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第40話 神衣の力


〇九鬼家個人保有 秘境 管理ランク[B]




〇第四階層...最終地点 転送宝珠前




九鬼先輩の後についてボス部屋から先へと進む...


程なく俺と九鬼先輩は転送宝珠の有る部屋に到着した...俺にとっては嫌な思い出が蘇るが今回は偽神の姿は無い


「さぁ、戻るか」


九鬼先輩が宝珠に手をかざし、宝珠を起動すると魔法陣が足下に輝き出す


?!


「先輩!?」


「!?」


言葉より先に体が動き咄嗟に九鬼先輩を、左手で突き飛ばした・・・・・そして・・・


「がぁぁぁぁ俺の左腕がぁぁぁ!!」


「!?城二ぃぃぃ!」


光線の様な物が此方に向って飛んで来たのが見え、九鬼先輩に迫っていたので咄嗟に突き飛ばした


が...


見ると俺の左手首から先が消えて無くなり、切断面から鮮血が規則的に噴き出す...


先程の火傷の比じゃない激痛が全身を駆け抜け額に嫌な汗が滴る


「城二!?一体何が!?」


俺の左手首を黒髪を括っていたリボンを解きキツク締め付ける様に絞め止血する


「いでぇぇぇ...はぁはぁはぁ...せ、せんぱい...あ、あれぇ」


俺は顔を転送宝珠部屋の奥へと向けると...


ドッスン...ドッスン...


異形の化物が2体...暗闇から姿を現す...


「なっ?!偽神!?...この私が全く気配を感じなかっただと!?」


異形の偽神の内一体は、人間の様な2足歩行のフォルムをしているが全身は青く腕が3本生えている

そして一番異様なのは、人間の男の様な頭部が丁度大胸筋の辺りに上下がひっくり返った形で付いており眼球は土童子の秘境内で出会った偽神と同じ様に明後日の方を向いていて、狂気の形相だった


もう一体の偽神は、木人の様な木製の人型の身体で、ただの木の棒の頭部には赤く光る眼らしい物が4つ付いている、細い棒の様な身体なのに腕は手先に向って筋肉が異様に発達しておその拳は俺の身体と同じ位の大きさだ...そのくせ2本の脚は細い木の根の様な形状になっている、非常にアンバランスだ


「ぐぃぃぃぃ…トラ...未だかぁぁぁ」


チャージタイム10分は未だ経過してない...俺を守る様に偽神2体と対峙する九鬼先輩...


「城二下がってろ・・・・私が殺る」


「神衣 火之迦具土神」


九鬼先輩が真っ赤な胸当てと肩あて...そして籠手を身に纏い...その手には身の丈にも及ぶ長刀 赤槌が握られている


「神衣九鬼一刀流 火の宗 火喰い鳥」


渾身の横払いの赤槌から炎の鳥が打ち出され木人の偽神が真っ赤な炎に包まれる...圧倒的だった、偽神は悲鳴も叫び声も上げずただ燃え盛る炎の中で蠢いている


しかし、もう一体の青い異形の偽神が胸にある逆さまの頭の口から青白い霧の様な物を吐き出す...


パリッパリッ...


地面や周囲の壁が一瞬にして氷つく...九鬼先輩は流石の動きで一瞬にして危険を察知し氷のブレスの範囲から遠ざかる


「少し厄介だな...」


ガシッ


地面に赤槌を突き刺し、指先に炎を灯す...前に屋上で見た鬼火だ


「九鬼無刀流 火の型 鬼火改、5連」


九鬼先輩の右手の指全てに炎が宿り...その全てを青い異形の偽神へと打ち込む


ドッ・ドッ・ドッ・ドッ・ドッ


一気に5発の炎の玉が着弾し、青い偽神が一瞬怯む...


