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第52話 カラオケで知られるお察しの...

〇東光高校最寄り駅近く スモールエコー パーティカラオケルーム


「たっだいっま――――♪」


「ただいま...」


「あ、おかえりぃーー」「ん、おかえり、どこ行ってた?」


俺と天音さんが部屋に戻ってくると、デンモクを手にしていた真白と天草先輩が俺達の方を見て尋ねて来た


「貴方とぉ~♪越えたいぃ~♪」


前では、ステージ上で九鬼先輩がコブシを利かせながら、渋い演歌を歌っていた...


俺たちは九鬼先輩の邪魔をしない様に静かに席に座る...


「...ごぉぉえぇぇ~♪」


パチパチパチ♪


「ん?なんだ戻っていたのか?二人で長かったな...もう私ら3回づつ歌ったぞ?」


「にゃぁぁぁ、私聴いてなぁ~い!」


そう叫びながら天音さんが頭を抱えている...さっき貴方の話を聞いて頭を抱えたいのは俺なんだが...


「はい」


真白は俺に向ってマイクを、天草先輩はデンモクをそれぞれ差し出して来た


「はい?」


「次城二ね」


一番恐れていた事態に陥った!?


「!?い、いや...俺は...ほら、あ、ほら天音さん未だ一曲しか歌って無かっただろ?お先にどうぞ」


渡されたマイクを隣に座った天音さんに差し出すが...


「う~ん、先に城二っちが歌って~私今何歌おうか悩み中ぅ~」


天音さんはデンモクの画面とにらめっこしており、俺からのマイクを受け取ろうとしない...これは...


「ほら、早く何を歌うか決めておくれ?ボクが入れて上げるよ?」


天草先輩は期待の籠った目を俺に向けながらデンモクを手にしている...


「で、でも...俺...」


「ん、城二男らしくない早く決めろ乳デカも私も城二の歌聴きたい」


「フフフ、私も聴いてみたい物だ、フフフ」


先程歌い終わってご機嫌な九鬼先輩は何時もよりテンションが上がってる様だ...


「わ、解ったよ...(どうなっても知らないからな!?)」


俺は天草先輩に曲名を伝え、選曲してもらうと、渋々マイクを握りステージに向う...


画面が切り替わりイントロが流れ出す...気が滅入り胸が苦しい...皆、曲名とイントロから俺の歌に期待してる様で、目を輝かせ注目してくれてる...はぁ


俺はマイクを手に...意を決す


「あ゛ざめ゛る~だびに゛ぃ~☠」


「「「…...………」」」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・


〇カラオケ店 スモールエコー前


俺たちは会計を済ませ、店の前で集まっていた


「.........」


「ま、まぁ城二君にも、苦手な事はあるよ...で、でもボクは城二君の歌好きだなぁ~」


「そ、そうだよぉ~人それぞれ個性が有ってもいいじゃんねぇ~」


「ん、炭太郎も歌あまり上手くない、だから気にするなブイ」


「クククク、真白そんなハッキリと言ってやったら、プッ..」


天草先輩は、何か奥歯に挟まった様に言葉を濁している、天音さんは若干笑いをこらえながらフォロー入れてる、真白に至ってはハッキリと下手くそだと言っちゃってるし、九鬼先輩は完全に笑いのツボに入ってしまっており、お腹を抱え苦しそうだ...


「っっ...だから歌うの嫌だって言ったんだよ...どうせ俺は音痴さ!」


皆に笑われるのが嫌で俺は学生時分も社会人になってからも、カラオケに行けば相槌役に徹しマイクを決して握る事は無かった


前世ではカラオケに行くのは決まって美千代と二人きりだった、美千代だけは俺の歌声が良いと言ってくれた


城二に転生して、音痴も改善されたかと思って一度一人カラオケに行って採点受けたが25点と見た事無い点数を叩き出し、自分の音程に絶望し入店して10分で帰ってしまった...


「ま、まぁ、皆今日はアタシの我儘に付き合ってくれてありがとねぇ~」


まぁ天音さんも藤堂の事や博覧会の事など色々と有ったけど、今日は楽しそうだったし、これはこれで良かったのかもしれないな(俺のプライドはズタズタだが...)


「それじゃ来週から、夏の全国魔刑部大会に向け最後の追い込みに入るからな、皆今日明日はゆっくり体を休ませて英気を養ってくれ、それじゃ解散」


「「「有難う御座いました!!」」」


俺たちは駅前で別れ、それぞれ自宅への帰路へついた...


「なぁトラ...」


『なんじゃ...儂はお前の呪詛の様な歌を聴いて頭が痛いんじゃ...』


「テメェ...」


自宅近くの駅から自宅へ向かって歩きながらトラを呼び出したが、出てきて早々に嫌味を言い出した


『まぁでも、金髪娘もお前が思ってる以上にしっかりしておる様だ、中々良い器量の女子じゃないか?ん』


「何が言いたいんだよドラ猫が」


『ふん、まぁ良いお前にしたら良い心がけだ、お前の紡ぐ絆は確実に強く固くなっておる』


「はぁ聞いた俺が馬鹿だったよ...」


『して、先程武者娘が言っておった全国魔刑部大会とはなんじゃ?』


「魔刑部大会っていうのは...」



魔刑部大会は、中学の部、高校の部、大学の部が存在し、学年事の線引きは無くランク制を取っている


このランクは各学部で一度リセットされるので中学でAランクになっていても、高校の部に移ればDランクから始める事になる


そして、このランク戦において上位の成績を収めると上位のランクへと昇格出来る


この魔刑部大会の上位ランクカーともなると進学時に推薦を受けたり、学校側からスカウトされたりする事も有る


春、夏、秋、冬の4回大きな全国大会が開催され全国民から注目される、そして中高大の中でも高校の部が一番熱いとされている、それは高校で優秀な成績を収めたランカーは大学へと進学する際の選択肢として、退魔特殊部隊の幹部候補として政府の運営する上級士官学校へと入学する事が常だからだ

その為、大学の部は上位のランカーが抜けた後の魔刑部大会であり、全国的な注目度は高校の部より一段低いのは否めないのだ


そして、この夏の魔刑部大会が魔都東京1999の中盤の見せ場で有り、隠しキャラを除くと仲間となる最後一人が天草先輩のライバルとして登場し、大会終了後に尊の底知れぬ才能に惚れ込んで、尊を追いかけて東光高校へ編入生として転校して押しかけて来て尊を巡る恋愛レースへと参戦してくるのだ


尚、この時点で真白との交流フラグを回収してない場合は、真白の参戦は全キャラの中で一番最後になってしまう



「て、感じで全国的に注目される魔刑部の一大イベントなんだ」


『ふむ...なるほどな、それまでにヌシも頑張らねばな』


魔刑部大会まで、残り1ヶ月を切った...そして、この大会が世間を揺るがす大事件へ発展する事を、今の俺は知るよしも無かった...








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