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第72話 Aランク戦 開始


〇東京ドーム内 グラウンド


「栄えある、夏の全国魔刑部大会も13回目を迎え・・・・・」


決勝大会にコマを進めた12校と、Aランク戦に出場する12校以外の選手が、13の列を作り中央で開会の挨拶をしている、退魔特殊部隊の偉いさんの長そうな話を聞いている


「...であるから、出場選手の皆様の日頃の研鑽結果を思う存分に発揮して頂き、スポーツマンシップにのっとり正々堂々と競ってもらいたいと思います!」


『続きまして、12回大会最優秀高校による選手宣誓です』


退魔特殊部隊の恰幅のいいお偉いさんは満足そうに、笑いながら手にしたマイクを壇上へと上がった九鬼先輩と手渡し退席して行った


「宣誓!我々魔刑部員は、日頃の修練の成果とお互いの研鑽の為、全力を尽くし正々堂々と戦う事を此処に誓います、東光高校 魔刑部部長 九鬼 可憐」


右手を掲げ、臆する事無く堂々と宣誓した九鬼先輩に向け、その場に居た全員が拍手を送る


『では、この後10:00より、Aランク戦の第一、第二試合を開始します、出場選手は所定の待機室へと起こし下さい、尚、事前連絡無しで試合開始5分前に待機室へ来られない場合は不戦敗とせさて頂き、次回秋大会より1ランクダウンのペナルティを課しますので、ご注意下さい』


『以上にて第13回全国魔刑部決勝大会開会式を終了します』


終了のアナウンスと共に、吹奏楽の演奏に沿って1列ごとにグラウンドの端から退場していく...


「きゃぁぁぁ!諸星様ぁぁ!」「光輝さまぁぁ!」「応援してますぅ!」


Aランク戦に出場する、選手の列にひと際派手な髪形のイケメンが観客席に向かって、投げキスしたり手を振ってサービスしたりしていた


(学生服では無いから中学生とか高校生以外という事か...大学生、いや社会人かな?)


「あぁアレは、ジョニーズ事務所所属のアイドルユニットのメンバーで諸星 光輝って人だよ」


天草先輩が俺の視線に気づき横からそっと教えてくれた


「へぇ~(全然知らない...誰だよそれ)」


「大学生の時に、Aランクに昇格してから退魔特殊部隊への勧誘を断って、芸能界入りしたって、結構前にニュースになってたよ」


「態々、特殊部隊への誘いを断ってまで入った芸能界なのに、なんでまた大会に?顔とかに傷でも付いたら大変じゃないですか?」


『芸能人は歯が命』とかいうCM昔見たが、歯も大事だが顔で売ってるアイドルなら顔こそが商売道具だろう...実際にお世辞抜きでアイドルに相応しい整った容姿だ


「う~ん...噂だけど女性関係でトラブルになってて、人気が急降下してるらしくて事務所が起死回生で『貴方を守る為、戦えるアイドル』ってコンセプトで再度人気獲得を目指して活動してるみたい」


(なるほど...この開会式とAランク戦には、各テレビやネットメディアが多数スポンサーについてる様だし、名前を売るには持ってこいっいて訳だ...)


・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・


〇Aランク戦


「第一試合からいきなり九鬼先輩の出番ですか」


「ふふ、心配するな日頃の修練の成果を出し切るのみだ」


「「「部長頑張って下さい!!応援してます!!」」


東光高校の魔刑部道着を身に着けた九鬼先輩は、俺たちの声援を背に軽く手を上げ選手待機室へと入って行った


・・・・・・・・・・


東京ドーム内のグラウンドには、2つの武舞台が設置されており2試合が同時に行われる


もう一つの方の舞台では、大学生同士の試合の様で、あっちもかなり応援に力が入っている


『では第一舞台に選手入場です、まずは東から前回大会優勝者 東光高校 3年 その美しき剣捌きから剣椿姫と呼ばれる 東の女王 九鬼 可憐選手の入場です』


東側のゲートから、優雅に舞台へ向かって歩いてくる九鬼先輩...緊張した様子は微塵も感じない


『続きまして西から入場するのは、高知大学3年 中学迄続けていたハンマー投げから転身、魔刑部の世界へ その才能は大学時代に開花、そして今回の四国大会を圧勝し本大会に臨む 坂本 隆盛選手の入場です』


高知大学とネームの入った武道着を着た、身長2メートルを超え体重も120キロを超える巨漢の大男だ


背が少し低い九鬼先輩と並ぶと、なるで大人を幼児だ...


『では、お互いに礼!』


「よろしくお願いします」


「九鬼家の娘か...俺は前回大会には参加して無かったが、かなり出来るみたいだな、初戦から楽しめそうだ」


「・・・・・・」


お互い舞台の中央で何か言葉を交わしていた様だが、主審に促され夫々東西の開始ライン迄下がる


「では...始め!!」


「神衣火之迦具土神」


「神衣塩椎神(しおつち)」


両者共、開始早々から神衣を解放する...相手はどうやら潮の神である塩椎神らしい、九鬼先輩には不利な水属性の神だ...青い胸当てと肩当...そして左手には青く輝く丸い盾が出現している


「神具 払桶(はらいおけ)」 そして、相手が手にした神具は、銀色に輝く片手のハンマーだ


ブゥン!


銀のハンマーは振り回す度に、空間に波紋の様な残像を残している...


「女とは言え、手加減は出来ぬぞ!喰らえぇぇ 水の宗 神衣金槌破術...撃ちし!?」


キィン...


坂本が払桶を振り上げ、神衣の奥義を繰り出そうとした所、その脇を赤い影が通り過ぎ


「先輩!?いつの間に、坂本さんの背後に?!」


可憐は赤槌を鞘に納める音と共に、ハンマーを振り上げたまま硬直している坂本の横を通り元の自分の立ち位置へと戻り、深々と一礼すると


ドォォン


ハンマーを掲げたままの坂本は白目を剥いて、そのままの体制で背後に倒れた


「しょ...勝者 九鬼選手!!」


ウォォォォ!


九鬼先輩の名がコールされた途端、会場中の観客から一斉に歓声が上がる、それは地響きにも似た勢いだった


先輩は、武舞台からゆっくりと降りて来ると、俺達の方を向きニコリと微笑んで、軽く拳を突き出した


俺も他の部員も全員全力で拍手し、先輩の勝利を祝った(真白も申し訳程度に拍手していたので良しとしよう)


一瞬で決着した第一武舞台だが、第二武舞台は白熱した試合展開の様で、こちらの歓声もすぐに第二武舞台の応援の声で、搔き消された


・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


〇選手控室前


「流石やねぇ可憐...開始僅か2分で決着とは恐れいったわ」


「翼...このまま順調に行けば私と当たるには決勝まで残らないと無理だぞ?」


「しょうもない事言わんでや...ウチは城二にええ所見せなアカンでな...まぁ次の試合楽しみにしときぃ~」


そう言うと、翼は可憐と入れ違いに選手控室へと入って行った





第四試合 西 試衛学園 3年 土方 翼 対 東 社会人枠(ジョニーズ事務所所属)諸星 光輝



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