...本当にもうすっかり良いみたいだ


トトトト♪


天音さんは他の友人に断りを入れてから、俺の近くにやって来ると...


(ねぇ城二っち、土日に時哉を探して回ってたんでしょ?アイツの足取りつかめた?)


俺は黙って軽く首を横に振る


「そっか~高虎小父さんの所に昨日私も行ったんだけど、城二っちから電話で聞いたって言ってたし...それに」


「お前等ぁ―――席につけ早いが先に連絡事項を伝える」


皆川先生が何時もより早めに入って来て、HRのチャイムの前に生徒に向ってそう告げると、不満顔の生徒も渋々皆自分の席へと着席する


「池上は今日から出席しているが、藤堂については御両親からの連絡で暫く休学扱いとなった」


ザワザワ...


クラスの中の生徒が俄かに騒ぎ出す...


カンカン!皆川先生は出席簿で教卓を叩き


「静かにしろ!まだ話は終わりではない」


「藤堂は先週の月曜夜から家出して以降で行方が分からないとの事だ、既に警察に届け出てると御両親から伺ってる、そんな中で先週の金曜に藤堂を目撃したとの情報も聞いてる」


(俺達の話だ...高虎さんが学校に伝えたか)


「此れは藤堂のご両親からの依頼でも有る、お前たちの中で藤堂を見かけたり見かけたという情報が有れば、どんな些細な事でも情報提供をお願いしたいとの事だ、もしかしたら何か事件に巻き込まれた可能性も有る下手に関わらないで速やかに学校か警察に届ける様に...以上だ」


藤堂の休学と行方不明という話を受け、クラスは異様な雰囲気のまま午前の授業を終え


〇昼休みの学校屋上


「ん、私のクラスでも金髪猿の話してた」


「そうか、学校中に情報提供を呼び掛けてるのか...これは大事になったな...」


「んとにぃ~時哉のヤツ皆に心配かけてぇ~」


『しかし、サルタヒコとはな...木属性の上位神か...厄介じゃな』


「え?サルタヒコ様ってトラちゃんより強いの?」


『おい、眼鏡娘不敬じゃぞ、儂が山猿の神なんぞに後れを取るわけが無かろうが...儂が言っておるのは城二の事じゃ』


「ん?モグモグ...俺?」


メロンパンにかじり付きながら逆に尋ねる...


『儂と城二はあくまで仮契約、風のスキルを使用する為にはギフトしか無い...しかしチャージタイムが必要になる』


「!?本契約した神憑依なら、チャージタイム無しで使用出来る分俺より有利だと...」


『まぁそういう事だ、憑いてる神が同列の相克にある木属性...となれば...』


「ま、まぁ城二君と藤堂君が争う訳じゃないんだし、そんな心配は要らないよね?」


「「......」」


『...まぁそうじゃな...眼鏡娘の言う通り要らぬ心配だな、忘れるが良い』


『(城二...解っておるな、もうお前は傍観者のままではで居れないぞ)』


(あぁ...解ってる...秘境内で起きた事、沖縄で起きた事件、そして藤堂の件...俺にだってこれがどういう事か位判る...)


「ところで、天音...その眼は?」


真白は天音さんの眼の前に指を突き出しピンク色に輝く天音さんの瞳を指す


「にゃははは...これはぁ~城二っちぃ~マシロンに説明してぇ―――」


天音さんは面倒な説明を俺に丸投げし、あざとい眼を向けてくる...ギャル女神か...ちょい小悪魔と化してるな


「はぁ――――ったく...俺から説明するよ」


俺は真白達に天音さんが神域に囚われていた事、その中で流星眼に覚醒した事、そしてアメノウズメと契約した事をかいつまんで説明した...


説明したんだ...一生懸命...


「ふぁぁぁぁ...ん、昼も終わり」


「ふにゃぁぁぁお腹一杯になると眠いねぇ―――」


「あ、あの...城二君?私はちゃんと聞いてからね、ね?」


「ううううう、有難う翠さん...」


こうして俺の不毛な説明話を唯一真面目に聞いてくれた翠さんに感謝する...


