〇九鬼家個人保有 秘境 管理ランク[B]
海岸沿いにある、あぜ道から少し入った所で九鬼先輩が何やらブツブツと唱えると、今まで見えてなかった施錠された鉄格子の扉が現れる
「ああ、此処はヒノカグツチの神域と繋がる秘境だ、今からお前がこの秘境に挑むのだ...この私とな」
「?!え?何で俺が?」
「お前は、来月の全国魔刑部大会に東光の新人として雨宮、池上と共に出場する事になっている、既にエントリーも抽選も済ませてあるから今更逃げられん」
「!?イヤイヤ、ちょっと待って下さいよ!真白や天音さんはキチンと神との契約もしてて100歩譲って出場するのは解らなくも無いですが、俺と白虎とは仮契約ですよ?強力な風スキルが使えるとは言えチャージが必要なスキル攻撃でどうやって戦えって言うんですか!?」
「下らん...魔刑部大会に参加する者全員が神と契約してる訳では無い、日ごろの自己研鑽の成果を披露する場だ、お前自身も約3ヵ月という短い期間で神視レベルを学年上位グループに食い込める程上げてきたでは無いか?」
確かに、秘境テストで結果を残す為に、ほぼゼロから真白と修練を重ね神の秘薬の効果も有って神視レベルは格段に向上した...だが所詮今が上限一杯...のはずだ一般人の15~20という神視レベルに秘薬効果の+10した所で神視レベル30...何とか上位神まで視認出来るに至ったってレベルだ
つまり、挑める秘境も本来なら管理ランクCが限度って所だ
「お前は独自の観点で神視を数値化して人の限界値を決めてる様だが私はそうは思わない、人の可能性は無限だ努力次第で私や真白を超える神視の域まで到達出来る...特にお前にはその可能性を感じている」
そんな、システムは存在しない...ゲームのレベリングやパラメーターバランスはバトルゲームの肝だ
魔都東京1999において、そのパラメーターバランスには並々ならない神経を使い、緻密な計算と何度と無いテストプレイを経て設定したのを俺は...南原譲二は覚えている...
「信じられない...と、言いたそうな顔をしてるな?だからお前を、この秘境に連れて来た」
「どう言う事ですか?」
「この私が、お前が勝手に作ってる限界と言う奴を壊してやろう」
ブロロロローーー
門の前で九鬼先輩とやり取りしてる間に、此処まで送ってくれたリムジンが何処かに走り去って行った
「ちょっ!?」
「慌てるな、今から4時間後にもう一度、この場に迎えに来る手筈だ...城二、一度だけ私を信じて見ろ」
「・・・・・・・・」
「ここを超えれ無ければ、お前は大事な友人を失う事になるぞ?誰とは言わなくても解かるな?」
「!?藤堂の事ですか!!、先輩は藤堂の事を何か・・・!?」
九鬼先輩は、訪ねようとした俺の口元に手を広げ静かに首を振る...今は何も聞くなと言いたげだ
「分かりました...先輩に従います...その代わり、無事この秘境を踏破した時は藤堂の事を...」
「・・・・約束しよう」
俺は覚悟を決め施錠を解除してる九鬼先輩の背後で、入念にストレッチを行い体を解す...
(本当に神視レベルが俺の限界値30レベルを超えて来る様な事が有るのなら...この世界は俺の作ったゲームの世界とは別の...)
ガチャ
「開いた...行くぞ」
鉄の扉を開き、赤く淡く光る扉の中へと侵入する...この世界に来て2度目の秘境挑戦はランクBという高難易度ミッションであり、ゲーム内の知識が及ばない未知の領域への挑戦となる
〇九鬼家管理秘境 ランクB 第一階層
「私は基本手を貸さないからな...城二お前が一人で対処するんだ」
「分かってますよ...」
第一階層は、一面砂地で砂漠の様なエリアだ...秘境内は別の空間となっている為、空が有り太陽すらそこには存在している...それにしても...
「暑いな...」
既に上着を脱ぎ肩に担いで、あても無い砂丘の山を登っては降り登っては降りを繰り返している、俺の目の前には一向に次の階層への扉は見えて来ない...
「あのぉ———九鬼先輩...まったく次の階層へ向かう為の糸口が見えないのですが...」
九鬼先輩は汗一つかくことなく涼しい顔をして首を横に振る
「なぁ城二、私は最初に言ったはずだ、「手を貸さない」と」
「・・・・とまぁ突き放すばかりでは時間の無駄でも有る...まず、この砂漠には何が見えて何が見えないのか?そこを考えれば糸口は掴めるやも知れぬぞ?」
とんちの様なヒントを出して満足げに頷く九鬼先輩...いや、わかんねーよ!
(何が見える?)
俺は周囲をキョロキョロと見渡すが砂と空と太陽しか視界に入って来ない...
(何が見えない?)
出口?水?木々?...いや違う...この状況でも、無くてはならない物だ...
(ダメだ...何も思いつかない...!?そうだトラに聞いて見よう、って、あれ?)
俺は足元を見る...違和感を感じる
「なんだ?何かが足りない...」
「!?そうだ!、影だ!!影が無い!!」
パチパチパチ♪
「正解だ城二、お前の影は私の影と同化していたのだ、ほれ」
自分の足下に無い影が、九鬼先輩の足下にはちゃんと存在していた...おれは恐る恐るその影に触れると、あたりが光に包まれた...