時間に間に合わなかった事を謝罪し、改めて音田さんに時間を取ってもらうという事で今スタッフルームで待機している
20分遅刻で、店に慌てて到着した時、既に先にバイトに入っていた道代さんに酷く心配されてしまった
何度も道代さん音田さん山吹さんに頭を下げ謝罪した
3人とも何か事情があったんでしょ?と怒ることも無く笑って許してくれ、リスケして俺の為に時間を空けてくれると言う...
(本当に申し訳無いな...事情が有ったとは言え無断で遅刻とか社会人として失格だな)
南原譲二の時の事を思い出し、一人落ち込んでいると
コンコン♪
スタッフルームのドアをノックする音がした...俺は椅子に背筋を伸ばし座る
「失礼するねぇ―――」
「はい...って、え?」
ドアから現れたのは、音田さんでは無く愛理さんだった...愛理さんは俺にヒラヒラと手を振りながら
「面接の前にさ、城二君に会いたいって人が居て、連れて来たんだけど?入ってもらって良いかな?」
(俺に会いたい人?誰だろ?...)
俺は黙って頷くと
「あっお兄ちゃんだぁ!」「お兄ちゃん!」
ドアから飛び出して来たのは、先ほど事故に遭いかけた女の子2人だった...二人は椅子に座ってる俺の両膝に手を置くと俺の顔付近でピョンピョン跳ねて嬉しそうにしている
「ど、どうしたんだ?二人とも!?お母さんが迎えにきたんじゃ...」
そう言いかけた所で、愛理さんと目で合図して2人のお母さんが部屋へと入って来た
「この度は娘を助けて頂いて、誠に有難う御座います」
「助けて頂いたのに、何のお礼も出来ず失礼致しました」
二人の母親は俺に向かって深々と頭を下げる
「そ、そんな、別にお礼なんて...見ての通り僕も怪我なんかしてないですし...って!?運転手の方はどうなりました!?」
俺は気になっていた運転手の容体について二人に尋ねる
「それが、意識は戻ったらしいのですが、車に乗ったあたりから記憶が無いらしくて...」
「脳梗塞の疑いも有り、ⅯRで検査したんですが異常は無く薬物の反応もアルコールの反応も無かったそうで...単なる居眠りでは?と...」
「居眠り...そう...ですか...」
「何か引っかかりますか?」
「いえ...(確かに居眠りと言われたら、そうなのかも知れないな)」
「あっ!お話が逸れましたね、娘の恩人である北野様に何かお礼をさせて頂きたく思いまして」
「お礼!?イヤイヤ、お礼をされる様な事では無いですよ、僕は二人の前に飛び出しはしましたが、二人に追突しなかったのは、車が偶然右に逸れたからで」
俺の答えにお母さん2人は顔を見合わせて首を傾げる
「いえ、警察が目撃者に聞き取りした所、北野様が子供達の前に飛び出し神憑依のスキルで車の左側前輪部を破壊して軌道を変えたと」
「え?俺がスキルを!?」
(おかしい、俺はあの時トラを呼びだしては無い...当然スキルを使える訳も無いし、俺に対するスキルギフトにはチャージタイムが掛かる、あの一瞬で出来る訳無い)
「そ、それは俺じゃないですよ...多分あの場に居た誰かが...」
俺の必死な様子にそれ以上言うのを諦めたのか、お母さん2人はそれ以上何かいう事は無かった...しかし、純粋な子供は違う
「えぇ―お兄ちゃんが悪い車をやっつけたんだよ!」「そうそう、こうやってぇ!いれい・・・なんだっけ」
小春ちゃんは真剣な表情で右手を広げ前に突き出して...何か聞きなれない呪文を唱えている
『小童共が余計な...』
その時、俺の足下からトラが現れ俺の肩のに乗り、女の子2人に視線を向ける
「へぇ――、そうなんだ...白虎って...興味深い」
愛理さんが、ボソボソ何か言っているが良く聞き取れない
「わぁぁ綺麗な猫ちゃんだぁ」「可愛いぃお兄ちゃんの猫ちゃんなの?」
小春ちゃん達は目をキラキラさせて俺の肩で小言を吐く、年寄臭い猫を興味深々で見つめている
「わぁ猫ちゃん私達とあそぼぉぉ!」「うんうん、あっちに他の猫ちゃんもいっぱい居たしおもちゃも、たぁ~くさんあったよぉ~」
プイ
トラは大人げなく...いや神なげなく、純粋な子供に向かってそっけない態度を取ると...
「うっうぅぅぅぅ...猫ちゃん私の事嫌いなの?」「わぁぁぁん、猫ちゃんが遊ぶの嫌だってぇぇぇわぁぁぁぁん!」
二人はスタッフ部屋で泣き出してしまった...俺に誤りながら、それぞれの子供をなだめお母さん達...
そんな様子を嬉しそうに見ている愛理さん...
「トラ...子供がお願いしてるんだぞ?」
『...くっそぉぉぉぉ!分かった、分かったぁぁ儂の負けじゃぁ』
そう言うと俺の肩から、小春ちゃんの頭の上に飛び乗り「にゃぁぁぁ」と鳴いた
「二人とも、良かったねトラも二人と一緒に遊びたいってさ、トラの事二人に任せていいかな?」
「うん!もちろん!」「小春はお姉ちゃんだから、トラちゃんの面倒見るぅぅ!」
子供二人はトラを連れ元気に、店内へ遊びに行った...
「北野さんすいません...助けて頂いた上に、娘の我儘に突き合わせて...」
「いえいえ、あんな感じですが結構子供好きなので、喜んでると思いますよ?」
二人は咳払いをすると、軽く俺に頭を下げ
「改めまして、北野様へ何か報いるべきと強く思いました」「私もです、何か私共で出来る事が有れば...」
「申し訳ございません、改めてお二人のお名前伺っておりませんでした」
「「!?」」
「大変失礼を!!私は小春の母で、柳生 小夏と申します」「私もうっかりしていて申し訳ございません、私は洋子の母で 宝蔵院 海子と申します」
...え?マジ...
「あ、あのぉ...つかぬ事をお伺いしますが、柳生さんの家に先祖から受け継いだ古い古文書が有りませんか?」「...古文書ですか?...う~ん」
「あと、宝蔵院さんのご実家にも、先祖から代々受け継いてる、木の実を使った数珠なんかを...お持ちでは?」「...木の実の数珠?...う~ん」
俺の気のせいかな...こんな所でまさか「「有ります!!」」
その、まさかだ...