〇九鬼家個人保有 秘境 管理ランク[B]
〇第四階層...火口地帯
ダンジョンの様な階層だった三階層を抜けると、第二階層と見間違う様な火山地帯が広がる
しかし、そこは出口が見当たらず俺達が侵入した途端、背後の入り口が溶岩石が隆起し塞がれてしまう
「あれ...マグマの海ですか?...」
「あぁ、土童子の秘境をクリアしたお前なら解るだろ?」
「ボス部屋...」
ボソとそう言うと九鬼先輩は黙って頷く...
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・
地面が揺れ出し、周囲にゴーレムが出現した時の様な...いやそれ以上の強い気配を感じる
ドォォォン!
周囲を警戒していると、目の前のマグマの海が上空に垂直に吹き上がり、マグマの柱が出現する
「来るぞ、警戒しろ...あれがこの秘境のボス、
九鬼先輩が一瞬だけ鋭い視線を目の前の柱に向けると、柱は左右にユラユラとウネリだし先輩の言う様に、全長10メートルはゆうに超える巨大な蛇の姿へと変化する
(雰囲気だけで判る...コイツはビックオークなんか比べ物にならない...あの時の偽神と同等、もしくはそれ以上の強敵だ...)
「出し惜しみは無しだぁぁ白虎ぉぉ!神憑依だぁぁ!」
『フフッフ、まぁ良いじゃろ...スキルギフト迄持たせろよ?』
背後に出現した白虎に力強く頷くと、真っ赤に燃え盛るマグマにあって更に赤く輝く2つの眼が俺の方を向き、大きな口を開き向って来た
「くっそぉぉぉ!デカすぎんだよぉぉぉ!」
俺の立っていた場所に口を大きく開けて、頭ごと突っ込んで来る火蛇
ドォォォン!
地面にぶつかった拍子に、マグマが飛び散り俺の衣服に火の粉が降りかかる
「あちぃぃぃ、あち、あちぃぃ燃えてるってぇぇ!!」
引火したシャツを破り脱ぎ捨てて上半身裸になる
ただ避けるだけでも、近距離で花火が爆発したみたいな衝撃だ...白虎の方に視線を向けるがブツブツとスキル詠唱中だ
仮契約でスキルを俺の自由に使用出来ない...白虎のギフトしてくれる風のスキルがどんな物なのか
「白虎ぉぉ、遠距離用のスキルじゃないと無理だぁぁ!」
しかし、俺の言葉に白虎は反応しない...既にギフト詠唱に入っているので途中でキャンセルしてもチャージタイムはキッチリ10分待たされる
「くっそぉぉ!もう少し相手の出方を見てから、神憑依するんだったぁぁぁ!」
今更悔やんでも仕方ない...白虎が遠距離スキルをギフトしてくれるのを期待するしかない
そうしてる間にも、岩場に叩きつけ潰れた頭が復元して行く火蛇...
(2度も失敗出来ない...頭を吹き飛ばしても致命傷にならない、奴の急所は...)
ヒントを求め九鬼先輩の方を見るが、目を閉じ腕を組んで壁にもたれかかっている
(本当に手を貸さないつもりか...良いさ...やってやる!!)
ドォォォォン!
再び俺の方へと突っ込んで来る火蛇
「うぉぉぉぉぉ!!」
今度は全力で走って火の粉の飛び散る範囲から遠ざかる...
「あちぃぃぃ熱ぃぃ」
ジュゥゥゥ・・・・それでも背中には、火の粉が降りかかる...
『待たせたな...城二何時でも行けるぞ...』
「そのまま待機だ!急所が見えない...一撃で仕留めなきゃ」
復元している火蛇の姿を冷静に隅々まで観察する...
(ん?復元して行くときに体の組織が、真ん中から膨らむ様に増えてるな...)
これは体の構成組織自体は復元する能力が無いと言う事を意味している...体の組織が復元するなら全体が盛り上がり復元していくはずだ...つまり...
「奴には脊柱...もしくそれに該当する骨格が存在する...と言う事か」
しかし...あれだけの巨体...脊柱も相当な長さのはず..となれば
「引きずり出すしか無いな...」
俺は再び復元した火蛇の前に立つと今度は此方に突進して来る前に後方へと駆け出す...
ゴォォォォォ!
