〇ネズミ―ランド フードコート街コンカフェレストラン期間限定「不滅の刀コラボ」
午前中に真白ともう一か所、アトラクションを巡った
不滅の刀ミュージアムと銘をうたれた、展示ブースだ
中には原作の漫画原稿や、作者直筆のメッセージ、キャラクターの等身大人形等、不滅ファンならずとも楽しめる内容だった
当然真白は目を輝かせ各展示ブースを穴が空きそうな程見学し、その都度俺にアレはどのシーンだとか、あの刀は途中で折れただとか、コアなファンしか解らない内容を楽しそうに説明してくれた
このままだと、このミュージアムから出て来そうも無いので
「真白、俺お腹すいたよ何か食べてから他を回ろう」
「!?あ、もうそんな時間か!?ん、了解した私此処行きたい」
真白がチョイスしたのは、不滅の刀コラボメニューが有るコンカフェレストランだ
丁度、次の目的である「不滅の刀by鬼の館」と言う、ホラーハウスの途中に有る様なので、真白の不滅談義を聞きながらレストランへと向かった
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「お待たせしましたぁ~不滅の刀コラボ限定のハンバーグプレートで御座います」
俺と真白は、一番人気のコラボ限定のハンバーグプレートを注文した、市松模様にデコレーションされたほうれん草のクリームがハンバーグの上に掛かっており、ネズミ子の顔がケチャップで描かれたオムライスが付いている、かなり手の込んだメニューだ
「おぉぉぉネズミ子ぉぉ」
真白はスマホを取り出すと、パシャパシャとハンバーグプレートを撮り出した
「ん、城二もっと顔を寄せろ」
「え?あ、あぁ」
俺は真白に言われるがまま、テーブルの上に身を乗り出し真白の方へと顔を寄せると...パシャ
真白も顔を寄せ頬がくっついた所で真白がスマホのシャッターを切る...
「ん、良いのが撮れた...ほれ」
真白の見せてくれた画面には、訝し気な俺と微笑む真白が頬を寄せ中央の下にはネズミ子がケチャップの赤い線で描かれたオムライスが写り込む
「フフフ、中々の撮れ高...ママとパパに送る」
真白はスマホを操作し、メッセージアプリで両親へと写真を転送していた...
『真白が楽しそうで良かったよ、今度はパパ達とも行こう』『まぁ良いわねぇこれは直ぐに現像して特大パネルにしなきゃ!』
真白の両親からのメッセージからは、真白への愛情の深さを感じる...
「パネルにしたら城二にもやる」
「ハハハ、それは楽しみだ」
俺たちは、惜しみながらもコラボのハンバーグプレートを残さず食べた、味はまぁ普通だった...
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「真白...お前よく食べるな...」
真白はレストランを出たところにあった、ワゴン店の不滅の刀風チュロスを3つも買い込んでムシャムシャと食べている...
「ん、イチゴ、チョコ、プレーン3つの味を食べ比べ...ん」
真白が今食べてるチョコのチュロスを俺に差し出す
「え?で、でも...(関節キスですやん!)」
「ん!」
真白が強引に俺の口に押込んでくるので、先の方を少しだけ齧る...
「うん、少し硬いドーナッツみたいだな...でも旨いな」
それじゃと、真白は残り2つの味も俺の方へ差し出し、結局俺が食べ比べする事になった...俺的にはプレーンが美味しかったが、真白はイチゴ味が良かったらしい...
〇不滅の刀by鬼の館 入口
元々は、ゴーストハンターズというネズミ―の映画のホラーハウスだったのだが、期間限定で不滅の刀仕様に変更されてるらしい
相変わらず、期間限定というのは人気なのか此処も待ち時間が100分と掲示されいる...
「これでお願いします」
スタッフの人にVIPパスを見せると
「畏まりましたぁ!」
慌てて背後のVIPゲートを開け俺たちを通す...ここでも他のお客から羨望の眼差しが向けられる
ゲートを抜けると、すぐ目の前にハウス入口が見え、不滅の刀のキャラの衣装を身に纏ったスタッフが案内してくれた
「では、ここが入口となっております、お足元の矢印通りにお進み下さい、また手すりの向こうへは危険ですので侵入しない様にお願いします...では恐怖と絶望の鬼の館へいざ!」
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室内は洋風の館の様な作りになっており、周囲は薄暗い...足元の蛍光の矢印だけが妙に鮮やかに浮かび上がる...
