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第55話 栄光のWINNER


〇北野家 自宅マンション リビングにて


俺は自宅マンションのリビングで道代さんの入れてくれた、コーヒーに口をつけ一息ついていた...


「あら、それじゃ城二様は、どの番号に投票されたのですか?」


魔刑部合宿の話の流れで、最終日の今日有ったカレー対決のレクリエーションについて道代さんに話をしていた


キッチンに目を向けると、道代さんはテキパキと洗い物をしながらも俺の話耳を傾け、時折内容について質問してくれる


(家事の天才だな...道代さんてば何気に物凄いハイスペックだよな...)


と、頭の中で考えながらも聞かれた事にはちゃんと答える


「僕は悩んだんですが、2番に票を入れました」


「あら、じゃぁ城二様の選ばれた2番の「雨宮様」が、優勝されたんですね?」


「そうですね、真白のカレーは定番の王道の味でしたが、そんな中でも更に洗練された様な深みのある味がしました」


そう、優勝は2番のカレーを作った真白に決まった...獲得ポイントは4点


「では、次に投票されたのは?」


「2番と最後まで悩んだんですが...次点は7番にしました」


結果発表では、優勝者しか名前とポイントを発表されなかったので7番が本当に天草先輩だったのかは不明だが、恐らくは間違い無いと思う


「悩まれた7番のカレーは、どんなお味でした?」


「そうですね...子供の頃に食べた超甘口のカレー...って感じですかね?」


「フフフ、童心に帰られて懐かしさも良いスパイスになったのですね」


カチャ


道代さんは、俺の話に返事をいしながらも空になった俺のコーヒーカップと淹れたてのコーヒーを入れ替えてくれた、さすがだ


「アハハ、童心ですか...」



俺には北野 城二としては過去の記憶はない、それこそ婚約破棄を告げられる以前の記憶が...


俺の子供の頃の記憶と言えば南原 譲二のモノになる


俺の生まれた南原家は至って普通の家庭で有った...


両親共、別々の小学校の教諭をしており、俺は母が務める学校に通っていた


カレーについての思い出は、父親が辛口が好きだった事も有り母親は夕飯がカレーの時は、鍋を2つ用意し父の分と俺と母親の分を分けて作っていたのを覚えてる


本当は母親も父と同じ辛口のカレーの方が好きだったのかも知れないが、俺が甘口のカレーを食べきり、まだ物足りなそうにしていると、笑顔でそっと自分の分を俺に差し出してくれたのを思い出す


大きくなり、俺が甘口を食べなくなると南原家では中辛のカレーに統一され、母親が使う鍋も1つとなっていた...


会社があんな会社で殆ど休みを取れないが、年に何度かの休みで帰省した際に出された母のカレーを食べながら、幼少の頃に見上げていた2つの鍋を煮込む母の背中と、大きくなり見下ろしていた1つの鍋でカレーを作る母の背中を交互に思い出しながら(2つの鍋を1つ合わせる様にした時、母はどんな気持ちだったのだろう...)


なんて、思いながら台所で洗い物をしてる小さくなった母の背中を見つめながら、昔と変わらない南原家のカレーを口に運んでいたのを思い出した



「そうですね...カレーって不思議な料理で子供の頃の色んな節目の思い出に良く食べたイメージが有りますよね」


譲二だった頃の過去の事を久しぶりに思い出し、少し感慨に浸っていたのかも知れない...


「ふふ、ではまた今度、私が雨宮様に負けない城二様の思い出に残る様な美味しいカレーを作りますね」


キッチンで拳を握り俺に笑顔でそう答える道代さん...普段の道代さんのカレーも十分美味しいので何も不満は無いんだが、さらに美味しくなると言うなら期待せずには居れない


「それは、とても楽しみですね!」


俺は空になったコーヒーカップをキッチンに居る道代さんに手渡すと、お礼を言って自分の部屋へと戻る


「ん?メッセージ?」


ベッドの上に置いていたスマホがメッセージの着信を知らせるランプを点滅させていた...スマホを手に取りスワイプすると魔刑部メンバーからのメッセージが数通着信していた


「えぇ~と、これは天草先輩か?」


『今度は料理を頑張って、城二君に美味しいって言わせてみせるよ!(猫がサムズアップしてるスタンプ)』


どうやら、天草先輩的には悔しかったと見える、だが7番のカレーが天草先輩の作ったカレーだとしたら十分美味しいと思うがな?


「次は...これは九鬼先輩か...何々?」


『この私が真白に遅れを取るとは...同じ相手に2度の敗北は許されない!城二お前には、私の料理特訓に付き合ってもらうぞ!覚悟しろ!』


...九鬼先輩のカレーも十分美味しかったけど...あれがライスじゃなくて、うどんだったらな...そう返信しようか迷ったが後が怖くなり送るのを止めた


「次...この猫のアイコン天音さんか」


『助けてぇ~城二っちぃ~お婆様とお母様にカレー作った話したら、家でも試しに料理手伝えって言われてぇ~手伝ったら呆れられてぇ~メッチャ怒られnow(泣)』


天音さんの包丁の扱い見たらな...此処は今後天音さんが包丁を握って怪我しない様にする為にも、音羽さんと音枝さんに指導してもらった方が良さげだな...


俺は、「ガンバ!」と短くメッセージを送ると「城二っちの、薄情者ぉぉ!」と速攻で返信が届き猫がパンチしてるスタンプが何回も送られて来た...ふぅ...


「えっと...これは花井さん?あぁ~あの1年の」


俺はクラスのグループメッセ―ジには登録して無かったが、魔刑部のグループには九鬼部長の命令で半ば強制的に参加させられていたので魔刑部全員とアドレスを交換していた


『先輩、合宿お疲れ様です!最終日のカレー作りで私と鳥山さんと山田さんが料理にはまっちゃって今、私の家で3人一緒にシチュー作ってるんです!今度先輩にもご馳走しますね!!』


『楽しみにしててねぇ~北野先輩!』


『今度私にもトラちゃん抱っこさせて下さいぃ~』


『あ、ずるーい私もお願いしたかったのにぃ―—』


どうやら、1年の3人の子は料理の楽しさに目覚めた様だ...が、此処でもトラがモテモテとはな...年寄みたいな猫なのにな


「みんなも、お疲れ様、大会までゆっくり休んでね」


そう返信をグループメッセージに投稿しておいた...


「えっと...最後は真白か?」


『I‘m Winner!我を称えよ』


真白は、相変わらずのテンションの様だ


俺はそのメッセージを見て口元を緩めながら、返信する為にタップする


「ははぁ―——真白様の絶品カレーには感服致しました!」


返信するとすぐに既読になり...ピロロロン♪ピロロロン♪


メッセージアプリの音声通話が真白からの着信を知らせる...


「はい」


『ん、真白だ』


「分かってるよ!」


『ん、分かってるなら話は早い、明日いくぞ』


「は?どこ行くって?」


『ん?わかってないじゃないか...城二は嘘つきだ』


...流石、真白さんは難敵だぜ...何故か俺が嘘ついて悪い事にされてしまっている


「ごめんって...わかって無かったから、この私めにご教授くださいませ」


『ん、良かろう...私は栄光のWinnerだからな』


・・・・・・・・・


『明日、朝7時に家に来て、一緒にネズミ―ランドいく』



こして、親友により明日の予定が突如埋まってしまった俺だった...













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