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第75話 白熱のBランク戦

〇東京ドーム内 グラウンド 第一武舞台


「場外!そいれまで!勝者、天草選手」


「くっそぉぉ!」


場外に蹴り落された、男性選手は悔しそうに武舞台を叩く


「お疲れ様です、これで準決勝進出ですね!」


俺はスポーツドリンクと、タオルを天草先輩に手渡すと、嬉しそうにそれを受け取り汗を拭う


「有難う城二君、これも君との修練の成果だよ!」


天草先輩の表情にはまだまだ余裕が見て取れる、実際今の所の相手に神衣を使う相手は居ないし天草先輩も神衣を使用して無い...神憑依だけで勝ち進んでいる


そして...ワァァァァ!!


第二武舞台でも、歓声と共に決着したみたいだ


「向こうも決まったみたいですね...やはり、相手は試衛学園の沖田 司さんの様です」


天草先輩も真剣な表情で第二武舞台の方を見つめ...


「あの沖田って子も、恐らく...」


恐らく神衣に至った覚醒者なのだろう...そう言いかけて、スポーツドリンクに口を付ける


「小百合、次の準決勝が山場だな」


Aランク戦を余裕で勝ち上がった九鬼先輩が、天草先輩の応援に戻って来ていた


「うん、前回大会とは違うって所を見せるよ」


九鬼先輩と天草先輩は軽く拳をぶつけると、ニヤリと微笑んだ


「にゃぁぁ、見て来たよぉ~」


「ん、火トカゲ女も居たか」


第二武舞台へ偵察に行っていた、天音さんと真白も合流する...そして頭の上には


『やれやれ...真白が居るなら儂が行く必要ないじゃろうに』


念の為にトラを真白に預け、一緒に偵察してもらっていた...四聖獣の力を借りて相手の力量を推し量るのは少し罪悪感が有ったが、俺のゲーム知識が役に立たない以上、トラには申し訳無いけど使える物は使うつもりだ


「で、沖田とかいう2年は?」


九鬼先輩は真白に尋ねると


「ん、建御名方神(タケミナカタ)と契約してる」


〇建御名方神(タケミナカタ)


大国主の御子神、武勇の神として崇められる...武神 建御雷之男神(タケミカヅチ)に何度も敗北しながらも、果敢に挑んだ不屈の闘志を持つ神


「建御名方神か...小百合の契約している天手力男神と同じ木属性の攻撃特化型の神だな」


『それに、あの童女は既に神衣への覚醒をしておるな』


トラの見立ては、俺たちの想像の通りだった...


そんな俺たちの所へ...


「城二~昨日はウチの試合見てくれたぁ~?ウチ、城二の為にメチャ頑張ったんやでぇ?城二に褒めて欲しいなぁ~」


土方先輩が唇に指を添えながら俺に向かって上目使いで甘える様にすり寄って来る


「あぁあのぉ...い、いえ...流石は土方先輩、見事な試合でした!」


戸惑いながら、後ろに下がるが土方先輩は蛇の様にスルスルと俺の懐へと潜り込む


「ん、たこ焼き女城二が嫌がってる離れろ」


「そ、そうだよ、翼!離れてよ、今東光高校のミーティング中だぞ!」


真白と天草先輩によって引き離された土方先輩は一瞬だが、二人に鋭い視線を向ける...が、すぐに何時もの温和な表情へと戻り


「それは仕方ありませんなぁ~ほな城二また夜にでもぉ~」


土方先輩はウインクしながら俺に投げキスをして、自分たちの控え室へと戻って行った


その際に、島津君と沖田さんが俺に対し鋭い目を向け睨んでいた


「にゃははは...城二っちも厄介な女子に好かれちゃったねぇ~」


天音さんは、俺を哀れむ様に肩を叩き慰めてくれるが...真白と天草先輩の白い目はそれを上回るダメージを俺に与える


「とりあえず、翼の事は今は置いておけ...どっちかと言うと翼は私の相手だ」


『ふむ...武者娘の言う通りじゃな童女と男女の実力はほぼ拮抗しておる』


トラの的確な見解は、この後の試合の苛烈さを予見させるに十分だった...