予想通り、火蛇は白虎や九鬼先輩は眼中に無いみたいだ...一直線に俺に向ってその巨体をマグマの海から乗り出して来る
「はぁはぁ...何が10メートルだよぉぉ20メートルは有るぞぉぉ!くっそぉぉぉ!」
俺の目の前には侵入してきた入り口を塞いでる溶岩石の壁が阻みこれ以上後ろには下がれない...
しかし...
「見えたぁぁぁ!火蛇の尻尾だ!」
マグマから全身を出現させた火蛇の尻尾は、ガラガラ蛇の尻尾の様に少し膨らんでおり淡く輝いている
ゴォォォ
行き場の無くなった俺に向って大きな口を開き、突っ込んで来る火蛇
「今だァァ白虎ぉぉぉ」
『風の型
白虎がギフトしてくれたのは、初期スキルだが風の刃を射出する中距離攻撃スキルだった
左右の掌に白く淡い光の玉が宿る...俺はそのまま火蛇の方へと駆け出した
ドォォォォン!
背後で入り口を塞いだ溶岩石の壁に火蛇が激突した...俺の背後には飛び散るマグマと火の粉
目の前には火蛇の胴体...
「アチィィ————!」
背中にマグマの粒と火の粉が降り注ぎ、皮膚が焼け肉の焼ける匂いがする
しかし、この好機を逃す訳に行かない...おれは火蛇の胴体の横を尻尾に向って全力で駆け
「いっけぇぇぇぇ———!」
左手にギフトされた連鳴の魁風を放つ...掌から撃ちだされたのはソフトボール位の風の塊だ
パシュッ・・・・グチャァ
尻尾に命中した風の玉は、ヒットした箇所を巻き込む様に千切れ飛ばし、尻尾は胴体から切り離された
見立て通り、この尻尾からマグマのエネルギーを吸い上げ身体を復元していた様だ...火蛇は頭部を完全に復元出来ずもたげていた身体は地響きと共に地面へと倒れ込む...
「うぉぉぉ、行ってこいぃぃぃ!超メジャーリーグボール一号だぁぁ!」
尻尾が切断された断面目がけ右手に残った連鳴の魁風を野球のピッチングの要領で思いっきり投げつける
パシュッ・・・・
胴体の丁度中央に吸い込まれる様に撃ち込まれた風の玉はドリルの様に火蛇の身体の中央を打ち抜いて行き
ボッン!
復元しかけた頭部まで到達した風の玉が破裂すると同時に火蛇の身体は粉々に爆散する...
「アチッアチィィィってぇぇぇ!!」
飛び散る肉片に当たらない様に逃げ惑う俺...最後まで恰好が付かない終わり方だ...
「これ...やっぱ最後はこうなるよな...」
目の前には火蛇の尻尾がチョコチョコと蠢いている...
「フゥ――――――――くらえぇぇぇ紅拳!」
尻尾目がけ渾身の紅拳を打ち放つ...紅拳を受けた尻尾はその場で真っ赤な霧となり霧散して消えた
火蛇の尻尾はマグマでは無かった様で、拳に多少火傷したが何とかボスを討伐する事が出来た...
パチパチパチパチ
「見事だ、城二...お前はあの秘境テストの時より確実に強くなっている...」
俺は自分の身体を見まわす...火傷に擦り傷、切り傷は沢山あるが骨折等はしてない...
「九鬼先輩...俺は...?本当に強く...」
「あぁ、お前の神視レベルもお前自身も確実に強くなってる...これはお前が掴んだ力だ」
「強くなれる...俺でも...」
ポンポン...
九鬼先輩は俺の肩を軽く叩く
「いたぁぁぁ、せ、先輩火傷火傷ぉぉ」
「プッすまんすまん、フフフ」
九鬼先輩は悪戯っぽく笑うといつの間にかマグマの海の中に出来た道を指差す
「さぁ、行こうか」
「はい!」
九鬼先輩の後についてボス部屋から先へと進む...
転送宝珠の有る部屋に到着した...俺にとっては嫌な思い出が蘇るが今回は偽神の姿は無い
「さぁ、戻るか」
九鬼先輩が宝珠に手をかざし、宝珠を起動すると魔法陣が足下に輝き出す
?!
「先輩!?」
「!?」
言葉より先に体が動き俺は咄嗟に九鬼先輩を、左手で突き飛ばした・・・・・そして・・
「がぁぁぁぁ俺の左腕がぁぁぁ!!」
「!?城二ぃぃぃ!」
俺の左腕がッ!?