〇東京ドーム内 全国魔刑部決勝大会 選手控室前
「一体何の騒ぎなんだ?これは...ここは選手が試合に向けて集中する場所だぞ!」
「...翼か、いったい何を...」
混乱する場に現れた、皆川先生と九鬼先輩は両校の魔刑部員に向かって、静まる様に注意する
「あら、可憐と綾瀬先輩...ちょうどええわ」
自分の所の魔刑部員の方を振り向くと、試衛学園の部員達は真ん中に道を作る様に左右の壁際に移動し、土方先輩と皆川先生、九鬼先輩の間に隔たりが無くなった
「丁度良い?翼、なんの話だ、というか、うちの部員に何をしてくれてる?事と次第では...」
「フフフ、可憐、その事と次第なんやわぁ~」
不敵で妖艶な笑みを浮かべながら、九鬼先輩と皆川先生の元へと歩み寄ると
「綾瀬先輩、ご無沙汰しております」
まずは皆川先生へ丁寧に頭を下げる
「あぁ...前回大会の時に少し話をして以来、約3ヶ月ぶりか」
「えぇ、私としましては天衣理心流(てんいりしんりゅう)免許皆伝の源綾瀬先輩に昔の様に、御指南頂きたいのですが?」
土方先輩の言葉に複雑な表情で苦笑いをする皆川先生...
「すまない...翼、私はもう...剣の道は捨てたんだ」
「...左様ですか、しかたありませんなぁ」
土方先輩は口にするほど、残念な様子は伺えないそれどころか少し嬉しそにも見える
「まぁ本題は、それとちゃいますねん...可憐、ウチ、アンタんところの城二がどうしても欲しいねん」
「はぁ?」
土方先輩の話に、眉を顰め明らかに不機嫌な表情を見せる九鬼先輩
「ウチ、欲しいと思った物は、どんな事をしても手に入れるさかいな...」
土方先輩は振り返ると...俺に向かってウインクし
「土方の掴んでる情報やと、城二は既に北野家を勘当されて、住む所も無いって話やし、ウチには都合がええわ」
そう言いながら再び俺の目の前まで来て、下から舐める様に俺の事を見つめ右手の人差し指で俺の顎を撫でると
「フフフフ...土方 城二...悪くない響きや」
「「「!?」」」
その場の全員が驚き戸惑う中
「今の所はこの辺で収めてとこ、開会式の後はウチらAランク戦やしな...可憐楽しみにしとくでぇ」
そう言うと、最後に俺の頬を優しく撫でながら、投げキスして「試衛学園控室」へと入って行った
土方先輩が入ると、俺の事を白い眼で睨みながら控室へと向かう沖田さんと、憎しみに満ちた目で睨みすけてくる島津...
「!?東光高校の控室は、この奥だ、みんな私について来るように」
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皆川先生に引率され、廊下の一番奥にある「東光高校控室」へと入る
控室は、長椅子やパイプ椅子だけでなく、スポーツドリンクや栄養補給の為のゼリーが用意されている
4畳半くらいの畳スペースが有り、カーテンで仕切られた更衣室が奥に見える...シャワールームも有る様で、本日から3日間お世話になる控室は至れり尽くせりだ
しかし・・・・今俺は針の筵状態だ...
「ねぇ城二君!?あれは一体どういう事なの?ボクにもわかる様に説明してくれないかな?」
「城二...へらへらしすぎ、私ちょっと不機嫌」
「お前に油断が有るから、翼などに不意をつかれるんだ、弛んでる!」
「にゃははは~城二っち、今回は不味かったねぇ~ご愁傷様ぁ~」
他の部員は荷物をかたずけ、思い思いに寛いでいるのに俺だけ畳のスペースに正座させられ、美女4人に責められている
その系の人なら歓喜する所だろうけど、俺にその気は無い...頭の中で色々思考が渦巻いて混乱してる...
「あ、あれは、皆も見てたでしょ?そもそも、ボクは土方さんと初対面ですし!」
思った事を口にしてみるが...
「へぇ~城二君は初対面の女の子と、平気であんな事しちゃうんだ~」
「城二見苦しい」
真白と天草先輩は俺に白い眼を向け、聞く耳を持たない(説明してって言われたから説明したのに...)
「にしてもだ、翼はああ見えてかなり身持ちの固い奴だ、私も東西に離れた家柄だが、同じ剣術を志す者として昔から面識が有って良く知ってるが、翼の奴が誰かを好きになったとか、憧れの人が居るなんて話聞いた事が無い...」
「にょぉぉ?あんなに城二っちに迫っていたのにぃ?」
(確かに魔都東京1999では、大会後に尊の戦いぶりに一目惚れした、翼が強引に東光高校に転校してくる流れだったが...そもそも、ゲーム内と大会の内容が大きく違ってる)
◇
まず、大会ルールだが、Aランク戦が中学、高校、大学、社会人の合同トーナメント戦になっている事
次に、土方先輩についてだが、ゲームではBランクで出場し決勝で、神衣を使ってみせ天草先輩を下すのだが、現実にはAランク戦への参戦で、戦うとしたら九鬼先輩とになる
次に試衛学園だが、ゲームでは沖田と言う女の子も島津という男の子も登場してない、島津はDランクへの参戦で沖田さんがBランクで出場すると言う...
そもそもの話、俺が参加してる事も異常だし、もっと言うなら真白や天音さんが参加してるのもゲーム内と大きく異なる
◇
となれば、戦いの行方も俺のしってる原作知識は当てにならないし、逆に足下をすくわれる可能性の方が高い
(ここは、色々と慎重に行動しないとな...)
「はぁ?何が慎重に行動しないとな...だよ!いったいどの口が言うんだい!!」
「今の城二が慎重に行動とは片腹痛いな!」
「デカ乳と火トカゲ女の言う通り、城二は全く慎重じゃない」
思わず口に出てしまって、三人の怒りに余計な燃料を投下してしまった様だ...
「あ、あの...俺の言い分は...」
「無い」「しらない」「無道」「にゃははは...ちぃ~ん」
大会は未だ始まって無いのに、既に俺のHPは致命傷だ...