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第60話 突然告げられた勘当


『お前とは絶縁、北野家から勘当を言い渡す』


父から突然の電話にて、母との離婚と俺の勘当が告げられた...


「一応理由を聞いても良いか?」


俺への勘当については十中八九予想は出来る、だが母の方の実家の件は意外だった...まさか小樽家がそこまで没落してるとはな


『ほぅ...慌てて泣きすがると思ったが、中々肝が据わってるな』


俺の反応は面白く無かったのか、少しだけつまらなそうな声になる


「今更アンタに何かを期待する気はねぇよ、理由を言いたく無いなら言わなくて結構だ」


『まぁそうだな、何れ分かる事だ何も知らないまま底辺へ落とされちゃ幾らお前でも不憫だ』


心にも無い...


『実はな狛狗神様からのお告げでな、尊を正式に北野家の跡目に付ける事をお認めになられたんだ』


やはりな...尊のあの異様な迄の力、たとえ俺が白虎の力を正式に得たとしても届く気がしないからな


「ふん、駄犬の神の言いなりか...下らねぇ」


『貴様ぁ...まぁ良いもはや貴様とは血のつながった赤の他人だ』


「それで血のつながらない、義理の息子を跡目に付ける訳か?」


まぁこの男なら血縁なんか気にしないだろうな...自分にとって有益かどうかが基準だからな


『ぷっ...フフフフ、アハハハハ、流石あの女の息子だ、血がつながらない?誰が?』


「!?ま、まさか...テメェェェ」


『そのまさかさ...尊は紛れも無く儂の...血を分けた息子だ』


この展開は予想出来なかった...まさかあの堅物親父が他所で女を作って子供を産ませてるとか...


『まぁ尊の母親はどこの女かは知らないが、儂程の優秀な遺伝子をお前みたいなゴミクズだけで終わらせる訳無かろう?所詮お前は儂の出涸らしから生まれた失敗作だった訳だ...アハハハハ』


堅物で家を大きくする事しか興味の無い、非家庭的な男だと思っていた父親は、裏で女を囲って孕ませている様なクズだった、ある意味クズ加減が城二と同じで血縁関係を強く感じてしまう


「クソが...後で吠え面かくなよ?たかが狛狗神なんかを後生大事に崇めてる、お前ら等など...」


『言ってろ...とにかくお前は今この時から北野家とは無関係だ、母方の小樽性を名乗るも、そのまま北野を名乗るも、他の好きな性を名乗るも好きにしろ...あ、それと言い忘れてたが学費は3年の卒業迄の分を支払い済だから学校だけは行かせてやる有難く思え、だが今住んでるマンションは、夏休み明けから尊が住む事になったからな、明日、明後日中には出て行け、良いな』


「ま、待て、俺は分かるが、道代さん...立花さんは、どうするつもりだ!?」


『さぁどうだろうな?尊が良ければそのまま家政婦として置いておくのでは無いか?まぁアッチの面倒も見てくれるのか知らんがな?フフフフ』


「このぉ...テメェ道代さんに何かしたら、お前ら二人まとめてぶち殺すからな!」


この男、ここまで下衆な男だったのか?...ゲーム序盤の城二と瓜二つだ...


『ふん、尊に手も足も出ない無能が何を息巻く...途方に暮れ野垂れ死ぬのは貴様だ、じゃな長電話も疲れたお前には二度とかける事は無い...あぁそうそうこの電話は牧子の支払いに変更してるからな儂に遠慮は無用だ、好きなだけ使え、それじゃ達者でな』


ツゥーツゥー...


俺はゆっくりとスマホを下す...


「城二...今の電話...」


「あぁ聞こえたろ?実家を勘当されちまった...」


「そんな無茶な事あるの?それに今の話だと住む所も...」


そうだ...住む所...今更だが学校の寮に入れてもらうか...それに当面の生活費...


母のアドレスを表示して発信しようとするが『小樽家は次男の作った借金んが...』先ほどのあの男の言葉が頭の中でリフレインし躊躇してしまう...


「まぁ今日帰って道代さんと話をしてみるよ...住む所も学校の寮に入れないか皆川先生通じて聞いて見るさ、夏休み中位はネットカフェかビジネスホテルに泊まるよ、その位は手持ちも有る」


「城二...」


心配そうに俺の方を見つめる真白に、笑顔を作り


「俺的には、あんな父親と縁が切れて済々してるよだからそんな、顔するなよ...な?」


「ん、分かった...でも城二何かあれば私に言え」


「あぁ勿論だ親友」


真白がベンチから俺に向かって手を差し出したので、俺はその手を握り立たせる


「それじゃ帰るか」


「ん、今日は楽しかったまた一緒に遊びに行こう」


「あぁ行こう」


せっかくの楽しいひと時が、俺が電話に出たばかりに台無しになってしまった...