「真白、手をつなぐか?」
「ん、了解」
俺は真白と手をつないで、屋敷の中を進む...「ぎゃぁぁぁ!」「「!?」」
突然右の窓から、鬼が血まみれの口を大きく空け俺たちの方へと飛び出してきた!
「び、びっくりした―—」
「ん、少し驚いた」
暗くて表情は見えないが、口調からそんな驚いたような気配も感じない...が...ギュ
少しだけ真白が握る手に力が入った...
『フフフ良く来たな...ここが無断の館だと知っての事か?』
天井から無断の声と雷の様なフラッシュと音響が鳴り響く...
『この館から無事に脱出した者は居ない...お前らも我が眷属としてやろう!!』
ガシャァァァン!声が聞こえなくなったと思ったら、先の方で何かガラスが割れた様な音がした...
『がぁぁぁぁに、にんげん...食わせろぉぉ』
目の前から鬼が数体俺たちの方へと迫る...
「!?足下の矢印の向きが変わった!?こっちだ真白ぉぉ」
足元の矢印が真正面から右方向へと変化した...俺たちは迫りくる鬼を回避し右側の通路へと進む
「これは...」
「ん、気持ち悪い」
壁や天井が肉片の様な物で埋め尽くされており、時々赤く発光し脈打つ...しかし足下の矢印は真っすぐ肉片の回廊へと誘う...
「い、行くか...」
「ん」
慎重に前に進んでると...プシュープシュー
俺たちに向かって、血管の管の様な端から空気が噴き出し体に吹きつける...
「うげぇぇ生暖かい風ぇ...気持ち悪い」
「ん、私は平気城二が壁」
真白はいつの間にか俺の腕にしがみつき、生暖かい風を俺を盾にして防いでいた...
そして...
『よく、此処迄これたな...だが此処迄だ私無断が直々に相手をしてやろう覚悟しろ!』
正面に映像が流れエントランスの奥に無断の姿が映し出される...
【横に置いてある、太陽の息吹の玉で無断を攻撃して下さい】
音声ガイダンスが流れ、通路の左右がライトアップされると、オレンジのボールの入った箱が壁から現れる
「これを無断に向かって投げれば良いのか?」
「みたい...やるぞ城二!二人の共同作業だ」
(真白さん、それ花嫁がケーキに新郎とナイフを入れる時に紹介されるセリフだよ?)
そんな事を考えつつ、手に持てるだけボールを取ると
「いっけぇ―大リーグボール1号だぁぁぁ」
「2号だ」
俺と真白は思いっきりボールを無断の映像目掛け投げつける...するとボールの当たった所にエフェクトが入り本当に無断にボールが当たっているかの様な演出が起こる...スゲー迫力!
そして手持ちのボールを全て投げつけ...
『くっ...この鬼の王である無断を此処迄追い詰めるとは...今回は見逃してやろ...だが次はこうは行かない覚えとけ!』
使い回された、負けキャラの捨てセリフを吐いて無断は画面から消えて行った...
部屋の中が明るくなり、出口と思われるゲートの上のランプが点灯する
「あそこが出口みたいだ、行こう」
「ん」
再び真白の手を取り...出口へ...
「ぎゃぁぁぁぁ」「うわぁぁぁ」「ん」
出口をあけると、鬼が天井から逆さつりになって降って来て、油断していた俺は思わず叫んでしまった...真白は...平然としている
しかし、その後本当に出口に出て、受付のスタッフに声を賭ける
「では此方VIP様限定のプレゼントとなってますので、どうぞ」
ここでは、無断と炭太郎&ネズミ子が戦ってる所の絵がプリントされたトートバッグを貰えた
「わぁこれは助かる」「ん、城二のと合わせて沢山不滅グッズが買える」
俺のバッグ迄浸食しようとは...こいつ鬼の王無断みたいな事言うな...
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その後、真白の狙っていたアトラクションを一緒に回った...ゴンドラ、立体迷宮、メリーゴーランド
流石にメリーゴーランドは気遅れしたが、他ならぬ真白の為と思えば恥も知れてる
そして気づけば、そらも少し暗くなり所処街頭が点灯してきていた...
