夏休みの魔刑部強化合宿最終日は、部員によるカレー対決になった
だが全員が2~3人分のカレーを作ると余ってしまうので、事前に参加者を募り
部員21名の内、7名が参加。残りの14名は米炊きや材料の用意、洗い物等のお手伝いをする事になった...まぁ料理した事ないのに下手に作って食材をダメにするのは良くないよね
参戦するのは、真白、天音さん、天草先輩、九鬼先輩と1年の女子部員から、花井さんと鳥山さん、山田さんの7名だ
7人は残りの14名からお手伝いを頼んで、カレーの下処理や材料の用意をを進めている...
1年の3名の女子部員は、元々が仲良しなのか、市販のルーの裏に書いてある手順内容の情報を共有しながら、お手伝いに入った他3名も含め6名で和気藹々とカレー作りを楽しんでる様だ...和むな
真白は流石と言うべきか、非常に段取りが良い、ペアになった子もほとんど洗い物や器の用意、それとお鍋の見張りなど、あたりさわりの無い簡単な作業を受け持っているが、「現人神」の二つ名に委縮してるのか少し緊張気味だ
しかし真白の料理の腕前は、お昼のお弁当でも実食、実証済でかなり期待できる、間違い無く大本命だ
天音さんはと言うと...本当に料理した事ないのだろう包丁の使い方や調味料の説明をペアの子に教わってる状態だ「あっ!?」ジャガイモの皮剥きで指を少し切った様だ...ていうかペアになった子が殆ど取り仕切ってる...かな不安だ
天草先輩に至っては、ペアに立候補する女子部員が多すぎてジャンケンによる勝ち抜きが行われ、ようやく一人に絞れた状況だ、かなり時間的にロスしてる様だ、「ん?何だあれ...」天草先輩は何を思ったか、チョコレートを大量に鍋に入れ出した...隠し味に1,2欠片入れるのは知っているがあの量は尋常では無い...さっきまで天草先輩のペアになれ歓喜していた子の表情も引き攣っている...ダークもダーク、危険信号だ
そして、言い出した本人である九鬼先輩は、一人だけ割烹着を身に着け敢えてペアを作らず、黙々と一人で料理している...遠目に見てる限りは包丁の使い方や出汁の取り方、火加減など完璧に見える、カツオ節を使っていたのでどうやら和風の出汁ベースのカレーを作る様だ...これはかなり期待出来る
『儂もこのカレーという南蛮の食い物中々好きじゃぞ?』
頭の中で出せ出せと煩いので、皆に断りを入れトラを呼び出したが
「お前ってホントに食い意地の張る神様だよな...」
『供え物を残す様な些末な神共と一緒にするな、儂は万事何事も大事にするのが儂のもっとうじゃ』
何やら偉そうな事を言ってはいるが、そもそもお供え物を作ってるつもりは無いのだがな...
そんな下らないやり取りをしてる間も、皆のカレー作りは順調?に進んでおり、家庭科実習室に食欲をそそるカレーのいい香りが漂ってきた...
「これは、空腹には堪らんな」
「ただの守衛の私が、本当に宜しいのでしょうか?」
皆川先生は本当に空腹な様で、お腹が鳴らない様に右手で腹部を押さえている
守衛の守屋さんは、なにやら申し訳無さそうに椅子の中で小さくなっている
「守屋さんは、毎日僕たちが安心して部活出来る様に学校を見回ってくれてますし部長も言ってましたけど、日頃の感謝の意味も込めてですので遠慮はなさらないで下さい」
控え目で真面目な守屋さんにそれとなく、遠慮しない様に伝えておく
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・・・・・・・・・・・・・・約1時間後
5台の炊飯器がほぼ同時にメロディーを奏で、ご飯が炊きあがった事を伝える
「さぁ、ではお待ちかねの試食会だ」
審査員の3名は、7つの小皿に小分けされ、それぞれお皿の前に番号の紙が置かれたカレーを全部試食し、一番おいしかった番号を左の箱に、次に美味しかった番号を真ん中の箱に、そして一番酷かった番号を右の箱に入れ投票する
投票箱を皆が見てしまうと、ショックを受けるだろうから実習室の奥にある教員の控室内に設置し審査員一人づつ入り投票する事となった...