キーンコーンカーンコーン♪


予鈴が昼休みの終了を告げ、俺たちは其々教室へと戻った


〇 放課後  魔刑部修練場


「まだまだ――――」


「にゃぁぁぁ天草パイセン――――」


横の武舞台で天草先輩と天音が裏マントラの併せをしている...でも今の時点では天草先輩の方が実力が上の様で終始、天音さんが四苦八苦している


この様子だと裏マントラの併せの影響で暫くはアメノウズメを降ろせないだろう...だがお陰で天音さんの神視レベルは着実に上がっている様だ


「城二、金髪猿と戦うのか?」


「わからねぇ...だが、もし戦うと言うなら...むざむざと負けるつもりは無い」


「ふふ、中々物騒な話をしてるな」


真白の反対側に九鬼先輩が座り興味深そうに俺の眼を見つめ不敵に笑う


「城二、お前は何故力を求める...」


「はぁ?先輩?なんですか急に」


「藤堂時哉だったか?お前と天音のクラスメートで、天音の幼馴染と聞いてる、それに藤堂流の古流棒術の使い手だとも」


「え、えぇまぁ...それが俺が力を求める話と何か関係が?」


九鬼先輩は思わせぶりに微笑み、俺の横に座り無表情に話を聞いている真白に視線を向け


「城二、私はお前が力を求める理由が不純だと言いたいんだ」


「なっ!?人を傷つけたくない、大事な人を守りたい、その為に力を求める...それの何処が不純なんですか!?」


「それだ」


「は?え?」


「お前の眼は、手は、自分で届く範囲しか捉えて無い」


「それの何が...」


「では藤堂が敵として目の前に立ちはだかったら?城二貴様はどうする?奴はお前の守りたい人間、大事な人間では無いのか?」


「そ、それは...」


『つまり、武者娘の言いたいのは、お前には決定的な覚悟が足りないと言う事じゃ、守りたい人だけ、自分が死なない程度、無駄に人を傷つけたくない、そんなもんは只の言い訳じゃ』


「は?言い訳?聞き捨てならんぞ」


『城二、そろそろ気づいているんだろ?お前は傍観者では無い...全て貴様が中心に動いている、それこそ吉事も凶事も...それこそがメメント・モリ...と、呼ばれた所以ではないのか?』


「俺が...俺は...【全てを飲み込め、滅する者よ】!?」


「だ、誰だ!?」


「ん?何城二」「急に何を言ってる?」『ぐぅぅ...』


九鬼先輩はその場で立ち上がると俺に向け手を差し出す


「城二、私がお前を強くしてやろう...お前を導いてやる、その為に私と特訓をしないか?」


「ん、火トカゲ女、城二は私が特訓する不要だ」


「なぁ真白、お前と城二は一度裏マントラで併せ修行をしたそうじゃないか?雨宮秘蔵の玄武の修練場でって所か?」


「だから何?火トカゲ女に関係ない」


「まぁ別に城二を取って食おうって訳じゃない、私は自分より弱い男に興味無いからな、だが今のコイツを見てると無性にイライラする」


「...城二は努力してる...親友である私が近くで見てた」


「真白、お前のその甘やかしが城二の足枷になってる事に気付いた方が良い」


「はぁ?」


真白は九鬼先輩の顔を怒りの籠った流星眼で睨みつけてる


「お前が城二に対し、頑張ってる城二なら大丈夫と言い続けていたら、コイツは何時自分の殻を破れる?お前が城二の親友だと言うのなら「そんなのじゃダメだ!」とお尻を叩く事も大事なんじゃないか?良いところだけを見て悪い所に目を瞑ってあげるのは優しさでも何でもない...ただ過保護なだけだ」


『...真白、武者娘の言う通りだな、この甘ったれに今必要なのは熱い灸だ』


「...くっ..」


...九鬼先輩とトラの言い分は俺の胸にも深く刺さった...俺は甘えてた、真白にもトラにも...自分の知識にも...それを自分の力の様に過信していたのだ


「お前が、城二を大事に思ってるのは私も知ってる、悪いようにしない私に任せてみないか?」


「...城二...火トカゲ女と修行...城二をお願い」


「よし、決まったな」


「え?いや...俺の意志は?」


「お前の意志は知らん、これは我が魔刑部にとっても必要な事だ、ウインウインと言うやつだ、アハハハハ」


こうして俺は九鬼先輩と特別修行をする事となった...


「では、早速今日の部活終わりからだ」


「ええええええええええええええ」


























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