俺たちはベンチに腰掛け、コーヒーとメロンソーダで喉を潤している
「ん、城二疲れたか?」
「フフフ、そりゃぁな」
俺の視線の先にには隣の置かれた不滅グッズの詰め込まれた袋達
「ん、私が持つのに」
「いやいや、こういうのは男が持つモノと相場が決まってるんだよ」
ゴクゴクとカップのアイスコーヒーを口にする...
「真白はどうだ?楽しめたか?」
今度は俺から真白に対し聞いてみる
「ん、最高の一日...一生の思い出になった」
「んな大げさな、今度金吾さんも一緒に行こうってメッセージ来てたじゃないか?」
「ん、でも城二と一緒が一番大事だから今一番楽しい」
そういうと真白はそっと俺の肩に頭を乗せる...
「城二は疲れただけ?楽しくなかった?」
そんな訳ない、今日は色々あった事を全て忘れられて真白だけを見て真白と一緒に楽しんだ
「そんなの決まってる、メチャ最高に楽しかったし、最高に幸せだったさ!」
「ん、なら良し」
ベンチに腰かけ寄り添う二人をチラチラみて通り過ぎる人々...あの人達には俺たちがカップルに見えてるのかもしれない
俺は真白の事をどう思ってる?ゲームのキャラとして好きなのか?それとも一緒に苦難を乗り越えた親友として好きなのか?...それとも...本当の恋愛対象として真白を見ているのか?
前世の譲二は34歳の中年だ...本当なら結婚して家庭を持って子供だって居てもおかしくない
仕事にかまけ、恋人に愛想つかされ恋愛なんかする気も無くなり、ゲーム中のヒロインを疑似恋愛対象として癒される日々...
しかし今は、北野城二としてこの世界に転生し、その人生を歩んでる...
ここがゲームの世界では無く酷似した別世界である事はおおよそ理解出来ている
その世界で生きて行くと決めた俺は、この隣で生きる温もりをくれる女性を愛する事も出来るのでは無いか?中年だから?攻略対象だから?そんなことは俺たちには関係ない
今を生きる俺たちが自分で選んで進む道を決めれば、それが目指すべきエンディングになるはず...
「なぁ真白...」
「ん?」
「俺さぁお前の事...」ピロロロロ♪ピロロロロ♪
ちっ良いところで電話の着信が入り邪魔された...後ろポケットからスマホを取り出すと画面には「父」の名が...
真白に断りを入れ電話に出る
「はい、城二です」
『久しぶりだな、お前が病院から電話をかけて以来か』
まぁ「そうか」「きるぞ」しか言って無かったけどな...ふと隣を見ると真白が真剣な表情で俺の方を見つめる...俺は軽く微笑んで真白に「大丈夫」と無言で告げる
「父さんから電話なんて、珍しいですね何か急用ですか?」
『そうだな、急用と言えば急用だが、用が無くなったと言えば用が無くなったな』
この人の頭の中はどうなってる?何が言いたいのか全く理解できない
「すいません、僕には父さんの仰りたい事が理解できません、単刀直入にお願いします」
『まぁ良かろう、お前に告げる事は2つまず、母さんとは離婚した』
「!?な、なぜ急にそんな...母さんは小樽家の出でそれをぞんざいに扱っては父さんの支持基盤が...」
『ずいぶんと、儂の事を調べたモノだな?それも牧子からの入れ知恵か?だが心配は無用だ、儂にはもう分家等の支援は必要無い...まぁそれがもう一つのお前に告げる話に繋がるのだがな?』
なんだコイツ...もうゲームの内容と乖離してるのはどうでも良いが、普通に人間としておかしいだろ
「そんな話より、母さんはどうした!」
『ふっ...お前みたいなゴク潰しでも母親は気になるか?ん?』
「黙れよ、母さんは何も悪く無いだろ?断罪するなら俺だけにしろよ、無関係な母さんを巻き込むなよ!」
スマホを握る手に力が籠り...真白も心配そうに俺の方を見つめる
『アレは、実家へと送り返したついでに小樽家に絶縁状を添えてな...まぁ手切れ金はたんまり付けてやったからな、あそこの次男坊が投資で失敗して少なくない借金が有る事も調べはついてる、儂からの手切れ金は涙が出る程有難かったろう』
「アンタ本当に...」
『まぁ本題だ、此処まで言えば今のお前なら察しが付いてると思うが、敢えて言おう』
『お前とは絶縁、北野家から勘当を言い渡す』