そして...


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


『Bランク戦の準決勝は、白熱の試合展開となっております!!』


第一武舞台で行われてる、天草先輩と沖田さんの試合は両者共、初手から神衣した状態で開幕した


天草先輩は神具 金剛で沖田さんの斬撃をはじきながら、距離を詰め一撃を放つが沖田さんは、風に舞う木の葉の如く最低限の動きで金剛の拳撃を躱す


「相手は、小百合のスタミナ切れを狙ってみたいね...」


九鬼先輩は武舞台の二人を見ながらそう呟く


確かに動きは明らか天草先輩の方が派手で、攻勢に見えるが友好的な打撃は今の所一発も入って無い


「ん、乳デカの方は一発でも当てれたら勝確だから」


天草先輩の繰り出す拳撃は、周囲の空気すら揺らしているのか時折俺たちの顔に風圧を感じる


「!?危ない」


天草先輩の渾身の一撃が躱され、沖田さんに無防備な背中を晒す...が


「!?攻撃しない?しかも沖田さん後方へと距離を取ったぞ?」


身軽にも正眼に刀を構えたまま、後方へと飛んで避けた沖田さんに違和感を感じ思わず口に出る


「あぁ城二は見てなかったから知らないかもだけど、アレは小百合の誘い込みだ」


「誘い込み?」


「心意波って言う八極拳の鉄山靠に似た、天草流の裏奥義だ」


確かに背中を見せた天草先輩が、踏み込んだ右足に不自然な位力を溜めてた様にも見えた


「では沖田さんは、心意波の事を知ってて...」


「それはどうかな?、あの沖田の動きは小百合が心意波の体制に入る前に既に回避行動に入っていた」


『じゃろうな...神具 真贋(しんがん)とやらの力じゃな』


真白の頭の上から俺の肩口へ飛び乗り、九鬼先輩との間に入って来たトラが説明する


〇神衣 建御名方神


木属性の神に習い、緑に輝く胸当てと肩当...そして右目を覆う様に銀色の眼帯を装着している


眼帯の中央には緑に輝く宝石が埋め込まれており、時折淡く輝いて見える


神具 真贋


通常の刀よりも短く、小刀と太刀の丁度中間の長さの刀で直刃刀だ、鍔の部分が大きく出来ており近接での鍔迫り合いを想定した刀の様だ


そして真贋が神具である所以だが、トラ曰く相手との鍔迫り合いを起点に、少し先の未来を持ち主に見せる事が出来るのだと言う、ある意味一対一の戦いにおいては最強と思えるチート性能だ


「射撃系のスキルや武器とは相性は良くないが、武器で直接攻撃するタイプ相手には最強の神具だな」


九鬼先輩はトラの説明を聞いて、そう補足しながらも武舞台上の天草先輩を見る目が少し険しくなった


(天草先輩にとっては、天敵みたいな相手だ...先輩...)


「流石に、ボクの攻撃も中々当たらないね」


「...天草先輩、貴方の攻撃は単純で読み易いそんなのじゃ一生私には当てれませんよ?」


小百合のラッシュをヒラリヒラリと躱しつつ、時折真贋で金剛を弾く司


『おぉぉ!第一武舞台の準決勝では天草選手の猛攻に沖田選手防錆一方だぁぁ!』


解説席からでは、そう見えるのか選手の応援席サイドの表情は真逆だ...試衛学園側の応援席では土方先輩始め他の部員も余裕の表情を見る...島津の顔は見えないが


一方で東光高校側の応援サイドは九鬼先輩と真白は表情を変える事無く武舞台を観戦しているが、俺や天音さんは不安な表情で武舞台の天草先輩に声援を送る


「天草先輩ィィ!頑張れー!」


「小百合パイセン、ガンバァァ!」


試合開始から、もうすぐ10分が経過しようとしている...


「そろそろか...」


「ん、時間だ」


九鬼先輩と真白が武舞台を見つめながら、何かを確信した様にそう呟く...











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