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第74話 Aランク戦、決勝戦カード決定

〇東京ドーム内 グラウンド 第二武舞台



「ぎゃぁぁぁぁぁ!俺の、俺の美しい顔がぁぁぁ!!」


自らの神具 豊漁を取り損ねた諸星は、顔を手で覆いその場で膝を付き前のめりに倒れる


「諸星選手!立ち上がらない場合はダウンとみなしますよ」


主審の男性が、うずくまる諸星選手の元へと駆け寄る...あれだけ応援していた諸星のファンも、諸星の様子が心配なのか皆、静まり返っている


しかし...


「うるせぇぇ!だまれぇ!」


諸星は右拳を振り上げ、主審の頬を殴りつけた


「ガハッ!?」


主審の男性は、不意をつかれた事もだが、神衣した者の圧倒的な力で殴られ武舞台の外まで吹き飛び、口から泡と血の入り待った唾液を吹き出しながら失神した


観客も四隅に控えた副審も、諸星の突然の暴挙に唖然として声が出ない


『こ、これは!?第二武舞台で対戦してました、諸星選手、主審に手を上げるという重大な反則行為により失格!失格処分となります!よって、勝者 試衛学園 土方 翼選手!』


主審が不在な為か、アナウンス室から諸星の反則負けがコールされる


「...っけんなぁ...ぶっ殺す!」


諸星は右手で顔を押さえながら、左手を広げ土方先輩の方へと翳す


「反則負けなら、これ以上反則をしても関係ねぇよなぁ~お前ぇぇ俺様の美しい顔を傷つけた罪を死で贖えぇぇ」


「水の型 禁技 毒霧」


諸星選手の手から紫色をした、霧が噴き出し土方先輩の周囲を包み込む


「ヒッィィヒッヒッ...大会で禁止されてる水の型の毒霧だぁぁその霧はお前の鼻や口から体内へ侵入し、血液、内臓、筋肉に広がる俺の特製だぁぁ」


...完全に毒の霧に飲み込まれた土方先輩だが、うっすら見えるそのシルエットは依然として健在だ


「ど、どう言う事だ?何故効かない!?」


毒霧の効果が薄れ、徐々に空気中へ中和されて行く


「お、俺の毒が中和された...だと!?」


土方先輩が頭上に掲げた四季には、桜の模様が浮かびあがっており土方先輩の体の周りには大量の桜の花びらが竜巻の様に渦巻いている


「アンタぁホンマ、どうしょうも無いゲスやなぁ~...これでウチも正当防衛ちゅう訳や遠慮は要らんなぁ~」


土方先輩はパシッ!と四季を閉じたと思ったら両手をつかって四季を広げだす...


すると、四季は扇型に留まる事無く丸い形状へと変化し、その表面には春夏秋冬に纏わる花々が四つに分割され描かれていた...


「神衣天衣理心流 木の宗 荘彩の燦燦(そうめいのさんさん)」


四季は輝きを放つと、土方先輩の手から離れ、激しく回転しながら諸星選手の体の周りを高速で回転する


「なっ!何だこの技ぁぁ体が動かん!?」


気付けば、諸星選手の神衣は解除されており、高速で回転する四季により、着ている道着が粒子になって消えて行く


「ふふふ、植物は土から芽吹き、花を咲かせ、枯れ、種を残す...其れこそが四季...アンタの周りの季節を枯草の舞う秋にしたさかいな...次の種の為、アンタにも養分になってもらうで?」


土方先輩の言葉に恐怖し逃げ出そうとするが、身体が一向に動かない...


「審判!殺されるぅぅ!試合を止めてくれぇぇ!」


しかし救いを求める審判は、自分で殴り飛ばして武舞台上には審判は居ない


「!?なっ!?俺の髪の毛!?」


自慢の頭髪が次々に、抜け落ちて行く...眉毛も


「翼!そこまでにしなさい、本当に反則負けになっちゃうわよ!!」


選手控室横の廊下で、俺達より後ろで観戦していた九鬼先輩が、武舞台袖まで歩いて行き、土方先輩へ忠告すると...


「やれやれ...よろしいわ、アンタの顔を立てて、この辺んで見逃しましょ」


諸星の周囲を回転していた、四季は土方先輩の手に戻り、パチンと軽快な音を出し扇子を閉じると、土方先輩の神衣も解除された


そして...。


「俺の髪の毛ぇぇ」


すっかり頭髪と眉毛が無くなり、鼻と頬にかけ横一文字に切り傷が出来てしまった諸星が武舞台の上で、自分の頭を触りながら慟哭している...


そんな諸星を見ていた観客は...


「ねぇ光輝君って、なんか思ってたのと違うくない?審判を殴って失格とか酷すぎ」


「私も思ったぁ~つか対戦相手の女の子に関係迫ってる様だったし...やっぱ噂通りのクズなんじゃない?」


「せっかく、気持ち入れ替えて再出発みたいな事SNSで投稿してて、ファンも戻って来たのにとんだ裏切りよね」


応援席に居るファンは次々と諸星の応援グッズをグラウンドに向かって放り投げ、席を立って帰って行った


『皆さん、グラウンドに物を投げないで下さい!』


アナウンスの声も空しく、あれほど居た諸星選手の応援席は疎らにしか人は居ない


そんな状況を唖然と見つめる諸星選手に近づき、土方先輩が何かを呟くと


顔を青くした諸星選手は、武舞台に土下座し何度も何度も土方先輩へ謝罪していた


(何を言ったのかは解らんが...あの人を怒らすと地獄を見そうだ...)


副審の一人が、主審に代わって土方先輩の手を取り高く掲げ


「勝者 試衛学園 土方 翼選手!」


パチパチパチパチ♪


会場全体から拍手が起こり、土方先輩は笑顔で観客席へとお辞儀する...そして顔を上げた時に不意に俺と目線が会うと、笑顔でウインクしてきた


その後しばらくすると、隣の第一武舞台での第三試合も決着し T自動車所属の社会人枠の女性がからくも勝利した様だ...



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


その後、第五、第六と続き...準々決勝、準決勝を危なげない試合運びで、勝利した土方先輩が先に決勝へと駒を進めた


シード枠の九鬼先輩は準決勝ではT自動車の女性と戦い開始4分で、九鬼先輩が場外に相手の選手を弾き飛ばして勝利、決勝へとコマを進めた


『Aランク戦の決勝は、東光高校 3年 九鬼可憐選手と、試衛学園 3年 土方翼選手により最終日最終試合にて行われます!』


ゲームでは、初日にAランク戦の全日程が終了していたのに、現実ではやはり興行的な所で一番最後に試合を持って行くのか...


こうして、初め体験する全国大会の有り得ない熱気にあてられ自分自身も興奮しているのか、ホテルの部屋に戻っても中々寝付けなかった...


(明日は、天草先輩の出るBランク戦...Bランクは明日で全日程を消化するんだったな)


波乱の展開を見せたAランク戦...果たしてBランク戦はどうなるのか?


興奮と不安で中々寝付けない夜が続く




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