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第43話 涙する幼馴染



〇都内 九鬼総合病院


俺は一通りの診察を受け特に異常は見当たらないと診断を受けロビーで、九鬼先輩を待っている


思ったより早く診察が終わったので、一応両親に電話で報告をしたが「そうか」と、父からは一言...


電話口の向こうでは母親が動揺してる様な声がしていたが、「きるぞ」と父親からあっさりと電話を切られた


予想通りのやり取りに少し笑えて来た...


そして気を取り直し道代さんに電話をすると


「!?城二様!?何処の病院に居られるのですか!?今からお迎えに行きます!!」


病院名を伝えると、こちらの返事を聞く間も無く電話を切られてしまった...暴走気味なのは相変わらずだ


真白には時間も時間なので、メッセージを送ると...直ぐに電話が折り返して来る


『そうか、一先ず城二が無事だったら良い...城二にもし何かあったら火トカゲ女を...』


「い、いや大丈夫、大丈夫、先輩には凄い助けてもらって...こうして病院まで手配してもらって...」


真白が物騒な話をしだしたので慌てて取り繕う


『わかった、また明日詳しい話聞く、今日はゆっくり休め』


そうして真白との電話を終了して...次に天音さんに...しかし藤堂の事をなんと説明すれば良いか


スマホの発信ボタンを押せず画面と睨めっこしていると


「城二、担当医から聞いた異常が無くてなによりだ」


待合のロビーに座っていると背後から九鬼先輩に声を掛けられた


「あ、有難う御座います...先輩は何処か怪我してませんでしたか?」


九鬼先輩は右腕に巻かれた包帯を見せ二コリと笑って見せた


「フフフ、少し冷気にあてられて低温火傷をしたみたいで、軽傷だが両親が過度に心配してなこの有様さ」


「先輩に大事が無くて何よりです...それで...藤堂は...」


俺の質問に九鬼先輩は無言で首を横に振る


「城二、藤堂の件は既に私らの範疇を超える...藤堂の御父上にご連絡して今面談をしている...後は公的機関とご家族に任せよう」


「そ、そんな...俺は藤堂に何もしてやれないのか...」


そんな俺に厳しい眼を向ける九鬼先輩


「城二、私が雨宮に言った言葉...お前にも言うぞ...甘やかすだけが優しさか?藤堂は誰が見ても超えてはならない一線を超えた、お前の言う様に誰かに操られたとしてても許される様な事では無い、間違った事をした友人を蹴とばし「お前は間違っている」と言ってやるのも友人じゃないのか?」


「それは...確かにそうですね...」


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・


「!?城二様ぁぁぁ!?」


救急用の入り口から道代さんが此方に向って駆け寄って来た...警備のオジサンが白い眼でジロリと睨んでいる


「お、落ち着いて下さい道代さん、電話でも言いかけましたがこの通り僕は無事なんで」


「はぁぁぁぁ良かったァァ」


道代さんは床にヘナヘナとへたり込んだ...


「城二、こうしてお前にも心配してくれる人が居るんだ...その為にも強くならねばな...それと秘境内での事は...内密にな」


俺の肩をポンポンと叩き小声でそう俺に語り掛け、道代さんの元に行き今回の事を頭を下げ謝罪してロビーから出て行った


外を見ると、可憐はリムジンに乗り込み病院を後にしていた


「私達も帰りましょうか、外にタクシーを待たせているんで参りましょう」


道代さんの後についてタクシーに乗り込み家路に着いた、帰りの車中で道代さんから、今回の様な危険な事に巻き込まれどれだけ心配したかを延々と聞かされ終始謝罪しっぱなしだった...


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・


〇翌日の朝の2年1組教室にて...


「おはよぉーーー城二っちーーー」


「あ、お、お早う...天音さん」


(城二っち...昨晩、時哉と出会ったって聞いたけど何かあったの?)


「え?いや...(まずい何て言えば...)」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


天音さんのピンクの流星眼が輝き鋭さが増す...


「城二っち!ちょっと来て!!」


そう言うと俺の腕を取り強引に席から立たせると教室から連れ出し、2Fの端にある備品室に連れ込まれた...