「では、審査員が食べ終わって投票し終えるまで皆で手分けして後片付けだ」
皆に見られてる中での試食は緊張してしまうので、九鬼先輩が気を利かせてくれたのだろう...
「「「いただきます」」」
まず、1番のカレーから頂くことにする...ん?美味しい...これはザ・カレーの定番の味だ
次に横にある3番のカレーを口にする...あれ?1番と同じ味だな...美味しいけど違いが分からない...
その隣の5番のカレーを口にする...!?これも同じ...俺の舌が馬鹿なのかな?美味しいし沢山食べたくなる味だけど1番3番5番の違いが分からない...
つまり甲乙つけれない...
確かに手前の3つのカレーは野菜の形や大きさは違って見えるがルーの色は同じに見える...
次に奥の列にある2番のカレーを口にする...!?これは、凄く美味しい!!定番の味付けだが、玉ねぎの旨味が効いてて...それに牛肉では無く豚バラを使っているのか、ポークカレーってやつだな、、、
次その隣の4番のカレーに手をつける...が...味は美味しいんだけど...ジャガイモの皮が..人参も半生だしな、味的には1,3,5番と遜色無い定番の味付だったが、下処理がいまいちの様だ
隣の6番に手をつける...ん?これは!?出汁の利いた「カレー丼」って感じだ恐らくこれは九鬼先輩の力作だろう...だが
出汁だと、うどんで食いたくなるんだよな、あと薬味も七味か一味が欲しい所だが...
という事は...最後に残った7番のカレーをスプーンですくう...すくったスプーンが小さく震えてる...色目は普通、野菜も食べごろの大きさ、肉は...スジ肉ぽい
口に運ぶ途中にそっと香りを嗅いでみる...いや普通に旨そうな香り..意を決し大きく口をあけスプーンを口の中に放り込む...
口を閉じスプーンの上に乗ったご飯とカレーを押し出しながら、ゆっくりとスプーンを口から引き抜く
「......!?」
(いや...普通に子供用の甘口のカレーみたいな味だ!?てか普通に食べれる!?)
次は多めにカレーのルーをすくい、もう一口...
(あ、これカレーの〇子様ぽい味だ!...子供の頃よく食べたやつだ)
想像してた味と違って、甘口なので幾らでも食べれてしまう...大人になって甘いカレーなんてカレーじゃないなんて息巻いていたが、こうして久しぶりに味わうと子供の頃の懐かしさも相まって美味しく感じた...
「審査員の実食も終わった様なので、さっそく投票に移りたいと思います」
まず最初に決まったと席を立ったのは皆川先生だった...皆川先生はあまり悩んでなかった様だ
一方、俺と守衛の守屋さんは空になった7つのお皿を何度も見比べながら、絶賛悩み中だ...
しかし...
「よし!僕も決めました!」
7つの番号表を手に取り、実習室の裏の教員控室に入ると、3つの投票箱とよこに残りの票を入れる箱が設置されていた、俺はこれぞと思った番号を投票箱に入れ、それ以外の票は別の箱へと全部入れる
俺が部屋から出ると、不安そうな表情の守屋さんが俺と入れ替えで中に入っていった
......そして
「では、可憐も参加しているからな、ここは公平に私が結果を集計しよう」
家庭科実習室の教卓の上に3つの投票箱から番号表を取り出し裏に点数を記入している
一番良かったと思う票には2点プラス
二番目に良かったと思う票は1点プラス
そして、これはダメだろってカレーの票には1点マイナス
皆川先生がメモ用紙に採点をつけている...番号と作った人の名前は審査員には解らないので採点で一番ポイントを獲得した表の番号を読み上げる...
そして...結果は...