「城二今だ!脱出しろっ!」


振り返り、完全に発動した転送宝珠の方を指差す九鬼先輩


「くっ...せ、先輩は...?」


左腕を押さえ、なんとか立ち上がり転送の魔法陣へとフラフラと歩いて向かう俺は九鬼先輩の方へと振り返り尋ねる


「心配するな、お前を送り出して偽神を仕留めたら追いかける...邪魔だ早く行け!!」


万全の状態でも役に立てるか分からない相手...片腕が使えないままの今の俺には九鬼先輩の言葉に従うより無かった...それに先ほどの圧倒的な力


万が一にも九鬼先輩が後れを取る様な事は無いはず...


「ぐぅぅ...すいません...先に脱出させて頂きます」


九鬼先輩は俺に返事する事なく、地面に突き刺していた赤槌を再び手に握り地面から引き抜くと、肩当に担ぐ様な構えを取り青い偽神に狙いをつける


しかし...その時


「!?紅拳!!!」


ジュゥゥ———「がっっ!!」


「!?城二!?」


再び九鬼先輩に向って何処からか光る光線が放たれた...咄嗟に右拳に込めた紅拳にて光線の軌道を逸らす...が...


「右手がぁぁぁ...」


左手の様に吹き飛びはしなかったが、右拳はボロボロに傷つき、見るも無残な状態になる


「!?そこに誰かいるな!!誰だ出て来い!!」


先程、光線が放たれた方を睨みながら声を荒げる九鬼先輩...


「ギャハハハ...無様だなぁぁぁ城二ぃぃ...まぁ———た女を垂らし込んだのかぁ?雨宮に天音に、天草先輩に今度は九鬼先輩か?お盛んな事だァァ」


暗闇から現れたのは...


「くっぅぅぅぅ...と、藤堂...何故お前...ここに...」


「藤堂だと!?」


姿を現した藤堂は、緑に淡く輝く胸当てと同じく肩当、そして腰当てを身に纏い、その手には緑に輝く棍が握られていた


「その姿...神衣か...」


「ギャハハハ、ご名答~流石、先輩...お初にお目に掛ける、これが神衣 猿田毘古サルタヒコそしてこれが、神具 樹零じゅれいだ」


痛みと、出血で視界がぼやける...このタイミングで秘境内に突然現れた藤堂


しかも神衣まで身に付けて...


「藤堂...な、何故だ...お前...あんな偽物の写真...」


息も絶え絶えな俺が絞り出すように藤堂に語りかけると...


「だまぁぁれぇぇぇ!!もうお前には騙されねぇぇ、俺はこの目でお前の悪行の数々を確かに見たんだ!お前は雨宮と男女の関係にありながら、天草先輩の弱みを握り、それをネタに強請り部室や教室で何度も強姦してやがった、そして...俺の大事な天音に...あんな事を...テメェの事を信じていたのにぃぃ!お前になら天音をって...いや...」


「お前にすっかり騙されていた俺は、ただの大馬鹿だったって訳だ...お前は、やはり北のクズだった...俺も心おきなくお前を血祭に出来るぜぇ」


おかしい、おかしい、藤堂の眼が明らかに淀んでいて眼球が浅黒く変色している...これは...


「月読の闇スキル...「幻惑...」」


「!?月読だと!?まさか三柱神のあの月読の命か!?」


偽神を牽制しつつ、俺と藤堂の間に割って入ろうと後退してきた九鬼先輩が、俺の言葉に驚きながら聞き直してくる


「はぁ?月読?幻惑?お前の戯言は、もう俺には通用しないぞ!城二、ここがお前の墓場になるんだよ、天音にはやはり俺が必要なんだ...お前なんかじゃない、アイツの隣に居るべきは俺なんだぁぁぁ!!」


俺に怒声を上げた後、藤堂は俯きながらブツブツと何か唱え...


「だから此処で死ね」


「神衣藤堂棒操術 木の宗 破竹の撃はちくのげき


藤堂が手にした神具 樹零を捻り込む様に力強く突き出すと...樹零の先が光を纏い、うねりと共に俺に向って物凄い速度で伸びて向ってきた



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