「ねぇ...教えて、本当の事を」


「...」


「アタシ城二っちの事を信用してるよ?それに何も分からないまま、時哉の事ちゃんと向き合えないよ...わたしは城二っちの話を聞いて自分で考えて判断したいの」


天音さんは真剣な表情で俺の事を真っ直ぐ見つめてくる


「わかった...全て話すよ...」


俺は、九鬼先輩と挑んだBランクの秘境で起きた事を全て天音さんに話した...道中の話はそこそこに、藤堂とのやり取りを話をしてる時の天音さんの表情は、時に驚き、時に悲しみ、そして涙を流しながら気丈に怒っていた...


「ごめんね...城二っち...辛かったよね...時哉の事...それにアタシの事も一杯悩んで...本当にゴメン」


天音さんは涙を拭いながら俺に謝罪してくれた


「い、いや...天音さんが謝る事じゃないよ...これは、それに俺、高虎さんに言ったんだ「藤堂が手を差し出してくれる内は、どんな事をしてもその手を握る」って...それがこんな結果になって...俺の方こそ...力が足りなくてゴメン...」


「でも、話してくれてアリガとねー...うん...アタシも自分で考えてみる...時哉の事...ゴメン先に行くね...」


そう言うと、天音さんは少し寂しそうに笑い、先に備品室から出て行った



〇朝の2年1組 HRにて...


「皆に連絡がある...先日皆に協力を頼んだ藤堂の事だ...実は昨日の夜に所在が判明し今は病院に入院している」


ザワザワ...


「それに伴い、5時限目は緊急の職員会議があり全クラス自習となる、帰りのHRも無しだ、それに本日は部活も全面中止とする各自、5時限目の自習が終わり次第速やかに帰宅する様に...それと池上、北野、二人は5時限目以降も教室に残る様に以上だ」


(まず間違いなく藤堂の件だろうな...学校として何か処分を下すのか?)


今回は俺に対しての加害だけじゃなく九鬼先輩にも未遂とは言え危害を加えようとしていたのは明らかだ


それに、家出とは言え警察も動いてる、そして非公式ながら雨宮家の管理している秘境に不正に侵入した疑いも有る、それが事実で真白の両親が被害を届ければ違法侵入として罪に問われる事も十分にあり得るだろう...それにしても...


仮面の男...何者だ?何が狙いなんだ?やはり俺なのか?それとも九鬼先輩?


だが九鬼家が掴んだ情報とは言え、映像などで残ってる訳では無いと言う...証拠も無いとなると公的機関が動くとも思えないし...


〇————放課後、第一会議室


俺たちは20名程度が座れる大きなテーブルが中央にある学校の会議室に通された...


その場には光宗学園長が上座に座り、教頭と皆川先生が左右に座る


反対側には高虎さんがスーツ姿で神妙な表情をして俯き加減に座っている...そして出席してる生徒は九鬼先輩、天草先輩、真白、天音さん、そして俺の5名だ


俺達が着席したのを確認すると皆川先生が立ち上がり進行の挨拶をする...どうやらこの場に居るメンバーで全員の様だ


「皆様、本日はお忙しい中お集まり頂き有難う御座います、藤堂様におかれましては、態々学校までご足労頂き有難う御座います」


「本日お集まり頂いたのは、私が担当する2年1組 藤堂 時哉君の関わた事件についてご報告と関係者の皆様との意見交換の場とさせて頂きます」


「また本日の会話の内容は録音させて頂き、後日警察へ情報提供させて頂く予定ですので予めご了承下さい」


皆川先生は一同を見渡し反対意見が無い事を確認して俺に視線を向ける


「北野、この場に白虎様を呼び出す事は可能か?可能であれば重要な証人となって頂きたいのだが?」


「・・・・・無理ぽいですね...実は昨日の夜から呼びかけてるんですが、返事が無いんです...」


「ん?寅之助はちゃんと城二の中に居るが...確かに力は弱まってるな...」


真白は水色の流星眼を輝かせながら俺の方を見つめそう話す...


「うん...確かにトラちゃん少し苦しそう...」


「「・・・・・・」」


俺と九鬼先輩は何も言わない...


「それでは仕方ないこの場に出席してるメンバーで進めさせて頂きます」


こうして、藤堂の起こした事件についての話し合いが始まった...
























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