帰りも真白の家の車が迎えに来たが俺は電車で帰ると告げ、真白の荷物をワンボックスに積むと真白を乗せた車を見送った...背面のガラス越しに真白が俺の方へ心配そうな視線を向けていたが俺は笑顔で頷き手を振って見送った


「さて...電話しなきゃな...」


ネズミ―パークの直通バスターミナルから少し離れた場所で周囲に人が居ない事を確認し、母親に電話を掛ける


プルルル、プルルル、プルルル、ガチャ


『もしもし?城二なの?』


母親の声は何時になく元気が無かった...


「あぁ、父さん...いやもう父親じゃないな...あの男からさっき電話が有ったよ」


『御免なさい...城二...私が、母さんが弱いばかりに...』


「母さんのせいじゃないよ、俺の今までの行いと、先の見込みが甘かっただけさ...俺の方こそ母さんに迷惑かけて御免よ」


『城二...うっっ...うっっ...。』


電話越しの母の嗚咽は暫く続いた...そして落ち着いた頃に話を切り出す


「落ち着いた?」


『え、えぇ...御免なさいね...みっとも無くて...えっと小樽家の状況よね?』


「あぁアイツが言うには、小樽家の次男が投資に失敗して多額の借金を背負ってるって聞いたけど」


『えぇ...それは事実よ、母さんの二つ上の兄なんだけど株に投資に失敗して...』


「そのお兄さんは、投資に凝ってたの?」


『いえ...本人もはっきりと言わないんだけど、闇の投資家の様な人と知り合って最初は結構利益を出していたみたいで、それで高級車を購入したり高級腕時計を購入したり急に羽振りが良くなったりで、本人も浮かれていたみたい...でも...』


「勝負に出た投資が失敗した...」


『えぇ...その闇投資家が「このタイミングが最大に利益が出る絶好の機会です」って兄を煽って...貯金と全財産を、その上場一歩手前と言われた会社に投資を...』


『そしたらその会社、利益を水増ししてて...いわゆる粉飾決算ね.そしたらアッという間に株価が下がって...紙切れ同然に』


「インサイダーって奴か...闇投資家...怪しいな」


『えぇ本人と直接接触はしなかった様だけど、テレビ電話で話した時は異様な仮面を被ってたって言ってた』


「仮面の不審者...」


此処でも仮面の不審者が...いや沖縄で奈美恵さんに拳銃を渡した人物と藤堂を神域へと導いたのと、今回の闇投資家を名乗る仮面の人物が同一人物かどうかも怪しい..もし同一人物だとしたら尊が犯人である可能性は消える...あいつが東京に居ながら沖縄や北海道に瞬時に移動出来るはずも無い


「仮面の不審者の件は置いとくとして、小樽家には、もう以前の様な力は無いのか?」


『えぇ...既に小樽家が保有していたDランクの秘境も手放して、他の分家へ貸付ていた資本も回収して、そして私の...いとま金を使って何とか借金を返済出来た所なの...だから...』


だからもう他の分家へ圧力をかける力は無い...そういう事か


『母さんも今は実家に身を寄せてるけど...お爺ちゃんもお祖母ちゃんも兄さんの事で気落ちしちゃって、長男のお兄さんが何とか実家を支えてくれてるけど、ほら、役員してる会社...文弥...あの人の会社だし今後どうなるか』


小樽の実家は想像以上に大変な様だ、北海道内において北野家の威光は絶大で有りたとえ時の首相で有っても、事、北海道における政策案件は北野家を無視しては実行不可能だと言われている


「分かった、また何かあったらお互い連絡を取り合おう」


『ねぇ城二...貴方住む所やお金は大丈夫なの?前みたいに沢山は送れないけど少しなら...』


「いや良い、まだ結構持ってるし住む所は学校の寮住まわせてもらうと思ってるし、まぁ夏休み中は何処かのホテルにでも泊まるさ、その位は余裕だ」


『そ、そう?貴方がそんな貯蓄する様な子だったとは...意外と堅実で安心した、また何かあったら電話するわ』


俺はそっと通話終了のボタンを押しスマホをポケットへ仕舞う


『城二、これからどうする?』


俺の足下の影からトラの声が聞こえる


「とりあえず、道代さんと話をするさ...」


母との電話で何本か駅直行バスをスルーしたが、丁度タイミング良くバスが到着したのでそれに乗り込み、帰宅した...


(道代さんは、どう思うかな...)


『尊に手も足も出ない無能が何を息巻く、途方に暮れ野垂れ死ぬのは貴様だ』


ここに来て、物語冒頭を思い出させる「死亡フラグ」の影...尊と自分の今の実力差を想像した時、脳裏によぎるのはチュートリアルでボコボコにされ、無様に這いつくばる城二の姿だった












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